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中暑陰証の症例

李某,男,38歳。1978年8月19日初診。
素体の禀賦不足がある。昨日の午前に田畑を耕していたが,天気の炎熱のため,汗が流れるように出て,口が渇いたので,渓川へ下りて水を飲んだ。まことに甘凉で口渇も解けたが,突然に脘腹が痛み出し,畑で突然暈倒し,昏睡,牙関緊急となった。家族が急ぎ人中をつねると,すぐに気がついた。急ぎ村へ戻ると,医師は藿香正気水を与えたが,未だ愈えていない。
翌日来院したので余が医治に当たった。今もまだ腹痛があり,腹瀉,悪心嘔吐,神疲乏力,発熱悪寒,四肢逆冷,気喘不語,舌淡,苔薄白,脈弱である。

此れは《金匱要略》の“太陽の中暍”証である。
暍とは,《説文》に云う:“傷暑也。”《玉篇》に謂う:“中熱也。”即ち今の中暑である。
然し藿香正気水を服しても効を顕わさなかったのは,多分 陰盛格陽の候だったからであろう。
患者は熱のため寒泉の水を飲んだが,もともとが陽虚の体であり,陰盛格陽の中暑証となった。抑陰通陽のため,内外通達の法,通脈四逆湯を与えた。
炙甘草10,生附子20,干姜15。

服薬3剤で,腹瀉、腹痛は止り,熱も退き,肢厥は息んだが,なお悪心がある。尚お益陰和陽すべく,二診には猪胆汁を加えた。乃ち通脈四逆加猪胆汁湯の意である。続服5剤で,病は愈えた。黄芪建中湯にて中気を建てて予後とする。

按語:通脈四逆湯は,《傷寒論》では少陰陽衰、陰寒内盛、虚陽外越の証として方を設けている。
本方の附子、干姜は大用量で,大辛大熱である。これで内在の陰寒を速破し,外越した虚陽を急回復できた。まさに通脈四逆の名は,四逆湯以上である。
二診時に猪胆汁を加えたのは,潤燥滋液のためで,これで姜、附の辛熱傷陰劫液の弊を制した。即ち益陰和陽の法である。黄芪建中湯は,補気和裏をもって中焦の気を建てることが出来る。
通脉四逆汤证案 より
※人中穴をつねって覚醒を促す療法が民間にまだ健在なのは嬉しい。

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