漢方

赤芍・白芍の区別

ウチダの『和漢薬No.764』に収載された「生薬の品質評価」に関する富山大学和漢医薬学総合研究所の報告を読み、赤芍・白芍についての理解が少し深まりました。
従来から両者の違いは「外皮の有無」「栽培・野生の別」「根の色・花の色の違い」など諸説がありました。
しかしどれも確定的なものではありませんでした。
今回の報告ではかなり信頼できる区別がなされています。
市場に流通する芍薬(Paeonia 属)には (1) 四川省以外の中国および日本の白芍 P.lactiflora と (2) 四川省産の赤芍 P.veitchii があり、主成分はどちらも Paeoniflorin でも、(1) は 2%、(2) は 6~7% と含量が異なるのが決定的な相違である事が分かった。
今後は成分定量によって赤白の区別をつけるのが科学的といえる。
そこで「富山県ブランド芍薬」栽培の目的のために、入手した76品種の園芸用シャクヤクを分析したところ、30品種が(1) で 46品種が(2) と分かれた。
この成分量の差を目印にすれば園芸用シャクヤクからでも赤芍・白芍の区別栽培が可能である。

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口がベタベタする

『中薬の配合』丁光迪編著、小金井信宏訳 の中の「脾虚湿勝証」で「湿滞と同時に穢濁があると,口がベタベタし、舌苔濁膩などの症候がみられます。治療には,平胃化濁法を用い,薬は,厚朴・陳皮・霍香・蒼朮・石菖蒲・半夏・茯苓などを,状況に応じて組み合わせて使います。」とあります。
口がベタベタするという苦情は時に聞くことがあります。
それとこの穢濁が関係しているというのは留意しておかなければなりません。
では穢濁(湿濁)とは何のことでしょうか?
調べてみますと「湿濁とは湿気のこと。湿性は重濁粘膩で,病位に停留滞着しやすく,陽気の活動を阻碍する。」
湿濁を解消することを“化濁”(or 分清化濁)という。
清とは水谷精微のこと、化とは排除すること、濁とは糟粕のこと
薬物は芳香化濁薬という。
藿香、佩蘭、砂仁、石菖蒲 など芳香性のものが使われます。
例えば、芳香化湿湯《朱仁康臨床経験集》(藿香・佩蘭・蒼朮・陳皮・茯苓・沢瀉・白鮮皮・地膚子4)32 というのがあり、亜急性湿疹,銭幣形湿疹,慢性湿疹などに応用されています。
かつてアトピーの相談を受けたことがあり、この口ベタベタと下痢がありまして、今思えばこの処方などが適方ではなかったかと反省しています。

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胡麻仁の作用2

紫雲膏は「胡麻油100 紫根10 当帰10 蜜蝋38 豚脂2.5」の組成からなっています。
最も多く含まれているのは胡麻油です。
蜜蝋や紫根も重要ですが、胡麻油の意味を忘れてはなりません。
先に「胡麻仁の作用」として“逐風湿気・游風・頭風”の作用があると指摘しましたが、それならば胡麻仁から取れる胡麻油にも同様の作用がなければなりません。
中医百科 油麻仁(胡麻) に、
治浸淫悪瘡:胡麻子生搗敷之。(《普済方》)
治小儿瘰癧:脂麻、連翹等分。為末,頻頻食之。(《簡便単方》)
治丁腫:胡麻(焼灰)、針砂各半両。(《聖済総録》胡麻塗敷方)
治痔瘡風腫作痛:胡麻子煎湯洗之。(《綱目》)
治陰癢生瘡:搗胡麻塗之。(《補缺肘后方》)
治膿潰后瘡不合:炒烏麻令黒,熟搗敷之。(《千金方》)
治蜘蛛咬瘡:油麻研爛敷之。亦治諸虫咬傷。(《経験后方》)
藥性歌括四百味:甘,療腫悪瘡
と列挙してあるのは皆“逐風湿気・游風・頭風”の応用例ではありませんか。
紫雲膏は「胡麻油・紫根・当帰・蜜蝋」のどれもが必要不可欠の有効成分であり、豚脂だけが軟膏基材といえるかも知れません。 (豚脂は軟膏の固さを調節するために入れる)

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膀胱癌

腫瘤とは身体の一局部に生長するものだが,実際には全身性疾病に他ならない。
だから局部治療だけでは根本的な解決にはならない。
患者の局部症状を改善させるには全身状況こそが重要である。
中医が整体観念より出発するのはこの理由による。

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胡麻仁の作用

消風散(陳実功《外科正宗》)の中に含まれている胡麻仁について、これが何故必要なのかとかねてから疑問に思っていました。
胡麻仁といえば通常は肝腎肺経の補益滋潤の品で潤肺除燥の作用があると云われています。
それが何故 湿熱証型の消風散に入っているか?
その説明として「麻は木穀なり、故に肝に入り、風(肝腎陰虧血燥の風)を治す」。
だから血燥に対するものとして加えられているというのが通説です。
この度は『中医治法与方剤』(陳潮祖)を読んでいて、消風散の所に「古人は胡麻仁には“逐風湿”の作用があると云っているゆえ血燥を対象にしているのではない」とあります。
日華子本草》:補中益気,養五蔵,治労気、産后羸困,耐寒暑,止心驚。逐風湿気、游風、頭風。
消風散の構成から見ても「風疹掻痒抓破後、滲出水液」があると考えられる事からも陳潮祖師が指摘するように、胡麻仁には“逐風湿”の作用があるとするのが妥当ではないかと思ったのです。

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東洋医学の“脾” 2

「膵臓」という新しい名称が出来た日本の事情と同じことが中国でも起ったといえば驚きませんか?
中国では「胰脏」と表します。
中医“脾”“胰”辨 によれば、中国へ解剖学書の《泰西人身说概》が伝わったのが1623年です。
解剖学書といっても骨格や筋肉や脳などの解剖図で、内臓図は無かったようですが。
その後、1851年に内臓図や機能の加わった《全体新論》が伝わり、その頃に[東洋の“脾”]=[西洋の「脾臓」]とされました。
どうも現在の膵臓というものの機能が当時はまだ分かっていなかったのがその理由のようです。
ハッキリした形のある脾臓と違って膵臓は脂肪のような組織なため(『難経』には「脾の重さは二斤三両、扁広三寸、長さ五寸、散膏半斤を有し、裹血を主り・・・・・」と説明されており、“散膏”とは脂肪塊のようなものを指す)、臓器と認め難かったのでしょうか。
経緯は分かりませんが、不明のそれに新たに「胰脏」の名が付けられました。
その後のことですが、中医師の張錫純(1860‐1933)は《医学衷中参西録》中で「胰脏」は“脾之副臓”である、と述べているそうです。これは既に脾臓の名が社会的に認められてしまったからには、今更正すと却って混乱を招くので、脾はそのままに、これの副臓と言えば「胰脏」がいくらかでも“脾”に近づくのではないかと意図したと思われます。
日本では「膵臓」という単語を造語し、中国では「胰脏」の文字を当てて、図らずも双方とも“脾”を間違えてしまったのです。

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東洋医学の“脾”

東洋医学の“”は西洋医学の「脾臓」とは異なる事は、一般の人にはあまり知られていないようです。これは一度はハッキリと解説しておかなければならない事です。
日本では1770年頃に『ターヘル・アナトミア』という西洋の解剖学書が前野良沢や杉田玄白によって入手され、その解剖図が罪人の腑分け(解剖)の際の実物とあまりにもそっくりなのに驚いています。
それまでの東洋医学の『頓医抄』などの解剖図は模式的で実際とはかけ離れたものだった為いっぺんで、東洋医学はいい加減で空想だ、これからは西洋医学でなければならないという風潮になったのでしょう。以後、臓腑の図は新たな翻訳書『解体新書』のものへと変遷します。
さてそこで、この図に名称を付けるにあたって困ったことが一つありました。肝臓、心臓、肺臓、腎臓などは東洋医学のものと西洋医学のものは同じですが、東洋医学の“”に当たるものが明確ではありませんでした。
現在でいう「膵臓」は黄色い組織であるため脂肪と考えられやすかったのか、はっきりした経緯は分かりませんが、前野良沢と杉田玄白はこれとは別のも少し小さな臓器に「脾臓」を当てました。それが現在も「脾臓」として罷り通っているものです。すると脂肪のような組織に当てはまる臓器が無いので新たに「膵臓」という名称を作りました。
東洋医学では脂肪のような組織と別のも少し小さな臓器の両方を合わせて“”と考えていたため、ここで混乱が起こりました。
東洋医学と西洋医学では「脾臓」が異なるのです。
まとめますと東洋医学の“脾”は西洋医学の「膵臓」と「脾臓」を合わせたものです。
西洋医学では「膵臓」と「脾臓」を区別しています。
問題は、西洋医学の「脾臓」をもって東洋医学の“”と同じだと考えると大きな間違いになります。
現在の日本漢方界の伝統では昔ながらの“”の意識で言葉を用いますから、これを聞いた一般の方はそれを「膵臓」と「脾臓」を合わせたものとして受け取らなければならないのです。

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麻子仁丸の“脾約”について

まず『傷寒論』には「趺陽脈浮而渋,浮則胃気強,渋則小便数,浮渋相搏,大便則鞕,其脾為約,麻子仁丸主之。」とあります。
次に組成を見ますと、麻子仁・芍薬・枳実・大黄・厚朴・杏仁の六味です。
これは「小承気湯(大黄・厚朴・枳実)+麻子仁・芍薬・杏仁」の事です。
その訳は“胃強脾弱”だからと説明しています。
多くの人が間違えているのは「」です。
これは今日の胃ではなく、大腸・小腸を指します。
《靈枢・本輸》では“大腸小腸皆属于胃。”と明記しています。
大腸内での燥結だからこそ「小承気湯+潤腸薬」になっているのです。
“胃強脾弱”への誤解は「食べたいのに少し食べると直ぐ腹一杯になる」と解釈していることです。
そうではなく大腸に燥熱があるので「大便則ち鞕(かた)い」から小承気湯を使おうとしているのです。
脾は水津を運化して肺と膀胱に送ります。
水津が肺から全身へと配布され腸道に至れば便秘にはなりません。
その脾が弱くて水津を肺まで上げられないと、すべての水津は膀胱へ行ってしまい「小便数」となります。
本治すべきは「脾弱」の方です。
麻子仁丸を使うのは大腸の燥熱を取り去るという一時的な標治に過ぎません。
これよりして お年寄りの便秘に麻子仁丸を薦めるのは如何かと考えます。
標治よりも本治を考えるべきです。
王節齋曰く: 若し年高人が脾虚血燥となれば, 饑え易く飽き易く(食べたいのに少し食べると直ぐ腹一杯になる), 大便燥きて難となる, それには白芍藥, 當歸各一兩, 人參七錢, 升麻, 炙甘草各四錢, 山薬, 大麥芽, 桃仁各五錢を用いる, 此れは老人の常服藥也。
※お年寄りの便秘には是非ともお薦めしたい。
王節齋方(当帰・白芍5 人参3.5 升麻・炙甘草2 山薬・麦芽・桃仁2.5)25g

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不眠に苦参が効くか?! その2

後で気が付いた事があります。
それは“蓮子芯茶”のことです。
蓮子芯とは石蓮肉(ハスの実)の中にある「幼葉と胚根」を指し、5mmほどの緑色の芯のことです。
清心蓮子飲を構成する石蓮肉は(去心)となっており、この胚芯を取り去ったものを使います。
試みに石蓮肉を割って中から蓮子芯のみを集めてみた事があります。
これを軽く煎ってお茶として飲んでみると苦い味がします。
中国では「清肝火、泄脾火、降肝火,清暑除煩,生津止渇」の効果があると市販されています。
史料には乾隆皇帝が避暑の折に蓮子芯茶を飲んだと記載されているそうです。
効果は「養心益智,調整元気,清心火,解毒」とのこと。
本草綱目》にも蓮子心は“清心去熱”とされており、故に心火内熾の煩躁不眠を治療する。
生甘草を配すれば蓮子心の瀉心火除煩の功を増強すると記載されています。
私が気づいたのは苦参の苦さと蓮子芯の苦さが似ていたことです。
もうひとつ似ているのは苦丁茶の苦さです。
これはタラヨウの近縁種の若葉を荼に加工したものですが、やはり強い苦みが特徴です。
そういえば日本茶も「苦み(と香り)」を売りとしていますね。
みな「清心除煩」の効が不眠を治すのではないでしょうか。
日本茶はカフェインがあるから寝る前には飲まないようにと云われていますが、カフェインだけで判断できない使い方があるのではないでしょうか。
証が合えば「カフェイン=興奮」ではなく「カフェイン=鎮静」にもなり、不眠を治すとなれば新しい使い方になります。

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治風先治血とは

風を治すには先ず血を治せ、血が行れば風は自ずと滅す。
治風先治血,血行風自滅”の語は明•李中梓《医宗必読卷十•痺》に出てくる。
彼は行痺(疼痛部位が固定せず遊走性を呈する病証。風痺・走注ともいう)の治法を述べる時に“行痺を治すには,散風を主とし,御寒利湿もなお廃すべからずも,大抵は補血の剤も合わせると良い。治風には先ず治血を,血行れば風自ずと滅する也。”といっている。
《金匱要略》で営衛の気不足により起った「脈が陰陽倶に微にして,身体麻木して知覚を失い,“風痺状”の如き者は,桂枝湯去甘草,倍生姜,加黄耆(黄耆桂枝五物湯)を選用する。
主薬の黄耆は,陽気を振奮させ,血液の運行を促進させる,すなわち“気行れば血行る”である。
“治風先治血,血行風自滅”というメカニズムは対象が行痺だけに限らない。
例えば身体麻木・中風・紫癜風・皮膚病‥‥‥、外風・内風ともに“風”ならどんな風病にも応用できる。
当帰飲子の四物湯と黄耆は合わせて「補益疏風」に働くし、消風散のは当帰・生地・胡麻仁は養血・滋陰潤燥に働くし、三甲復脈湯や大秦艽湯も「育陰液、重肝腎」が“治血”に相当する。
「血」とは陰液を指し、陰血・津液・瘀血をも含めて考えると更に応用が広がる。

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