治験

脳梗塞で意識不明

 董××,男,70歳。
意識を失い口も利けなくなって3ケ月。医診では脳血栓症と。
先ず西薬治療を20日して効無し,継いで又中薬の安宮牛黄丸、至宝丹を2ケ月飲ませたがやはり効無し。
症状は神昏不語,眼をつむり口を閉じ,いびきをかき,手足はふにゃふにゃ,二便を漏らし,舌苔は黄白で厚膩,脈は虚大弦滑。
目と口を閉じ,鼾をかき,二便自遺で,脈が虚大なのは,正気の大虚にして,五臓が絶えようとしている。
脈が弦滑なのは,まだ陽気があり,痰熱蒙蔽になっていることだ。
綜合すると五臓欲絶だが陽気があるから回復の機はある,ただ痰湿の邪気が阻鬱しているだけだ。
治療としては気陰を大補して扶正回元し,少し化痰開竅で其の邪を除いて佐けよう。(扶正祛邪)
処方:黄芪15 当帰・人参・麦冬・五味子・竹茹・枳殻・半夏・陳皮・茯苓・甘草・菖蒲・遠志10 知母6
連続して服薬すること15剤で,意識が少し戻り,時々眼を開き,口を開いて大小便をしたいと云うようになった。
此の時に某医は薬効の緩慢なのを嫌い,さらに安宮牛黄丸を毎日2丸づつ服ませたところ,2日后に意識が無くなり,大便を失禁するようになった。
私が会診して云く:此れは五臓大衰の候である,何故 克伐の薬などを飲ませたのか。すぐに安宮牛黄丸を去り、前の処方から知母を抜いた。
服薬すること15剤にして,意識が戻った。
   中医临证经验与方法 より
※同じような状態の親戚を看取ったことがある。その時には何もしてあげられなかったが、こんな方法があったとは。
また中風に牛黄製剤を奨める古くからの伝承にも、それは「克伐の薬」だから使う時を選べと忠告している。

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早朝頭痛

 蘇××,女,30歳。左側の偏頭痛で3年。医診では血管性頭痛。
先ず西薬治で不効,后に又中薬の平肝瀉火、祛風散寒、養血活血、針灸治にても,亦無功。
頭痛は突発性で,引き裂くか,錐で刺されるかのようで,同時に悪心嘔吐や吐瀉を伴う。
頭痛にははっきりした時間性があり,毎回発病するのは早晨起床の后で,午前10時前後になると緩解する,この情況が2~3日連続した后,最後には極度の疲乏と嗜睡がきて,時には連続して3~4日も眠る,食べることも,飲むこともしない,嗜睡が終わった后,又絶え間のない隠痛が2~3日始まり,再び突然の劇痛が数回あって,ようやく頭痛が消失する。
この発作は,初めは半年に一回ほどだったが,近年は,殆ど平均して一ケ月に一回ほどで,毎回少なくとも7日,多ければ半月も続く。
此度の発病と前回の発病とは僅か一周しか隔たっていない,此の半年は,まるで仕事が出来ない。
舌苔白く,脈は弦大にして緊,右は左よりも大きい。
脈証を綜合すれば,気血倶虚が本で,風寒外客が標である。
治は益気養血,疏風散寒とする。
 補中益気湯(黄芪15 升麻・柴胡・白朮・人参・当帰・羌活10 甘草6)
某医云わく:此のように劇しい病なのに,補中益気湯ぐらいで治せますか?
答えて日く:此の病は毎日早晨に起きる,早晨とは,《内経》では朝と称するが,卯辰の時(午前6時~8時)である,此の時は陽気初生の時で,陽虚挾鬱者は,升発不利となる,故に疼痛が大きい,午後に陽気が盛んになると痛みが減るのは,陰陽が相対的に平衡となる為です,此の証はただ補うだけで解することが出来るが,補中に升散薬を佐とする事が必須です,故に補中益気で治るのです。
又云く:疼痛が此のように劇しいのに,どうして蜈蚣、全蝎を用いないのか?
答えて曰く:風寒閉鬱,陽気閉鬱には,やはり散風升陽の薬味が好い,羌活を加えるだけでよく、蜈蚣、全蝎は用いない。
東垣の著を見てください,羌活、防風、白芷、細辛、独活を用いるだけで,蜈蚣、全蝎は用いていません。
服薬すること4剤で,頭痛は頓になくなり,其の后又服すること40剤で,すっかり愈えた。
   中医临证经验与方法 より
※天人相応が人体に現れている。

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肺炎4

 衛××,男,42歳。8日前に突然42℃の高熱が出た。
某院で肺炎と診断され、先ずペニシリン、ストレプトマイシン、アンピシリン、エリスロマイシン、先鋒黴素Ⅱ、先鋒黴素Ⅳ、先鋒必、アミノチオフェンで5日間治療したが,体温は下降しなかった,継いでまたステロイドホルモンや中薬の清熱解毒剤を配合して3日間治療したが,やはり体温は依然として改善せず。
体温は40.3℃だが,時に脇から上に向って冷気が逆上してくるのが感じられ,舌苔白,脈は沈弦滑数である。
弦脈とは,少陽である;滑数とは,痰火膠結である。
ゆえに和解少陽,化痰瀉火にて治療するのが宜しい。
処方:(柴胡30 黄芩・生姜10 大棗12个 瓜蒌30)
某医云く:薬は僅か3味しかないのに,果たして効きますかね。
答えて曰く:前の方は銀花100,連翹50,生石膏250を用い,また抗生物質を加えても効かなかったのです,恐らく薬力の大小ではなく,方法が間違っていたのでしょう。今病は少陽に在りますから,枢機を和解すべきです,逆に陽気を冰鬱させて,陽気鬱となれば,熱は除かれません。東垣云く:熱鬱、火鬱には,必ず発する処方でなければならない,故に升陽散火湯を挙げて大熱を解しています。更にいえば升陽散火の薬味,薬量よりも少ないゆえ,却って神効があるでしょう。《傷寒論》云く:胸中煩するなら,人参、半夏を去ると,此の病の脈は弦,滑で,おまけに冷気上冲がある,故に此の五薬だけで治すのです。
服薬1剤で,4時間后には,微汗が出て,熱は体温36.8℃まで退いた,再服1剤で,脈は滑から弦に転じた,そこで柴胡湯2剤を服して癒えた。
某医云く、消炎薬を用いないで肺の炎症が速やかに消退するなんて,未だ聞いたことがない。
答えて曰く:炎症とは現代医学の説です,中医では炎症に如何に対待しているか,如何に処理しているか,そこは研究すべき問題です。炎症とは熱毒であるとするのは,正確ではないと思っています。此の症が効かなかったのは此こにあります。
   中医临证经验与方法 より
※炎症にこだわり,抗菌,解毒するばかりでは,少陽は解しない。
升陽散火湯(升麻・葛根・独活・羌活・白芍・人参5 炙甘草・柴胡3 防風2.5 甘草2)

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肺炎3

支××,女,35歳。春節を過ぎる頃,突然 発熱咳嗽となった。
医師は抗生剤、ワクチンによる治療を進め,発熱はすぐに無くなったが,咳嗽は反って劇しくなり,時には連続して止まらず,平臥ができない。
ついに某院で入院治療となり、気管支肺炎とのこと。
医師は先ず多種の抗生剤と止咳化痰薬を用いて5ケ月以上も治療をしたが効かず,更にまた中薬の宣肺止咳、清熱解毒の配合剤を用いて1ケ月以上も治療したが依然として療効なし。
経済的困難のため,やむを得ず退院した。
突発的な劇しい咳嗽で,平臥ができず,胸満胸痛,頭暈頭痛,口苦咽干,不欲飲食,舌苔薄白,脈は弦細渋である。
外感病で脈弦になるのは少陽の枢機不利である;渋は,寒であり,滞である。
この証は邪が少陽に在って,寒飲蘊肺の証である。
よって小柴胡湯加減にて枢機を和し;干姜、五味子、紫菀で肺飲を化し,咳嗽を止めよう。
小柴胡湯加減(柴胡・半夏・黄芩・五味子・絲瓜絡・紫菀10 干姜4)
服薬4剤で,諸証はみな減り,継服15剤で,諸証は消失して治った。
某医云く:炎症に清熱解毒剤を用いないで消炎し,反対に干姜という温熱薬を用いたのは,解りかねますが?
余云く:中医と西医は異なる理論体系です,西医の理論で無理やり中医的治療をしてはなりません。本証は中医的には邪在少陽だから和解すべきで,寒飲阻肺だから温肺化飲をしたのです。
   中医临证经验与方法 より
※寒飲阻肺,枢機不利に対して化飲をせず,反対に清熱したのは寒を以って寒を治す事になり病情は悪化した。

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肺炎2

 鄭××,男,50歳。咳嗽発熱して2ケ月以上になる。某院では肺炎と診断された。
先ずペニシリン、アンピシリン等の治療を1ケ月以上受けて,発熱,咳嗽気短は明らかに改善したが,1ケ月経っても症状はなお残り軽減しなくなった,数回の胸部X線検査でも影が縮小していない,又某医が養陰清熱,化痰止咳の中薬を以って治そうとして,10剤ほど使ったが,諸証は減らなかった。
症状は咳嗽吐痰に,疲乏無力,午后から熱が高くなる,食欲不振,舌苔薄白,脈虚大弦滑にして渋。
脈虚大は気陰倶虚である;弦は肝であり,木火凌金になっている;滑は痰であり,渋は滞であり寒である。
これを綜合すれば,気陰倶虚,痰熱蘊肺,木鬱化火,陽気不化の証である。
補気養陰を以って培本し,化痰清熱,理気温陽を以って標を治すのが宜しい。
処方:(黄芪15 地骨皮・秦艽・紫菀・党参・茯苓・柴胡・半夏・知母・生地・麦冬・桂枝・甘草・桔梗10 桑皮10)
服薬6剤の后,諸証は消失した,継服すること3剤にして,胸部x線で陰影は消失した。
某医が問う:本病は肺炎に違いなく,抗生剤と中薬の清熱解毒剤で一旦は炎症が消失したのに,どうして完全には治らなかったのか?
答えて曰く:炎症なら本来は消炎薬で治療されるはずなのに,長くかかっても治らなかったのは,きっと正気不足だったからでしょう,正虚者は養陰するだけでは治らない,気虚を挾んでいるから,補気養陰により扶正をし,化痰清熱,理気通陽したので癒えたのです。
   中医临证经验与方法 より
※気陰倶虚,痰熱内鬱なのに,養陰益気をせず,清熱解毒ばかりしていたから治らなかった。中医の扶正の考え方を取り入れてほしい。

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肺炎1

 黎××,女,成。咳嗽胸満が一ケ月以上続き、肺炎と診断された。
初めは抗生剤を使ったが無効だった,その后 辛凉解表、清熱解毒、宣肺止咳の中薬治療を20日以上やったがやはり効果なし。
咳嗽のほかに,胸満胸痛,疲乏無力,口鼻発干するが渇せず,体温37.7℃,舌苔薄白,脈沈緩稍弦。
病は秋季に発し,脈沈緩で弦,且つ寒凉剤を久用して効かなかったことを考えなければならない。
秋燥凉邪が肺を犯せば,肺気不宣,寒飲内生となり,且つ気鬱を兼ねるだろう。
因って辛潤化痰,理気止咳とする。
杏蘇散加減(紫蘇・陳皮・枳殻・前胡・半夏・木香・甘草・桔梗・茯苓・紫菀10 葛根15)
服薬2剤で,咳嗽はすぐに減り,継服10剤で諸証は消失した。
X線検査で心肺膈は正常となっていた。
某医云く:麻杏石甘湯が効かずに,非消炎薬が有効だったとは?
答えて云く:肺炎は肺熱者が多いけれど,寒飲阻肺の者もいます。本証の脈証は寒、鬱、飲証の合邪に一致していたので,辛温、化飲、理気の合法を用いて愈えたのです。
   中医临证经验与方法 より
※肺炎と聞けば抗生物質や麻杏甘石湯のような辛凉清熱剤を第一に思いつきやすいが、秋の凉燥という季節性を忘れてはならない。先ず辛温剤を投与すべきだったのに誤って清熱解毒をしたところ、寒邪閉鬱となり内飲が生じて久治するも癒えなくなったのである。

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春秋定例の感冒

孫××,女,40歳。
七、八年来,毎年春秋の二シーズンに決まって感冒にかかり,軽ければ五六日のを一回,重ければ二三日のを一回,毎回感冒の后で慌てて服薬して七八日かかって漸く緩解する。
最近二年余りは病情が次第に重くなり,中薬を用いて疏風解表、補気固表すること数百剤,西薬の胎盤グロブリンを五本,それでもはっきりとした改善は無い。
症状は頭暈乏力,時時噴嚏,口苦口干,食欲不振,心煩,口苦,舌苔薄白,脈弦緩である。
脈証を綜合し,諸医が与えた薬効と結びつけて,反復思考するに,少陽は胆に属し,胆は諸臓の主である,肝胆は互いに表裏を為す,肝胆の気が鬱結すれば,少陽春升の気は不安となり肺金に反克する,故に春秋二季に衛気不固となり外邪に感じ易くなる。
治には和解少陽,プラス調営衛が宜しい,柴胡桂枝湯加減を処方した。
 処方:柴胡・半夏・黄芩・党参・灸甘草・桂枝・白芍10 生姜3片 大棗7个
服薬三剤にして,諸証は消失した,其の后また毎年の春,秋二季には各々三剤を服薬することにし,三年もすると,中薬数剤で治るようになった。
   难病奇治 より
※柴胡桂枝湯は数日間飲めば良いのであり、安易に体質改善の目的で長く飲むものではない。

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肝鬱感冒

葛××,男,30歳。
腹を立てた后で,突然感冒にかかり,先ず西薬治療を一ケ月間余やり,その后中薬の疏風散寒,辛凉解表薬の治療を20数日間やったが,いずれも効かなかった。
症状は頭暈頭痛,全身酸痛,鼻塞流涕,絶え間ない噴嚏,眼の微痒,軽微な咳嗽,胸脇苦満,食欲不振,舌苔薄白,脈沈微弦。
脈証を綜合して思考するに:鼻塞流涕,頻繁な噴嚏は,確かに風寒客肺の証で,頭暈頭痛,全身酸痛は確かに風寒客表の証であるのに,いくら治そうとしてもちっとも効かない,しかし胸脇苦満,脈沈弦を再思すると,これは肝鬱気滞の脈証である,且つ病が起ったのは腹を立てた后である,此れは実は肝鬱の証で,外邪を感受したので,清陽が升れず,濁陰が降れず,それで営衛失調,肺衛不固となり,感冒が解けないのだ,治すには調肝理気プラス解表宣肺とするのが宜しく,参蘇飲加減を処方した。
 処方:党参・蘇葉・陳皮・枳殻・前胡・半夏・甘草・桔梗・茯苓10 葛根15 木香6
服薬すること三剤で,諸証は消失して愈えた。
   难病奇治 より
※参蘇飲に肝鬱を解く作用があるとは知らなかった!

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月経期の感冒

李××,女,38歳。
七、八年来,毎回月経が来る一二日前になると頭痛身痛,鼻塞流涕,噴嚏,或いは軽い咳嗽の症状が現れ,月経が過ぎると二日ほどで症状は自然に消えていきます,今までに多くの西薬やら中薬の解表清熱、疏風散寒、補気固表剤を用いてみましたが,一向に効ききませんでした。

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葛根湯の誤案

 康某とは,黄師(黄仕沛)の姐さんですが,吾輩は“師姑媽”と呼んでいます,年は70ほどで,今も経方の研究をしています。
糖尿病、頚椎病、骨質疏松、老年退行性骨関節病の病歴があります。
今年3月に,毎夜片側の足のつま先~脛にかけて攣急疼痛の発作を起こした,それも夜間に多く,毎夜一回は起こり,毎回3~5分間続き,痛くて眠れない。

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