漢方

花粉症の漢方は

漢方ではアレルギー性鼻炎のことを鼻[鼻九]といいます。
突然あるいは反復発作性の鼻塞、鼻癢、噴嚏、鼻流清涕が特徴です。
季節性であったり通年性であったりしますが、花粉症と最も近いと思われるのが肺経鬱熱型の鼻[鼻九]でしょう。
(中国には花粉症は無いのでアレルギー性鼻炎の中から類例を探すことになります。)

このタイプは熱気に遇った時や辛熱性の食物を食べた時に「鼻脹塞、酸癢不適,噴嚏頻作,鼻流清涕」の症状をあらわします。

私もこのタイプの鼻炎になっています。
例えば寒い戸外から暖かい室内に入った時や、熱いラーメンを食べた時などは食後にドーッと鼻流清涕があります。水洟であったり白い粘性の鼻涕であったり。
ほかには寝起きに鼻血が混じることもしばしば。

これは多くは肺経の湿熱が鼻竅に壅結する事で起こります。
その湿熱はどこから来るかといえば、長期にわたり鼻竅に風湿熱の邪毒の侵襲を受けたり、或いは厚味を嗜食して肺胃に熱がこもる事によります。
湿熱の邪濁は鼻竅に蓄積し続けるとやがて鼻粘膜に変性を起こします。
軽ければ鼻塞だけですが、ひどくなると凝滞したものは半透明で柔軟な鼻息肉(ハナタケ/鼻痔)となり、鼻腔を塞ぐようになります。
花粉症ではここまでは行かず症状は鼻粘膜の変性に止まっています。

この湿熱鬱滞せる花粉症を治すには、肺胃の熱と鼻竅の風湿熱を清散しなければなりません。
その働きは現代風にいえば漢方薬の抗アレルギー剤になるでしょう。

主方は辛夷清肺飲(呉謙《医宗金鑑》)加減です。

処方: 黄岑,知母,桑白皮,枇杷葉,山梔子,升麻,麦門冬,百合,辛夷花,地竜干
     若しクシャミ(噴嚏)が多ければ +蝉蛻、白僵蠶、烏梅

※元の処方には石膏が入っていて鼻汁は粘稠な場合に限られるから必ず去らなければならない。地竜には抗アレルギー作用がある。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

営衛不和と不眠

日中の陽気である「衛気」が夜になっても陰脉に入れない"陽盛陰虚"という状態は「営衛不和」に似ている。
張仲景の桂枝湯は営衛を調和するのに用いているが桂枝湯系列の処方には不眠治療は出てこない。
ただ桂枝加竜牡湯には"男子失精,女子夢交"の治療があり、これは"虚労虚煩不得眠"の治療でもある。
小建中湯では"心中悸而煩"を治療し、桂枝去芍薬加蜀漆牡蛎竜骨湯では"臥起不安"を治療している。
(桂枝湯加減で不眠を治療するのは后世医家の応用法である。)

桂枝湯加減が適応する病人には食欲不振、自汗、盗汗、悪風が無ければならない。そして煩躁はない。
それを徐守愚は曰く"汗が出て不寐なるは陰陽の不足に非ず、陰陽の不和なり。"
しかも不眠と嗜睡が交替に出現し、不眠は連続して数日続くが比較的に元気である。
嗜睡は十数時間しか続かない。
だからこれには営衛を調和するだけで一般的な安神方法は用いないのである。
常用処方は桂枝湯加竜骨・牡蛎等である。
竜牡を加える訳は《杏軒医案》の所説にある。"心は虚霊の臓なり,草木は无情なり,物類の霊を借りて引となさずば効を望めず、亀板・虎睛・竜歯・琥珀・珍珠などを加入する也。"

从経典著作探求不寐辨治 より

| | Comments (0) | TrackBack (0)

酸棗仁湯で不眠症が治るか?

不眠症にはいつも大変てこずります。
不眠症に至る過程は長いのに病人は性急に効果を求めるからです。
一般に汎用されている漢方処方は次の様です。

虚証
1. 心脾虧虚  帰脾湯
2. 心胆気虚  安神定志丸
3. 肝血不足  酸棗仁湯
4. 陰虚火旺  黄連阿膠湯
5. 心腎不交  交泰丸

実証
6. 痰熱内擾  温胆湯
7. 肝鬱化火  竜胆瀉肝湯
8. 淤血内阻  血府逐淤湯

実証の不眠は極めて稀ですからここでは虚証についてのみを考えてみます。
エキス剤にあるものは帰脾湯と酸棗仁湯です。
それで世間では酸棗仁湯が多用されているようです。
何故かもう一つは帰脾湯ではなく加味帰脾湯なのです。腑に落ちません。

ここで取り上げたいのは酸棗仁湯エキスです。
これで本当に効果があった例はあるのでしょうか?

酸棗仁湯 (酸棗仁 茯苓 知母 川弓 甘草)

このように誠に薬味が少ない処方ですが方意は難解です。
構成薬味から考えられるのは「滋陰養血,清熱降火,調血疏肝,安神除煩」とそれぞれ別々の効能からなり、原因としては肝血不足が挙げられ、症状としては「虚熱内擾,肝陽上旋,虚煩不得眠」となります。
だから中医では主治が「失眠,心悸盗汗,頭目眩暈,咽干口燥」となっています。
肝血虚といえば婦人の更年期障害が代表例で、足がほてり寝苦しく、夜中にカーッと熱くなり汗をかくというような時の症状とよく似ています。

それ以外の老齢による不眠症などは肝血虚ではなく、半夏[禾朮]米湯で述べた“陽盛陰虚”(陰陽のアンバランス)が原因となる場合が多いのではないかと思うのです。
半夏[禾朮]米湯はエキス剤には無いので使いづらいでしょうが、だからといって証を見ないで酸棗仁湯で済ませてしまうのだけは止めて欲しいものです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

不眠症の奇経治療2

不眠症の奇経治療 への追加です。
健康体では衛気は日中体表を回り、夜になると体内へ潜むので睡眠を催すと云われています。
不眠症の者はこの衛気の移動がスムーズにいかず、いつまでも衛気が陽[足尭]脉に盛んのまま残っています。

なぜ衛気が陰[足尭]脉に入れないのかというと『霊枢』では「厥気が五臓六腑に客したため衛気が陰に入れず」となっています。
その厥気(冷え)とは具体的に云うと"痰湿"のことです。痰湿はどこから産するかといえば胃経からです。

一方では陽[足尭]脉に残っている衛気は体表に近いので発汗法で外へ出してやるのが早道です。
そこで半夏が出てくるのです。
半夏の薬性は辛温です。
胃経の気分に入り厥気(冷え)の元凶である"痰湿"を除きます。
痰湿は汗となって衛気を伴って体表から発散します。

日中の衛気が入って来なかったので陰[足尭]脉は虚の状態になっています。
そこで胃経の血分に入って滋陰するのが「」即ち[禾朮]米です。
粟は北方の膏梁で味は甘酸、よく胃経の血分に入る。
内からの滋養で衛気は再び生産されます。

外では衛気を泄し、内では衛気を生産し睡眠体勢を整えると不眠症は解消します。

《霊枢》卷十。厥気客于五臓六腑,衛気不得入于陰,陰虚,目不瞑。

《古方選注》:今厥気客于臓腑,衛気独行于陽,陽[足尭]気盛不得入于陰,陰虚目不瞑。

最後にもう一つ、半夏[禾朮]米湯を煎じるには長流水を用います。
即ち千里の長流を下る江河、渓澗の水です。これは通利作用が強く出ます。
更に長流水を大きなお盆に取り、柄杓で掬い上げては落とし、水泡が無数にできるまで繰り返します。
これを“労水”といい、昔の人は「水も動かせば陽性に変わり,上へ揚げれば下走の勢を得る」と解釈しています。
長流水で出来た労水は軽くて発汗法という泄邪の目的によく適します。

煎じ方にも一工夫があります。葦薪火で煎じよ、となっています。
葦薪火とは武火すなわち強火のことです。瀉法になります。

病が新しい者は飲んだら直ぐに寝なさい。
汗が出れば治るし、久しき者でも3飲すれば治るでしょう。

(病新発者,覆杯則臥,汗出則已矣;久者,3飲而已矣。)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

極め付きインフルエンザ対策

インフルエンザに罹ってからの転帰は人によって違います。
治りやすい人、いつまでも引きずる人、余病を併発する人、重症化する人など。
それは人それぞれの内因によります。

先の“未病を治す”とはにも

 例えば湿盛の肥胖者は湿毒邪気に感じやすく

と書いたように、予め“湿”が過剰な体質の人は“湿毒”へと転化しやすいものです。
2003年の中国におけるSARS流行の時も“湿熱蘊毒”という証候に陥った人が沢山いました。そのため治療は困難を極めたのです。
外邪としてのSARSウイルスがどんなに悪質なものであっても、罹った人が「湿体質」でなければそう簡単には次の段階へと転化することは無かったでしょう。

過去の伝染病流行の体験から学ばなければならない事があるはずです。
罹ってから慌てるのではなく、罹る前の予防法として“未病を治す”ための体質改善こそが急がれます。
未病時に自分はどういう所に欠陥があるか、体質的にどんな偏りがあるか」を予め知って事前に治しておく事です。
そしてこれはインフルエンザに限らず慢性病でも云えることで、糖尿病やガンでもならない内に未病を治しておけば回避できる可能性があります。

そのためには体質的偏向としてはどんなものがあるのかを大局的に知っておかなければなりません。
私が提示している「50証チャート」というのがあります。
これは漢方のを網羅したもので、いわば漢方のまんだら図にあたり、「漢方まんだら」と呼んでいます。
自分がこの中のどの位置にあるか、それならばどう治しておかなければならないか、という事です。

では具体的にどのようにして自分の体質を決定するか?
それは日頃感じている些細な不具合があれば、それをヒントにして体質的偏向を推論します。
例えば、肩が凝るとか眠つきにくいとか眩暈があるとかニキビや湿疹があるとか月経痛があるとか、何でもいいから些細な不具合があれば、それは「50証チャート」のどこと関係があるからかを類推しておくのです。

(自分で考えても分らなければどうぞ相談表を送ってください。出来るだけ返事しますが、返事を貰ったらそれっきり というのはナシです。無い知恵を絞っているのですから受け取ったらどう思ったか返事ぐらい下さいよ。)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

外邪をいかにして追い出すか

いわゆる肌表(衛分期)にあるうちに外邪(ウイルス)を撃退するのが第一です。
前述したように「陽虚ならば風寒に感じやすく,病を得ると寒に化しやすい」というケースは「風寒」に傷(やぶ)れたので程度に応じて“傷寒”とか“傷風”と呼びます。
「風寒の邪」にかかると強い悪寒が始まり、いくら保温しても決して寒気は無くなりません。
そこで麻黄湯や葛根湯小青竜湯などの温熱剤で温めて発汗させて外邪を追い出さなければなりません。

ところがインフルエンザになると寒気は少しだけで直ぐに高熱を発します。温めるどころか氷嚢で冷やさなければなりません。
それで“風温,風熱”呼んで区別します。
外邪を追い出すためにはやはり発汗作用を利用しますが、温めるのではなく冷やしながら発汗させなければなりません。
そういうのを涼性発汗剤といって、桑菊飲銀翹散などがあります。

“風温,風熱”にかかった時に特に気を付けなければならないのは (現代医学でも点滴輸液が大切なように) 発汗によって体液を失わない事です。
体液が少ないのを「陰虚」といい、はじめから陰虚だと思うように汗が出ません。
だから流行期に備えて陰虚体質の人は補陰する事こそが抵抗力を高めて予防する事になります。

例えば皮膚が乾燥する人、唾液が少なく口や舌が乾く人、鼻粘膜が乾く人、声が嗄れやすい人などは肺陰虚の傾向がありますから日頃から滋陰薬を飲んで体質改善を心掛けておかなくてはなりません。ワクチン注射よりも余程効果的です。 (つづく)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

もし新型インフルエンザが来たら

もしも鳥インフルエンザが突然変異して「新型インフルエンザ」になり人から人へと伝染するようになったら日本では64万人が死亡するだろうと騒がれています。
現代医学では免疫ワクチンや抗ウィルス薬などの研究が急がれていますが、まだそうなっていない仮定の話ではどうにも進みません。

では中医学(漢方)では何が出来るでしょうか?
新型インフルエンザでも、エイズやガンでも相手が何であれ、中医学が出来るのは常に"未病を治す"という姿勢です。
すなわち慢性疾患などの内因性の病気には、罹らない事を前提とした体質治療を以って川上治療(原因治療)とします。
またインフルエンザなどの外感病に対しても同じです。
罹っても重症化しないように日頃の体質治療を以って川上治療(予防治療)とします。

万一、外感病に罹ってしまったら川下治療(対症治療)は仕方のないところ、扁鵲に習って疾病が肌表(衛分期)に在るうちに肌表治療をします。ここで喰い止めるのが最善の策です。
コレラや天然痘など過去に幾度となく経験してきた流行病から得た知識は『温病論』や『湿温病論』として蓄積されています。
病邪が衛分から気分へと移れば気分期治療を、病邪が営分へ移れば営分期治療を、病邪が血脈(血分期)へと移れば血分期治療をと病気の進行に合わせた治療を考えます。

なぜ病気の進行に合わせるのかは説明するまでもなく自己免疫力を最大限に発揮するためです。病気を治しているのは他の誰でもない自分自身の免疫力だからです。 (つづく)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

“未病を治す”とは

未病”とは中医経典《黄帝内経》の《素問・四気調神大論》に出てくる言葉です。

正確には“この故に聖人は已病を治さず,未病を治し,已乱を治めず,未乱を治める,という意味です。病が已に成りて后に薬を与えたり,乱が已に成りて后に治めるのは,譬えれば渇してから井を穿ち,斗ってから兵器を鋳るごときで,遅すぎやしませんか?”と書かれています。すなわち早期治療や萌芽時の治療(預防)のことです。

《史記・扁鵲倉公伝》によれば春秋戦国時代の扁鵲は“未病を治す”名医だったそうです。扁鵲が斉国を旅していたとき,斉の桓侯が彼を接待しました。扁鵲は桓侯を看るなり“あなたは病気にかかっています。今はまだ病は肌表にありますが,すぐに治さなければ進行しますよ。”と云いました。桓侯は“わたしは病気ではない”といい張ります。
扁鵲が去った後で桓侯は周りの人に云いました。“扁鵲という奴は虚名の徒だ,病気でもないのに病気だといって功名を得ようとする騙りだ。”

それから五日が過ぎて,扁鵲は再度 桓侯を拜見して云います。“あなたの病気はもう血脈に進みました。いま治さなければ深く進入するばかりです。”
桓侯は大変不愉快になり“わたしは病気ではない”というばかりです。

また五日が過ぎると,扁鵲は桓侯に“あなたの病気はいま腸胃にあります,いま治さなければ難治となります。”
桓侯は不愉快のあまり相手にしません。

さらに五日が過ぎて,扁鵲は桓侯を遠望するなり くるりと身を翻して去りました。桓侯は奇怪に感じ,慌てて人を遣わして扁鵲に訳を問いました。
扁鵲は云います。“君王の疾病が肌表に在った時には,湯熨を用いれば治療できた;血脈に在った時には,針灸[石乏]石の力を借りれば治療できた;腸胃に在れば,酒剤を配合して治療できた;が現在では疾病は已に骨髄にまで深入していて,これはもう神仙でさえも方法がない。”

また五日が過ぎると,果して桓侯は発病しました,人を遣わして扁鵲を探しても,扁鵲は已に去ってしまい,桓侯は終いに不治となり身を亡ぼしました。

---
桓侯は癌の晩期だったのかも知れません。
では どうすれば未病のうちに発見できるのか?

それは現在ならば体質診断ではないかと思います。
陽虚・湿熱・血淤・痰湿・気虚・気鬱・陰虚など、中医学では臓腑の陰陽盛衰を見て体質分類がなされています。
体質に異常があれば同じ邪気でも病気の伝変が違ってきます。

例えば湿盛の肥胖者は湿毒邪気に感じやすく,陽虚ならば風寒に感じやすく,病を得ると寒に化しやすい;脾虚なら,外感病から肝病になりやすいから先ず脾を実して伝変を防がなければならない、などなど。 (つづく)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

認知症と漢方2

最近私の店へ回って来た処方に、認知症に 抑肝散加陳皮半夏 のエキス剤を用いるものがありました。
調べてみますと日本の医学界ではレビー小体型 認知症(幻覚を見るタイプ) や一般の脳血管性痴呆・アルツハイマー型痴呆にこの製剤が有効だという報告がなされているようです。
認知症に対する漢方応用の変遷を見ますと最初は 当帰芍薬散 でした。次が 釣藤散 で今度が 抑肝散加陳皮半夏 というわけです。スクリーニングという手法と既製剤を用いるという制約下では仕方の無いことですが、これらの三者の漢方薬には何の共通性もありませんで、まぐれ当たりという感じです。
論理的な思考がない訳ではありませんが、あってもそれは現代的な思考であり、漢方的な思考法ではありません。

昨夜もNHKのテレビで「認知症医療を問う」という番組が放送されていて色々と考えさせられました。なかでもアリセプトという薬物がアルツハイマー病の進行を遅らせる唯一の方法だという事に注目しました。これは神経細胞が死ぬのを防ぐ原因治療ではなく対症治療に過ぎませんが、それでも大きな進歩です。

一方 中医学ではどのように考えることが出きるだろうか?
以前「認知症と漢方」をアップロードしたことがあります。
それには“怪病に痰多し”を引用し、「痰が神明(意識)を阻蔽し、精神異常のような症候になる」には根本原因に 若年期の肝・脾の生理があり、老年期に及べば腎も絡んでくると示唆しました。

肝の生理については以前に「疎泄が足りないと鬱になる」をアップロードしました、参考になれば。

具体的な治療となれば、認知症 (痴呆症) ・・・「証」の決定 から
【1.2】去邪論治のなかの滌痰化淤や理気化痰や補腎活血化痰などの方法論になります。この中には はからずも 抑肝散加陳皮半夏 や 釣藤散 に含まれる半夏や釣藤鈎が含まれています。
これからも漢方をヒントにしたければ、黄氏〔10〕 張氏〔14〕 章氏〔2〕 余氏〔15〕 戴氏〔16〕の報告などから学ばなければならないと思います。

また『中医臨床』v28-4 を読んでいましたら“痰”の治療について次の様な説明がありました。

痰の治療はへばりついたヘドロを剥がし取るさらに強い流れを作り出す必要があります。すなわち湿邪の治療以上に強力な行気が必要だ。ドブ掃除のイメージです。経絡中の痰は湿邪より深いところに存在することが多い。本流の経脈から支流である絡脈に入り込んでいるという感じです。支流は本流より細いですからいったん入り込んでしまうと取り除くことは容易ではありません。強めの瀉法で 形成された痰を動かすことが優先課題です。(益田 尚)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

瀉の瀉 補の瀉

治病には元神及び胃気を重視することが必須である, 元神が旺盛で, 胃気が充足すれば, 自然治癒力が働いて抗病駆邪できる。

《傷寒論・辨太陽脈証并治上》:" 風家 (風邪に犯された人) で表が解したのに (表邪がなくなったのに) スッキリしない者でも, (薬治しないで放っておいて) 十二日もたてば愈えるでしょう。"

《傷寒論・辨太陽病脈証并治中》:" 大いに下した后, さらに発汗もさせて, 小便不利となった者は, すでに亡津液になっている。薬で治してはならない, 小便が自然に出るようになれば, 必ず自然に愈えよう。"

虚する者は補うし,虚なのに盛候のある真虚假実証では, 補法を運用して「補の瀉」の目的を達しなければならない。
如し小便が*隆閉 (前立腺肥大など) したら, 補中益気湯で水の上源を潤し, 上竅の水門が開けば小便は出る。
又如し実脾飲を用いて温補脾土すれば, 陰水は消える, 此れが即ち「補の瀉」という意味である。

Continue reading "瀉の瀉 補の瀉"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

桑葉で寝汗を治す

一時、桑の葉がバカに売れたことがありました。
「おもいッきり!!テレビ」で みのもんた氏が糖尿病に効くと云った為でした。

それはさておき、漢方では桑葉をどのように考えているのでしょうか?
桑葉といえば最も有名なのが「桑菊飲」で、この主薬が桑葉です。
以前 「桑葉で止汗」という記事を紹介したことがあります。しかしその時も桑葉が何故止汗するのかについての説明はありませんでした。
今回のは“桑葉で寝汗を治す”と、その訳も明記してあります。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

Continue reading "桑葉で寝汗を治す"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

糖尿病治療の新説

従来の漢方による糖尿病(消渇)の治療は“三消”(多飲を上消、多食を中消、多尿を下消)に分けて考えられてきました。
しかしながら最も多いのは「自覚症状の無い、血糖値が高いだけの糖尿病」で、漢方でいう“”がありません。
そのため「高血糖値」を漢方的にいかに解釈するかが問題になります。
それを現行の民間薬治療から逆算してみた結果、“高血糖=湿熱”という概念を提示したことがありました。
この度もっと本格的な新説を見つけましたので紹介します。

厥陰を調治すれば,消渇は癒える

清・黄坤載は説いている :消渇とは,足厥陰の病である。
《症治歌訣》は説いている:“肝風は眩暈する,胃を犯せば消となる。”
黎云卿《金匱約言》は説いている:“消渇*隆淋は,皆厥陰病である,上と下に分かれて,燥湿に随って感応したものである;風木の性は,疏泄して蔵せず‥‥‥”。

肝は疏泄を主る,是れは肝が疏泄、暢達、宣泄という気に関する功能を具有することを指す。
消渇とは肝が疏泄を失し,鬱して火に化し,津液を灼傷した結果である,だから糖尿病の治療には,医者は機を識り変を観じて,仲景の旨を遵守し,厥陰を調治し,疏肝調気を法とし,順肝条達の性で以って其の生理功能を恢復すべきである。
肝気が条達し,気機が条暢すれば,精微物質は輸布され,糖は充分に利用され,血糖は自然に下降する。
《中医疏肝調気法治療糖尿病》に書かれている: 疏肝調気法を運用して糖尿病を治療すれば,膵島功能を恢復するだけでなく,膵島素の分泌を促進し,また膵島素受体結合率も恢復し,根本的に糖尿病を治癒する事ができる。

Continue reading "糖尿病治療の新説"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

苦味健胃薬とは?

たとえばセンブリとか黄連などの苦味の強いものが日本薬局方で苦味健胃剤に分類されています。
苦味がどうして健胃剤になるのか、昔から不思議でなりませんでした。
ことにセンブリなどは千振と書いて、千回もお湯で振り出せるほどに苦いと云います。
センブリの苦味成分は鈎虫(十二指腸虫)をも駆除する力があるほどで駆虫剤でもある。
これほど強力で苦くて飲みにくいものが何故に健胃剤なのか?
空腹時に飲めば健胃どころか逆に食欲がなくなります。

探し求めていた答えのヒントを「脾を補わんとすれば」の中に見つけました。

肝には疏泄の功能があり, 脾土は肝木の疏泄を得れば, その土壤には生機が充満し,万物を生養する事が出来る。肝気の疏泄は, すなわち脾土の運化の助けとなる

中医学では健胃とは健脾のことでもあり、脾胃は同時に考えるべきものとする。
そして脾胃の健運には肝の疏泄功能が必須である。
この場合の疏泄とは膵液・胃液・胆汁などの消化液の分泌や、胃の収縮運動による食べ物の移動などを指す。
この肝の疏泄を促進する最強のものが苦味のセンブリや黄連などである。
しかしいくら疏泄が必要であっても強すぎてはいけない。
最強のものは最悪の場合にのみ必要とされる。
中医ではセンブリも黄連も健胃剤とはしていない。
センブリは清熱疎肝剤とみなして、胆嚢炎・黄疸・胆石症などに用いている。

従ってもしセンブリや黄連を健胃剤として使いたければ極微量に抑えておかなければならない。
幸い配置売薬などに含まれているこれらの薬味は分量が大変少ないので、それで健胃剤としての役割を果たしているのだろう。わが国ならではの使い方である。
中医学での薬効と日本の民間薬での薬効が同じでないのは、こういうところ(分量)にあることを知っていなければならない。
民間薬の「げんのしょうこ」や「どくだみ」の場合も同じで、中医学での使い方と日本での使い方には大きな差がある。これはまた別の機会に書きたい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

脾を補わんとすれば

欲補脾者, 必于肝腎処着眼 (脾を補わんとすれば肝腎を忘れずに)

肝には疏泄の功能があり, 脾土は肝木の疏泄を得れば, その土壤には生機が充満し,万物を生養する事が出来る。肝気の疏泄は, すなわち脾土の運化の助けとなる; 肝木が若し疏泄功能を失去すれば, 脾土の運化功能も失われる。だから補中益気湯に柴胡、陳皮を用いるのは理気疏泄、幇助脾土運化の意味である。

脾と腎は五行中にあっては土と水の関系である。だから四神丸中に補骨脂を用いるのは, 辛苦大温が, 相火を補い以って君火に通ずるのが狙いである。火旺なれば土を生じる, だから方中に五味子、呉茱萸、肉豆寇を配して, 補火生土, 行気消食をはかるのである。

慢性瀉泄の多くは命門火衰による, ゆえに治療は脾胃を専治するのではなく, 下焦の元陽を大補し, 火旺土強とすれば, 慢性泄瀉は自然に治る。ゆえに補脾は補腎に如かずというのが中医の隔臓治療法である。

医案挙例:
小溲が清長となって, 已に一月を経た。脈象は尺部が軟弱で, 寸関が虚小である。気分不足, 腎陽も亦虧虚しており, 中焦に柱なく, 下焦も封蔵の固めを失っている。中気を補益し, 腎水を滋養しなければならない。

党参、当帰身、熟女貞子、炙黄耆、大白芍、広橘白、甜冬朮、淮山薬、炙升麻、炙甘草、潼疾藜、紅棗、七昧都気丸包煎。
引自:(( 孟河丁甘仁医案》。

【解析】木は土に会えば疏泄し, 土は温を得て運化する。もし脾土を補いたければ, 必ず肝木を疏泄して初めて、命火は温められる。これが即ち" 脾を補わんとすれば肝腎を忘れずに" の意味である。古代兵法 (三十六計) の" 囲魏救趙" ※ というのが, 中医でいう「隔二隔三的治則」の事である。

※ 強大な敵に対するときは、勢力を分断し、疲れさせた後に攻撃を仕掛ければ比較的簡単に打ち破ることが出来る。力ずくではなく分断して攻めるというのがこの「囲魏救趙」である。

         『名医治則解析』(人民軍医出版社 2007) より

| | Comments (0) | TrackBack (0)

老人の咳嗽は脾腎を調えよ

(絶対に発散泄肺することは避けよ)

老人の肺機能は年齢と共に衰退し, そう理 (汗腺の機能) のキメが粗くなり, 抵抗力が低下している, 久しく肺気を損傷していると気虚になってしまう,
《王氏医存》には" 老弱人は皆表虚で汗が出易いから,凡そ麻黄、羌活、独活、荊芥、防風、白止、細辛など一切の発汗薬は, 固く禁止する。"と説かれている。

曹存心先生は云っている: 肺が虚すれば風を招き易い。老人が流涕したり、感冒に似た咳嗽をするのは, 実は脾腎の機能が虚弱になり, 衛外の機能が不足しているからである。みだりに宣揚疏達の品を用いて, 玄府洞 (汗腺) を開いてはならない, これは「犯虚虚の戒」 (虚を更に虚せしめる) に当たる, 治療には調養脾腎すべく, 玉屏風散、六君、六味を選用して補脾益腎しなければならない。
腎が虚せば、脈は肺に上循せず, 肺金は失養する;
あたかも秋燥傷肺の如くなるのは, 実は腎陰不足に責がある, 六味地黄湯を用いて滋陰降火しなければならない。

又次のように云っている。" 咳嗽が突然重くなり, 百骸を動引し, 気が臍下より逆衝して上るのを自覚すれば, 此れは腎虚のため気を原に帰し納める事が出来ない (腎不納帰) からである, 六昧地黄湯でなければ収まらない。肺は出気を司り, 気の主である, 腎は納気を司り, 気の本である。又腎は肺の子にあたり, 虚すれば其の子を補わなければならない。"

Continue reading "老人の咳嗽は脾腎を調えよ"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

開張邪路 (邪の出口を開く)

 有毒植物で山野・路傍などに自生する仙人草という蔓草があります。この葉をもんで汁を手首につけると翌日、大きな水ぶくれが出来ます。針で突いて中の水を抜き傷跡の癒えるのを待つとリュウマチの腫脹などに良いという治療法があります。
 また彼岸花の鱗茎とヒマシ(唐胡麻・とうごま)を一緒にすり下ろして、足の裏に塗布して肝硬変の腹水やネフローゼの水腫を治すという治療法があります。
このような民間療法にはどんな意味があるのだろうか? と常々思っていたところでしたが、その答えになるかも知れない開張邪路という概念があることを知りました。

---
開張邪路 (邪の出口を開く)

「実邪を出口から放出して治す」というのは中医治病の経験則の宝である。
例えば発汗、涌吐、瀉下、点刺放血などの諸法は《内経・陰陽応象大論》(1)や 《霊枢・厥病》(2)の中で述べられている。

(1) 厥頭痛、頭脈痛、心悲善泣, 視頭動脈反盛者, 刺尽去血⋯⋯ ," 血実者決之"
(2) 中暑昏厥刺委中穴放血

Continue reading "開張邪路 (邪の出口を開く)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

緑内障にも杞菊地黄丸

杞菊地黄丸を白内障に用いる事はよく知られていますが、緑内障ではどうでしょうか?
順番に考察を進めてみます。

眼病を五輪より辨証する方法

五輪とは、眼瞼を肉輪といい,脾胃が主る;
内外眦及び其の血絡を血輪といい,心と小腸が主る;
白睛(鞏膜)を気輪といい,肺と大腸が主る;
黒睛(角膜)を風輪といい,肝胆が主る;
瞳子(瞳仁、瞳視、瞳孔)を水輪といい,腎及び膀胱が主る。

Continue reading "緑内障にも杞菊地黄丸"

| | Comments (0) | TrackBack (1)

陽萎 (インポ)

最近はEDと云われている陽萎 (インポ)について、お客さんから相談があっても自信を持ってお勧めできる処方を知らなかったのです。
教科書上では肝鬱と腎陽虚のふたつが代表的な証であるとなっています。

  張某,男,27歳。
2005-11-09初診。
勃起不全が2年余り続いている。怒りやすく,小腹が時どき脹る感じがする,腰膝はだるく痛み,小便は白濁して出が悪い,時どき胃痛あり,生冷のものを食べると痛みが増す,舌質は紅,苔は黄膩,脈は細。
曽つて壮陽薬を飲んでみたが効かなかった。

肝鬱不舒と辨証される。

逍遥散加味:
(柴胡・当帰・白朮・竹葉3 茯苓4 白芍薬・懐牛膝・生麦芽5 車前草7 生甘草2 薄荷1)41

2006-01-04復診:
20剤を服薬后,小腹の脹痛、胃痛は已に愈え,食欲が増え,二便も調い,陰茎の勃起无力は明らかに改善された。

肝鬱血虚が長引くと,生熱化火となる,故に上方から車前草・竹葉・生麦芽を去り,牡丹皮・山梔子3、通草・紅花2を加えて,継服すること20剤で,病機はなくなり,諸症は悉く除かれた。

崔[王粲]:河北中医雑志

| | Comments (0) | TrackBack (0)

嚥下障害 (誤嚥)

寝たきりの病人や老人が嚥下障害とか誤嚥によって肺炎を起こして重大な症状に至ることはよく知られています。特に睡眠中に気付かずに唾液や食べ物が流れ込む「不顕性誤嚥」をいかに防ぐか、この問題は緊急に答えが求められています。

誤嚥しないためには嚥下反射を低下させない事と、また誤嚥したら咳反射ですぐに排出しなければなりません。
嚥下反射は胃気の降下機能であり、咳反射は肺気の宣暢 (宣散) 機能です。
だから胃気と肺気のふたつの気機を衰えさせない事が対策法になります。

【陰陽昇降3】に次の一文があります。

肝と胆, 脾と胃は一臓一腑で互いに升降を担当する。
臓は精血を蔵し升(のぼ)り, 腑は伝化を主り降(くだ)るのが順である。

胃気の降下 (胃の降気) 作用は脾の升陽作用と相互依存的にしか維持出来ないし、また肺気も五行上その母に当たる脾によって生み出される。
故に脾気を養い維持することが最大の重要事となる。

これは【臓腑病機 3】

胃気 (脾気) が有れば生き, 胃気 (脾気) が无ければ死ぬ」とも同義である。

結論、脾胃の気を養うことが誤嚥への根本対策である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

《傷寒論》の"六経"とは?

漢方の古典《傷寒論》を読んでいて、いつも気になっていたのは「太陽病・陽明病・少陽病・太陰病・少陰病・厥陰病」と云われている六経病は、“経絡の病気”なのか、経絡とは無関係の“病気の部位的な流れ”なのか、それとも経絡と部位を兼ねた病気の認識法なのか、という疑問でした。

このたびネット上で出会った記事からそれを思い出して、繰り返し論議すべき問題だと思いました。

三部六病 
《三部六病》学説とは山西の著名な老中医 劉紹武先生が創立した医学理論である。
《三部六病》とは人体を三个の部分に分劃する:即ち表部、中部(半表半裏部)、裏部で,"三部"と簡称する;
毎部に存在する病症は,更に陽(実、熱)と陰(虚、寒)の病性によって分けられ六類の証候群となるので,"六病"と簡称する。これが《三部六病》学説と名づける由来である。

《傷寒論》の"六経"は"六病"と称すべし
"経"と"病"の概念には本質的な区別がある:
六経とは生理的なものであり,其の循行には固定的路線がある,无病であっても,其の存在は依然としてある;《傷寒論》の"六病"は病理的なものであり,人為的に劃分した証候類型である,无病ならば"六病"もまた存在しない。
経絡とは无論外では体表にあり或いは内では臓腑にありて線段的なものであり,其の病象はただ其の循行部位及び其の所絡の臓腑にのみ出現する;

而るに"六病"が現われるのは常に全身的である。
経絡の陰陽は人体の組織結構の属性を以って説明され,臓腑の不同及び経絡が循環する体表部位の区別によって決定される;而るに"六病"の陰陽は疾病の属性によって説明され,病勢、病位、病体により決定され,表里寒熱虚実的な内容をも包括する。"経"と"病"は本質的に絶対に異なる両種の概念である。

『中医伝統流派の系譜』 (黄煌 著・東洋学術出版社 2000年) には亦次の様な解説がある。

六経を六経絡の病気として認識した通俗傷寒派について、

通俗傷寒派とは、外感熱病を研究する伝統流派の一つであり、北宋時代に成立し、明清両年間に大きく発展した。学術面では、この流派は伝統の遵守を主張し、『傷寒論』を基礎として歴代医学者の臨床経験を吸収し、外感熱病の弁証論治体系を構築した。
この流派の学術的見解が通俗的で、臨床に則したものであったことから、歴史上大きな影響を与えた。その代表的人物には、宋代の朱肱(『類証活人書』)・明代の陶華(『傷寒六書』)・張景岳(『傷寒典』)・清代の兪根初(『通俗傷寒論』)・呉貞(『傷寒指掌』)・章虚谷(『傷寒論本旨』) などがいる。

朱肱は、六経とは六本の経絡であると考え、邪気が六経のどこにあるかを鑑別する方法を、つぎのように説明している。
足太陽が病めば、発熱・悪寒・頭頂部痛・腰脊のこわばりがあり、尺寸脈がともに浮になる。
足陽明が病めば、発熱・目の痛み・鼻の乾きがあり、横になれず、尺寸脈が長になる。
足少陽が病めば、胸脇痛・耳聾・口苦・舌乾・往来寒熱・嘔吐があり、尺寸脈ともに強となる。
足太陰が病めば、腹痛・咽の乾きがあり、手足が温かく、自利して口渇がなく、腹満してときどき痛む。尺寸脈はともに沈細である。
足少陰が病めば、尺寸脈が沈で、口や舌が乾燥して口渇があり、あるいは口は正常で悪寒がある。
足厥陰が病めば、煩満して陰嚢が縮み、尺寸脈ともに微緩である。

一方、六経を経絡とは無関係な六病として認識した人達もいた。

方有執は、宋代の傷寒学者、朱肱の唱えた「六経経絡説」を否定し、六経とは六本の経絡ではなく、人体における六つの階層であり、六つの領域であると主張している。つまり太陽は皮膚を統括し、陽明は肌肉を統括し、少陽は半表半裏、つまり体内のうち臓腑の外側を統括する。また三陰は臓を統括し、太陰は脾を、少陰は腎を、厥陰は肝を統括する。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

「50証チャート」 は漢方の まんだら図

中国医学 (漢方) が理解しにくいのは何故だろう?
下から這い上がるよりも、イメージとしていちど山頂から眺めてみたらどうだろう。
そう思ってまとめたのが「50証チャート」 です。
オーバーに云えば、これをまとめるのに40年間を費やしている。

以前、「2657の中医証候」という記事を書きました。
詳しく云えば2657も証候があるのですが、それでは多すぎて混乱してしまいます。
それで類似の証候を群としてまとめ、要約したのが究極の49証候です。
これはいわば、漢方の まんだら図 です。
いつもこの49証を頭に描いておれば診断の大局を誤ることは少ないように思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

夏場に熱薬とは?!

おいてもくれ、この暑い最中に何を間違えてか、附子やら麻黄やら桂皮やらと熱性薬をてんこ盛りにした漢方処方が舞い込んでくる。
同じ人に繰り返し何十日分も。それも由緒ある地方の拠点病院からである。
こちらは調剤薬局という受け手でもあり、どんな処方であろうとも否応無く調剤しなければならないのであるが、内心ではつくづく愛想が尽きる事です。
この国の漢方医学はどうなっているのか?!

中国では夏場は麻黄を使わずに香需などを使うように気を付けているのに、この国では香需の存在すら知らないようだ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

真武湯で筋肉のピクツキ(筋惕肉じゅん)を治せるか?

治せると称する人の根拠は《薬徴》の説明と《傷寒論》の次の条文かと思われる。

《薬徴》茯苓について
悸、及び肉ジュン筋惕を主治する也。旁ら小便不利、頭眩、煩躁を治す。

《傷寒論》
S.082中編,太陽病発汗、汗出不解、其人仍発熱、心下悸、頭眩、身じゅん動、振振欲僻地者、真武湯主之。

《傷寒論》については、これに先立つのが次の条文です。

S.038中編,太陽中風、脉浮緊、発熱、悪寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之。
若脉微弱、汗出悪風者、不可服之。服之則厥逆、筋惕肉じゅん、此為逆也。

つまり太陽病で「脉微弱、汗出悪風者」に誤って大青龍湯を飲ませると、発熱が治らないばかりか厥逆して筋肉がピクツキ、心下悸、頭眩、ふらついて地に倒れんとするようになる。それを治せるのは真武湯である、というわけです。

しかしこれらの文章からストレートに「真武湯で筋肉のピクツキを治せる」と結論できるだろうか?
その病機を「陽虚によって筋脉は温煦されなくなり、水停によって筋脉は困阻されて」筋惕肉じゅんが起きるとか、「痰飲水湿が筋脉を阻滞して生じた病変」であると理論付けるようだが反論してみたい。

筋惕肉じゅんが発生したのは大青龍湯を飲ませて過剰な発汗を経て、陽気と陰液を受損し、肌肉の温養を失ったのが原因である。
だから真武湯を用いて脾腎を温めて津液を生じ、また陽気を通じて肌肉を養えば筋惕肉じゅんは自ずと治るという意味で解釈すれば意味が通る。けっして真武湯が直接的に筋惕肉じゅんを治しているのではないし、茯苓に肉ジュン筋惕を主治する作用があるとは思われない。

筋肉のピクツキは中医学理論では“風”の概念で説明されるのが普通であり、痰飲水湿が原因だとはとうてい思われない。

私がネットから拾ってきた根拠を次に提示します。

B筋惕肉证
王某-男-3$岁-干部-2%%$年''月2#日诊.半
月前发热-服解热止痛药和抗生素$天后热退-此后
遗留全身肌肉不时动-尤以双侧上肢肱二头肌和
口唇为甚.诊其面色白光白-舌淡-苔白微腻-脉细无
力.证属脾肾阳虚-不能温养肌肉.治宜温阳气-行
津液!方用理中汤加减"制附片#$%&包'先煎('红参
#$%&包'另煮('茯苓#)%'焦白术#)%'桂枝#$%'炙
远志*%'炙甘草+%!)剂'每日#剂'水煎,次'共取
药汁+$$-.'分/次温服!)剂尽'动大减'仅留口
唇动'舌淡'脉较前有力!药已中的'故又守原方继
服/剂'诸症消失!随访#年'未见复发!
按"筋惕肉的发生'多由于发汗太过'阳气和
阴液受损'使肌肉失去温养所致!本例符合上述病
理'故用附子理中汤加桂枝0炙远志'温脾肾以生津
液'通阳气以养肌肉'俾阳气得复'津液运行'肌肉得
养'诸症自愈!

| | Comments (0) | TrackBack (0)

温経湯の新解釈

温経湯 《金匱要略》

【原文】
間曰:婦人年五十所,病下利数十日不止,暮即発熱,少腹裏急,腹満,手掌煩熱,唇口干燥,何也?
師曰:此病属帯下。
何以故?
曽経半産,淤血在少腹不去。
何以知之?
其証唇口干燥,故知之。当以温経湯主之。

【方組】呉茱萸 当帰 川弓 芍葯 人参 桂枝 阿膠 生姜 牡丹皮 甘草 半夏 麦門冬

下利を病むとか、病名は帯下だとか、流産後の淤血が残っているとか、温経湯は処方構成を見ても理解困難な処方です。

【思い切った解釈】
閉経を迎える五十歳ほどの婦人が,月経でもないのに数十日間も出血(下利)が止らない。
また日暮になると発熱し,少腹が裏急し(刺痛),腹満し,手掌が煩熱し,唇口が干燥する。
此の病は崩漏(帯下)に属し,曽つて流産をしたことがあり、その時の淤血が少腹に残ったままになっているからである。
なぜなら「唇口干燥」という症状があるからです。
これは腹内に淤血があって外栄しない(栄養が行き届かない)せいです。

「少腹裏急,腹満」は寒凝の症状を表しており、それが旧来の淤血と結んで“寒凝血淤”の証候を呈しているのです。

次に「なぜ畑違いの半夏・麦門冬が入っているのか?」という問題です。
“胞中寒凝”に対しては呉茱萸・桂枝を当て、下血過多のために陰血が虚して“陰虚内熱”(虚火)、“上熱下寒”を呈している事に対しては麦門冬・牡丹皮を当てるところまでは分かる。

半夏はなぜ入っているのか?
当帰・芍葯・阿膠・麦門冬などは滋潤性の薬味であり、胃に負担をかける恐れがある。
これに対処するために温燥性の半夏を加えて薬味の陰陽バランスをとっているのではないか。

参考文献 【金匱要略湯証論治】(中国科学技術出版社1993年)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

無菌性の頻尿

頻尿で悩む中年の婦人が多いものです。
病院で尿の細菌検査をしても無菌で、神経性頻尿症で片付けられます。これは非感染性尿道綜合症として中医学ではきちんと対応法が出来ています。

頻尿は次のように弁証分類されています。
(一)肝気鬱結型
(二)湿熱下注型
(三)気陰不足型
(四)脾腎両虚型
(五)腎陰不足型

このうち(三)気陰不足型 に分類されるものが非感染性頻尿症ではないかと思われます。

[薬方]: 旱蓮草15 黄精12 黄耆24 党参18 女貞子15 石斛12 麦冬10 車前子12 黄岑10 蓮子15 枸杞子18 山薬18 白朮15

例示されている処方は日本にはありませんが、近似するのは清心蓮子飲です。

石蓮子 、人参、赤芍、麦門冬、黄耆、地骨皮、黄岑、車前子、生甘草

煎じ薬がいやだという人には仕方なく清心蓮子飲のエキス剤を使いますが、出来ることならもっと効果のある煎じ薬に親しんで貰いたいものです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

複視と漢方

複視は復視、視一為二、風牽偏視 (動眼神経麻痺) ともいう。

[病因病機]
    一、正気不足,衛外失固,或陰血虧少,絡脈空虚,風中経絡。
    二、脾失健運,聚湿生痰,復感風邪,風痰阻絡。·
    三、肝腎陰虧,陽亢動風,挾痰上擾,阻滞経絡。
    四、中風后遺,気虚血滞,脈絡淤阻。
    五、頭面外傷,経絡受損,気血淤阻。

この内、一の風中経絡については以前に発表した。
54 突然の麻痺性斜視による複視
59 風牽偏視 (動眼神経麻痺)

今回は三の陰虧陽亢についてです。
肝腎虧損,精髄不足」になると視力に影響してきます。
脳は髄海で、髄は腎によって作られます。
また目は肝の竅であり、上は脳につながり下は肝に通じます。
肝腎精血が旺盛であれば髄海は充盈し、肝腎脳の三者の気機が相互に協調して視力正常になります。

[治法]
滋養肝腎,平肝潜陽,活血化淤

[薬方]: 山萸肉 女貞子 山薬 枸杞子 何首烏 熟地 党参 石決明 菊花 丹参 云苓 川弓

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2657の中医証候

医薬健康網
上記のHPに「中医証候」というページがあり、14ページからなる中医証候の項目が出ている。
項目を展開すると全部で2657の証候数になる。
関与したのは、北京 河南 吉林 内蒙古 山西 天津 河北 黒竜江 遼寧 山東 上海 重慶など12省の地方医院の医師達です。例えば北京では、

北京安定医院
北京地壇医院
北京婦産医院
北京積水潭医院
北京軍区総医院
北京市二竜路医院
北京市鼓楼中医医院 (京城名医館)
北京市心肺血管医療研究中心(安貞医院)
北京同仁医院
北京協和医院
北京医科大学第三臨床医院
北京医科大学精神衛生研究所(北京医科大学第六医院)
北京佑安医院
北京中医医院
海軍総医院
軍事医学科学院附属医院(解放軍307医院)
首都儿科研究所
首都医科大学附属北京友誼医院
武警総医院
中国康復研究中心附属博愛医院
中国医学科学院整形外科医院
中国中医研究院広安門医院
中日友好医院
北京朝陽医院
北京儿童医院
北京回竜観医院
北京結核病控制研究所
北京口腔医院
北京市復興医院
北京市結核病胸部腫瘤研究所
北京鉄路総医院
北京小湯山医院(北京市小湯山康復医院)
北京胸科医院
北京医科大学第一医院
北京医院
北京中医薬大学東直門医院
北京腫瘤医院
解放軍305医院
空軍総医院
首都医科大学附属北京天壇医院
首都医科大学宣武医院
郵電総医院
中国医学科学院阜外心血管病医院
中国医学科学院腫瘤医院
中国中医研究院西苑医院
中医研究院望京医院

の医院から中医師等が分担して各証候を持ち寄っています。例えば次のようになっている。

[淤]血阻絡2
主要症候: 脅肋刺痛,痛処固定而拒按,入夜更甚,或面色晦暗,舌質紫暗,脈沈弦.

治療原則: 理気活血,化[淤]通絡.

例 方: 血府逐[淤]湯.

医院_医生介紹: 北京: 北京同仁医院: 王西萍__婦産科副主任医師: 

こういうのが 2657 も集められているのだから壮観です。
出来るだけ重複した証候が出ないようにはなっているようですが、似たものも多くあります。
この「中医証候」と一ヶ月間取り組みまして、2657の証候をAccessでデータベース化しました。
更にそれをExcelで、同質のものを 127 のグループに分けしました。
虚証が47、実証が80あります。
その表をhtmlで表示して、googleのツールバーを付けて完成です。以前、

「誰にでも出来る「証」の決め方!」

を発表しましたが、今度のはそれを補充改定するものになりました。

やり方は、「2~3ヶの症状をgoogleの検索ツールバーに半角スペースを空けて貼り付けハイライトを押す。ハイライトで光る症状が多いところがあなたの証です

いつかこれも発表したいと思っていますが、なにしろ症状の数も馬鹿にならないほどあるので表示には一工夫必要です。このツールを使えば複雑な「証の決定」が誰にでも出来るようになります。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

透発による病気治し

透発の作用とは、病的な毒素(病邪)を体表から発散させることです。
中医学では発汗・嘔吐・下痢・利尿などの生理的な排泄ルートを使って病邪の排泄をします。治病とは「病邪をいかに排泄させるか」であると考え、薬物で無理やり症状を無くするような方法は取りません。その排泄路のうち最も軽くて浅いところにある発汗法の応用です。

寒気が体表を襲い「さむけ」がするだけで、インフルエンザや麻疹のように病邪がまだ体内に侵入していなければ発汗法の中でも発表法を使います。一般には辛温発表剤といって、麻黄・桂皮・荊芥・杏仁などのがそれです。

しかしインフルエンザや麻疹ともなれば明確な病邪が侵入しています。一旦これが体内に入ると一寸の事では除去することが出来ません。そこで使うのが透発法です。
一般に辛凉透発剤といって葛根・浮萍・蝉退・芦根・連翹・薄荷などがそれです。処方としては升麻葛根湯などが有名です。

何が透発されるかというと、斑・疹・痘などから出る斑疹毒、痘毒、その他の陳腐の気や毒です。これによって外感病や皮膚病・できもの・痔・胃腸病・ガンに至るまで邪毒で排泄できるものなら何でも排泄しようとかかります。
ふと気が付くと何とも温泉療法に非常に近いではありませんか。

どこそこの温泉が皮膚病に良く効くとか、痔に効くとか、胃腸病に効くとか、ガンに効くことで有名な秋田の玉川温泉などと、温泉は万病に向いています。
あれはみな温泉に含まれる微量成分が直接的に効くのではなく、温泉の透発作用を通して病邪が排泄されて有効になると考えれば納得できます。
東北のある温泉地では乾癬に効く硫酸浴の方法を発明しています。これなども邪毒を深い処から体表へ誘導して排泄するのではないでしょうか。

昔から酒の深酔いに葛根湯を使うのが日本古来の方法でした。これもカラクリは透発法にあります。
腎透析をしていると皮膚掻痒になります。それを「よもぎローション」を塗って軽くするという成果を発表していた看護士さん達がいました。
家庭風呂によもぎを入れて皮膚の痒みを止めるのも昔からの方法です。
いちぢくの葉を煎じた汁で痔を洗えば痛みが消え、桃の葉を煎じた汁で行水させれば赤ちゃんのあせもが引くというのもあります。

中医学では、アトピーや湿疹などの皮膚病なら白蘚皮や連翹などで疹毒を、痔なら柴胡や升麻などで熱毒を、胃腸病なら桂皮や陳皮などで陳腐の気を透発します。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

アトピーとステロイドと漢方と

アトピー性皮膚炎にステロイド軟膏剤を塗布していて、突然塗布を止めるとリバウンドでひどい皮膚炎が起きるのは最早周知の事実です。
では何故リバウンドという現象が発生するのでしょうか?
「強い薬で無理やり症状を抑えていたからだ」
全くその通りです。然しこれだけで終わってしまっては正確に病態の理解をしているとは云えません。

中医学では“氷伏”という表現があります。
これは発熱や炎症などに対して寒凉剤を使って病邪を中に閉じ込めることです。一時的には症状が軽快し、患者は楽になります。こういうその場しのぎだけで真の治療を進めないと、閉じ込められ続けた熱や炎症はやがては地下にあって火山の熔岩のごとくに育つでしょう。軟膏剤の塗布を止めるや否や爆発的にリバウンドが起こるのは当然です。

一時的に強い寒凉剤を使って症状を軽くする事は決して悪いことではありません。軽快している暫時の間に本当の治療を進めるのは賢明な判断です。ただこの一時的処置が長引いて、いつまでも本治が為されないと問題です。

中医学では本治標治といって、「急なれば標治を、緩なれば本治を」行います。
問題は、何が本治かという事です。それが分からないので標治から抜け出せなかったのがこれまでの実態だったのではないでしょうか。

発熱や炎症を生体の「斗病反応 (正邪斗争)」と捉えてこれを阻止するのではなく、外へ排泄する“透発剤”で発散させれば熔岩の熱も少しずつ減っていくでしょう。この透発という概念が現代医学には欠けているのです。体表の病気である皮膚炎などは殊に外表への透発によらなければ何処へ熱を逃せましょうか。
くれぐれもアトピー性皮膚炎になったらステロイド軟膏剤で一時的な標治をしつつ、併せて中医学の透発法による本治も行ってください。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

従来から漢方界や中医学の分野では、副腎皮質ホルモンのステロイド剤のことを熱性の薬剤だと見なしてきました。それは長期的に使用すると、副反応として顔面の潮紅やニキビなどの外見的な熱状態が発現したからです。

然しそれだと矛盾します。どうして熱性薬が熱症状を閉じ込めることが出来るのですか?

ここで私は従来の説に反対して、ステロイド剤は寒凉性の薬剤だと主張します。それも強力な寒凉剤であると。
副作用として観察される熱症状は、薬剤から発生するのではなく、閉じ込められ(氷伏され)ていた斗病反応としての「病気の本態の熱」が浮き出たものです。

ステロイド剤はやはり現代医学の救世主です。蛇蝎の如く嫌わないで下さい。強力なのだから上手に、気を付けて使えばいいのです。

激素依賴性皮炎 を参考にして

最後に蛇足をひとつ、インフルエンザ脳症というのもジクロフェナクナトリウム(医薬品名:ボルタレン)使用により発熱が氷伏された結果かも知れない!?

| | Comments (0) | TrackBack (0)

認知症と漢方

今朝もテレビでまだ若い方の認知症を取り上げていましたが、見ていて切なくてなりません。なんとかして漢方(中医学)の智慧も動員して少しでもお役に立てたらと思います。

中医学には古くから“”という病気が認識されています。癲癇でなく、今日の認知症に極めて近い症状です。
何か思いつめる事があって欲求不満になると先ず肝気が抑鬱されます。それが長引くと次に脾気へ影響を及ぼします。すると脾胃の消化機能が悪くなり、津液の運化(代謝)が異常となり“”を生じます。その痰が神明(意識)を阻蔽し、精神異常のような症候になると説明されています。

このように中医学でいう“痰”とは、津液の代謝異常から生じた病的産物のことです。(コレステロール・アテローム・腺腫・軟塊なども含む)
この痰によって経脈の気血の運行が阻碍され、気の升降出入がうまく行かず、臓腑の機能までもが失調します。最も困るのは神明が蒙蔽されることです。
痰が臓腑・経絡・血脉のなかに潜在すると疑難病といって、実に奇怪な症を呈します。(痰に怪病多し)

これで認知症の一端が見えてきましたが、もう一つ忘れてはならないのは「本虚標実」という病態である事です。
本虚とは本質の虚すなわち気血陰陽の衰退であり、標実とは表面化している邪気の実体すなわち気・火・痰・淤血などの病理産物の堆積があるという事です。
したがって治療には単に本虚を補うだけではなく、病理産物の実邪をも取り去らなければなりません。
これを「補瀉兼施」の法といい、難病にはよくこの方法を用います。

痰から見てくるとこのように肝・脾の生理が根本原因に関与している。(若年期の原因)
しかし病位が脳であるという事で脳に関連する腎が次の要因でもある。(老年期の原因)

これらの因果を踏んで中医学の治療法は、理気解鬱・滌痰化淤・補腎填精の方法を提示しています。

* 具体的な処方や薬草については 認知症 「証」の決定 を見てください。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

炙甘草湯で気付いた事

『傷寒論』の炙甘草湯は次のようになっています。

甘草四兩炙,生姜三兩切,桂枝三兩去皮,人参二兩,生地黄一斤,阿膠二兩,麦門冬半升,麻子仁半升,大棗三十枚擘。

上九味,以清酒七升,水八升,先煮八味取三升,去滓納膠,熔化消尽,温服一升,日三服,一名復脉湯。

なぜここで生地黄が使われているのか? 生の地黄を常備しておくのは大変なことだ。
中国のあるHPを見ていたら次のような説明があった。

当時はまだ熟地黄が無く、生地黄しか無かったのでこれを使っているだけである。生地黄や干地黄は性が寒凉である。それを熱性の酒に水を加えて煮る事によって温性に変化させている。心脉の鼓動というものは腎気が上升して心気を助ける事によって為されるものであり、温性補腎薬としての熟地黄が必要だった。 (現代では酒水で煎じる代わり