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下肢浮腫に鶏鳴散

鶏鳴散には行気降濁,宣化寒湿の功効があり,脚気病を主治する。
症状は風湿に感じて,流注が脚足に現れ,耐えられない痛みは,縄で吊るされたようで,思わず声が出,筋脈が腫大する。
“鶏鳴”とは服薬時間を指す。五更(am3:00~5:00)の鶏鳴とは陽升の時,陽升陰降の意である。
方薬組成:檳榔7枚,陳皮、木瓜各1両,呉茱萸2銭,桔梗半両,生姜(和皮)半両,紫蘇茎葉3銭。
原方用法:粗末とし,八服に分ける。汲み置きの水三大碗にて,トロ火で煎じ,一碗半とし,滓を去る;再び水二碗にて,煎じ一小碗を取り,両方を合わせる。一晩寝た後,次の日の五更に二三服に分けて,冷服する。冬月は、少し温めてもよい,服し終われば食事をする。もし残れば,次の日に飲んでも良い。此の薬を服して天明に至るや,大便当に一碗許り黒糞水が下る。即ち腎家の感寒湿毒気が下る也。朝飯の前后には,痛みはあっても腫れは消えている。

脚気病の定義について,晋代の葛洪は《肘后備急方》で脚気病といい,又脚弱とも称している。
是れは湿邪風毒を外感したか,或いは飲食厚味で傷れ,積湿生熱が,腿脚に流注したものである。其の証は先ず腿脚麻木、酸痛、軟弱無力,或いは攣急,或いは腫脹,或いは萎枯,或いは発熱し,進んでは入腹攻心して,小腹不仁、嘔吐不食、心悸、胸悶、気喘、神志恍惚、語言錯乱等を現わす。
鶏鳴散は湿脚気を治す要方で,湿脚気は両腿が腫大重着、軟弱麻木にして無力なるが辨証の要点である。
鶏鳴散の来源には二説があり,一説の出自は明代の医家王肯堂《証治凖縄》,もう一説の出自は《類編朱氏集験医方》である。
湿性脚気の初起で,足腿が腫重疼痛し,歩行困難,脚気疼痛,風湿流注,足崴筋脈の浮腫等に常用される。但し臨床では,只下肢腫脹沈重不適であれば,みな鶏鳴散を用いる。

第三批全国老中医専家学術経験継承工作指導老師、山東省名中医、山東省臨沂市中医院劉啓廷教授は臨床で鶏鳴散で下肢浮腫症を治療している。筆者は劉老の経験に学び,臨床で,その効が桴鼓の若きを経験している。

王某,女,74歳。2017年11月17日初診:
双下肢浮腫して1月余り,按ずると指を没し,午後に加重し,晨起には稍軽くなり,并せて下肢沈重を感じ,時には腿痛し,軟弱無力となる。食欲あり,大小便正常,睡眠よし,舌暗紅で苔薄黄,脈弦細。
患者には脳血栓、高血圧の病暦があり,アスピリン腸溶片、ニトロピンを常服治療している。

処方:蘇葉15,呉茱萸12,桔梗・陳皮・檳榔15,干姜12,茯苓20,桂枝・沢瀉15,猪苓12,白朮・牛膝・木瓜15,竹葉12。5剤。水煎服。

近日,患者が他病で来診した。自述するには前回服薬后に二日目には両腿の腫脹がすぐに消退し始め,5剤の后には常人と変わらなくなり,今に至るも未だ再発していないと。

按:本方には開上、導下、疏中の効がある。
規定の服薬時間の,要は空腹だと薬方の効果がよく発揮され,寒湿の邪を陽気に随って升発して散じ易い訳である。但し現在の用法はそれほど厳密ではない,劉啓廷は此の方の用法で,鶏鳴冷服することを強調してはおらず,それでも同様に満足な療効を得ている。いわゆる“継承は過去にとらわれず、伝統を推進することが肝要”ということ。当然ながら,本例の患者に対しては,万一を思って,念のため,更に五苓散の類を続けて,万全を期した。
鸡鸣散治下肢浮肿

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