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膀胱の気化とは何か?(5)

膀胱の気化失職による尿頻
症例:患者 42歳女性,春節の期間に親戚や朋友とトランプをして過ごした。それが夕方七時から夜中の一時までずーっとで,その間何度も水を飲んだが,トランプに夢中で,トイレへ行かなかった。
一時にゲームを終わると,ようやく下腹部の膨張を感じました。小便をしようと,すぐにトイレへ行ったが,終わっても下腹部の脹は変わらなかった。
二日目も三日目も,同様のままで,しかも症状は更に重くなってきた。いくら小便をしても残尿があり,小便の回数も増えるばかりで,日中はまだ我慢ができても,晩になると睡眠に影響してきます。我慢をすると,小便はひとりでに出てしまい,遺尿そのものです。
医院の検査では,膀胱炎という結論で,針薬ともやったが問題は解決しなかった。
患者の症状:小腹脹,小便頻数,精神疲乏,舌苔薄白滑,脈象細緩。

これは一体何の病なのだろう?先ず考えられるのは淋証ではないかという事。淋証なら小便頻数、淋瀝渋痛、小腹拘急引痛が主なる症状だが,この内の熱淋・血淋・石淋・気淋・膏淋・労淋のいずれとも違う。
患者の小便の色は黄色ではない,舌苔も黄色ではない,脈も数ではない。だから湿熱淋証とは判断されない,利尿薬も清熱薬もダメだし,八正散は?とてもじゃない。
そこでまとめてみると三つの問題点がある,一つは小便頻数,二つは小腹脹痛,三つは尿を我慢すると遺尿となる。この三つの問題はどのように考えればいいか?
中医の理論では“膀胱とは,州都の官なり,津液を蔵す,気化されれば能く出ず。”是の説から,中医では小便の輸布・排泄の鍵は“気化”にあると考えている。もし膀胱の気化功能が失われると,軽ければ小便不利となり,重ければ癃閉となる。解らないのは遺尿であるが,これも膀胱の気化功能の失職であろう。
では一体どんな原因でそうなったのか?何病なのか?
そこでふと《傷寒論》の“蓄水証”を思い出した。蓄水証は外感によって起きる“太陽腑証”である。外邪が裏に入り,邪が膀胱に結び,蓄水となり,脈浮,発熱,渇して飲水を欲し,小便不利,少腹の膀胱が脹痛する,これを五苓散で治療する。
この病人も蓄水証であるが,《傷寒論》の蓄水証とは病因が異なる。張仲景が云う蓄水証は外寒が膀胱へ進入して,引き起した蓄水で,膀胱の気化功能に影響したものである;しかしこの病人のは尿脹(尿を我慢)によって引き起された膀胱の気化失職であり,病因は異なるが,病機は同じことである。ここは中医経典を柔軟に解釈したいものだ。蓄水証というのは外寒だけが引き起すものだろうか?この病人はたまたま尿を我慢したことで蓄水証になったのである。
この病人にはもう一つ,精神疲乏,脈象細緩があり,これは気虚の症状である。蓄水と気虚,さてどうしたものか?党参を加えよう。五苓散加党参,これは正に春沢湯である。
服すること十余剤で,患者の諸症は皆消えた。

辨証:気化不利,膀胱蓄水。
治法:化気利水,兼以益気。
春沢湯加味1(党参20,炒白朮10,茯苓15,猪苓・沢瀉10,桂枝6,烏薬10)7剤。

3月14日二診:少腹脹満は軽減し,小便頻数も減り,舌脈は前に戻った。前方を再進する。
春沢湯加味2(西洋参片・炒白朮10,茯苓15,猪苓・沢瀉10,桂枝5,烏薬10)7剤。

旬日の后,患者からの知らせでは,諸症は悉く愈え,元気が佳いとのこと。

按:本案の患者は忍尿過度により,膀胱の気化功能が受損し,少腹脹満,小便頻数,更には小便自遺となったものである。此れは《傷寒論》が云うところの膀胱蓄水証と似ている。《傷寒論》の蓄水証は,外からの寒邪を受けて膀胱が傷つき,気化に影響して,蓄水を造成したものである。しかし本案の病証は忍尿過度が膀胱を傷つけて,気化に影響を及ぼして蓄水となった。二者は病因が違うが,病機は同一である。
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※尿を我慢し過ぎると出難くなるのは日頃から経験する。膀胱が限度を超えて広がると収縮しにくくなる感じだ。これも膀胱の気化失職のひとつという事か。

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