治験

粉瘤(ふんりゅう・アテローム)

皮膚腫瘍とか脂肪瘤(脂瘤)や皮脂腺嚢腫ともいう。
中央に黒頭があり,擠圧すると内から白色粉状物を排出する。
一部には“粉瘤は治療する必要が無い”などと誤解されているが放っておくと感染して化膿し、赤く腫れ上がることもあります。
好発部位は頭皮・顔面・陰嚢・肩胛及び背部などです。

未感染のうちに手術によって切除するのが最も簡便な方法ですが、多発性だったり部位によっては漢方的な治療が必要になります。

漢方ではこれを「痰核流注」と呼んでいます。
痰核とは湿痰が皮下に流聚して固まったものです。
なぜ固まるのかといえば気滞血淤が関与するからでしょう。
将来 細菌感染を受けるような場合はこれが「湿熱鬱結」による痰核だったと分ります。
湿熱性の特徴としては小便短赤や舌苔黄膩などがあります。

『中医臨床』vol.24-no.3(2003/9)p30 に治験例が載っていました。

患者:千〇〇,女性,50歳,幹部。
初診:1993年11月6日
現病歴:3年前両手に豆状で黄色の大小結節の発生を見た。
軟らかな結節で皮膚の色は正常であった。
本人は気にしなかったが結節は徐々に大きくなり数も増加してきた。
さらに体幹および下肢にも広がり,豆粒大・卵大のものも見られるようになり,局部的な弱い痛みも感じられた。
1993年3月に某医院で結節の病理検査を受け脂肪瘤と診断された。
多発性のため外科的な切除は不適と判断され中医による治療を求めてきた。

舌苔は白膩,滑脈。
弁証:気滞血淤・痰湿蘊結
論治:理気活血・化痰軟堅

処方:生意苡仁120,当帰尾・生牡蛎(先煎)30,赤芍・青皮・陳皮・茯苓・元参・浙貝母15,制半夏10

経過:上記加減方を4カ月あまり服用したところ結節はすべて消失し皮膚の色は正常となった。

『中医症状鑑別診断学』によれば次の様な処方も挙げられています。

加味小胃丹 (天南星・半夏・桃仁・杏仁・紅花・陳皮・白朮・白芥子・枳実・蒼朮)

竹瀝達痰丸 (竹瀝・大黄・黄岑・沈香・人参・白朮・茯苓・陳皮・甘草・半夏・青蒙石・生姜汁)

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慢性下痢(泄瀉)

60代 男 中肉 顏色普通。
かなり長く下痢を病んでいる。
形のない水様の下痢が一日3回ほどある。
よく潤った舌で格別のことはない。

水様下痢だというので安易に胃苓湯エキスを五日分出してしまった。
五日後にまた来て、一日3回あった下痢が2回に減ったというのでもう一度 胃苓湯エキスを五日分出した。
更に五日後にまた来たので聞いてみると、やはり一日2回で便の頭は普通便だが終わりの方は水様便だとのこと。

「おかしいなあ、今まで聞かなかったけど腹痛はありますか?」
「下痢の前に決まって右側が痛かったり胃の辺りが痛かったりする。」

胃苓湯の証でも冷えによって腹痛はあるものだが、十日も飲んで効かないとなれば証を間違えている事は疑いない。
脾湿が原因ではなくて肝鬱脾虚かも知れない。
そこで今回から逍遥散痛瀉要方を加味した処方に変更した。

 (柴胡・当帰・白芍・白朮・茯苓・防風5 甘草3 生姜1)34

五日後に来て云うには、便が形になってきて腹痛も軽くなったと。
そこでもう一度 同じ処方を五日分出した。

ここで猛反省!
水様便という表現に騙されてすぐに脾湿と決めてかかったのが間違いの元だった。
下痢に逍遥散を用いることはあまり無いのでつい不覚を取った。

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焦樹徳 方剤心得十講逍遥散のところにもっと良い処方例がありました。

肝脾失和による慢性泄瀉の治療

症見脇部脹痛,腹部重墜,食欲不振,口干不欲多飲,舌質較紅,大便溏泄,毎日3~4次,四肢倦怠,飯后遅消或倒飽、面色萎黄欠沢,脈象弦細,重按乏力。

適用于慢性腸炎、腸結核等病。

逍遥散加減
(土炒当帰,柴胡,蓮子肉2 土炒白芍・土炒白朮・炒扁豆3 茯苓7 車前子・炒山薬・欠実米4 炙甘草1)35

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夜間ひどくなる咳 (風邪)

自家経験

2008/05/10 背に寒気と咽に痰からみ、切れない。風邪をひいたようだ。

05/11 声重、だみ声に変わった。季節がら風熱性の風邪とみて桑菊飲を服用する。

05/12 声重がとれて代わりに咳嗽が出始めた。桑菊飲を続ける。

05/13 夜になると特に咳嗽がひどくて眠れない。途切れとぎれに眠る。桑菊飲を続ける。粘りっけのある鼻水も盛んに出る。

05/14 日中はさほど咳嗽が出ないのに夜になり床に入ると続けさまに出て胸が痛くなる。それでも桑菊飲の証だと信じて続ける。

05/15 ますます夜間の咳嗽がひどくなる一方だが桑菊飲を続ける。

05/16 このへばりつく粘痰は何だ、夜間の咳嗽に耐えられず考えていたら、ふと清肺湯《万病回春》を思い出した。 真夜中に起きて煎じ薬を作り飲んでみる。

 (黄岑・桔梗・桑白皮・杏仁・山梔子・天門冬・貝母・陳皮・大棗・竹茹2、茯苓・当帰・麦門冬3、五味子・生姜・甘草1)32

これを飲んでから少しは眠れたから効果はあったのだろう。 更にへばりつく粘痰を取り去ればと考え直して清金化痰湯に変方する。

 (黄岑・山梔子・知母・桑白皮・瓜呂仁・貝母・麦門冬・橘皮・茯苓・桔梗・甘草)

05/17 しかし日中は軽く夜間にひどいのは何故だ?陰虚がからむとすれば、もしかして温燥病か? 日本の風土に温燥病などあろうか? 腑に落ちないが症状が似ている。 試しに温燥の桑杏湯に変方する。

 (桑葉6 杏仁・沙参・貝母・淡豆鼓・<梨皮>5 山梔子4 甘草2)

05/18 いくらか楽になったが粘りのある鼻水もひどい。なお桑杏湯を続ける。

05/19 咳嗽は半減したがいまいちスッキリとしない。

05/20 原点に返って考え直す。平熱で口干もないから風熱も温燥もあり得ない。 やはりただの「傷風」にほかならない。 そこで風熱にも風寒にもどちらにも使える「止嗽散」の加味方を使うことにする。頓咳(百日咳)をヒントに、

 (紫苑・桔梗・陳皮・桑葉・連翹・貝母5 百部・白前4 荊芥3 甘草2)43

05/21 効果は覿面で、今朝はもう殆ど咳嗽が出ない。止嗽散加味を続ける。

05/22 ほぼ全快。咳嗽も鼻水も止まった。もう一日だけ服薬する。

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さて今回の風邪から学んだのは、と整理してみる。

 1. まず“風熱”ではなく、むしろ“風寒挟熱”だったこと。
五日間にわたって桑菊飲を飲み続けたのは風寒挟熱を風熱と取り間違えたためである。情けない。

 2. 清肺湯から清金化痰湯、桑杏湯へと変方して少しは効果があったのは 貝母・桑白皮・桑葉 などの薬味のせいだろう。

 3. 夜になると悪化したの、はやはり肺陰の不足が元からあったからだろう。
滋潤性の薬味が多い止嗽散は得がたい処方である。

 4. 止嗽散だけでは多分ダメだったろう。
止嗽散加味の荊芥()と桑葉・連翹・貝母()の両方があったから奏効したのだろう。
まったく‥‥‥処方が当たると3日で全快してしまう。
やっぱり漢方はスゴイ!

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鼻炎は胆経鬱熱が多い

鼻は肺の竅(穴)ではあるが慢性鼻竇炎ともなると肺からではなくて胆経から治さなくてはならない。
なぜなら鼻炎の初期は感冒外感から始まるが表熱が長引くとやがて裏へ入り胆経の鬱熱に変わるからだ。
胆経は上って鼻を犯し頭脳(鼻竇)を蒸灼するというのが中医の理論である。

鼻渊は又脳漏と称し,現代医学の急慢性鼻竇炎に相当する。
小儿の鼻渊の主要な発病機理は外感風寒、風熱,胆経鬱熱,肺気虚寒の三方面であるが,胆経鬱熱による鼻渊が臨床上もっとも多い。
胆木は最も風邪を悪み,外感風寒、風熱で表邪が解けず胆中に入ると鬱熱となる。

清代の医家で陳士鐸の著《辨証奇聞》には取渊湯というのがあり、辛夷、当帰、柴胡、貝母、梔子、玄参の六味薬からなる。
書に曰く:“胆は陽に属し,頭は亦陽なり。胆熱は久蔵されず,必ず熱は上走して頭に移る。脳は頭中に在りて,頭は蔵熱の処にあらず,小さな穴(経穴)から入り,大きな穴(竅)から出る,鼻がそれである。
六味薬の中,当帰の用法が最も巧みであり,原方では補益脳気の意味で大量に使う。張教授は小儿の鼻渊を治療する時,当帰を20gとする。
《聖済総録》に謂く:“脳は髄海なり,蔵するばかりで瀉するものはないのだが胆熱が脳に移ると,蔵した者も瀉される。
それで脳液が鼻から下滲して,劇症の時はあたかも水源から下るように濁涕が下りて已まない。”

それゆえ張教授は,鼻渊は脳液が尽く出てしまうから,脳気を大補しなければならないし,又脳液が直かに流れると,髄は精を作らないので,精が少なくなり,大腸に分布されず干燥する,故に当帰を大用するのは補脳添精の功と,滋潤腸燥の益を図っているのである。
全方は清宣と補瀉を并用し,胆火を消し脳気を盛んにすれば,濁涕は止り鼻竅は通ずる。
張教授は本方を鼻渊に応用しており臨床では鼻塞が厳重で,黄緑色の流涕や,血を帯びるのや,質が稠で気味が濃重で,舌紅苔黄,并せて煩躁易怒を伴い,頭暈口苦の症状がある。
もし肝胆湿熱の重い者なら,竜胆瀉肝湯を合用し肝胆を清瀉し,利湿開竅する。

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尿路結石に壮水行舟法

宋代の理学思想家 朱熹の詩の一首に《泛舟》というのがある。
昨夜江辺春水生、艨艟巨艦一毛軽、向来枉費推移力、此日中流自在行
(昨夜川岸に春の水が流れ、巨艦も一毛のように軽く滑っていく。これまで船を押すのに苦労したのが無駄であったかのように、この日は流れに自在に進んでいくではないか)
これは一旦 豁然として貫通したときの喜悦の心情を表している。
ここに形容されるように壮水行舟之法を用いる事が腎結石の治療に最も相応しい。

腎結石( 石淋) はヤカンの底に溜まる湯垢のようで、腎水不足によって虚火が起こり廃渣を煉灼して結聚になったものである。
腎石が阻塞すると排尿は不暢となり尿液が瀦留しやすくなり、更に結石の増大につながる。
一般に腎結石の治療には車前子、木通、沢瀉等の利尿剤が多用されている。
しかしこれは尿管まで降りた結石には有利であるが、利尿し過ぎると必ずや腎水を耗傷し腎臓功能にも影響する。
筆者は本病を治療するに化石通淋の基礎に立ちつつも必ず腎水を補うようにしている。
「壮水行舟」とは水が漲れば船が行き易いように、腎や輸尿管中に嵌頓した結石も自然に下るという意味である。

熊某, 男,48 歳。

【病因】腎水が虧虚したので, 膀胱に熱が結ぼれ, 虚火が煉灼するや, 廃渣は結聚となった。

【証候】左腰腹に陣発性絞痛が2 年つづく, 尿意は頻頻としてあるが不暢であり, また耳鳴, 頭昏もある。
舌質は偏紅で, 裂紋あり, 脈は左尺部が弦細。
X 線で左腎腎盂に約1.1cm ×0.6cm の陰影がある。

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帯状疱疹后遺肋間神経痛

病例
 張某,女,61歳。2003-04-20初診。
前右側の脅肋が疼痛しているうちに疱疹が出現してきた。
西医診断では帯状疱疹である。
西薬治療26日で疱疹は消失したが右側肋間に持続性疼痛が后遺した,夜間には尤も甚しく,入睡し難い,検査では肝胆疾病はない,西薬にて止痛治療を3年余行ったが効果はない,并せて胃部不適も引起した。

中医診: 右側脅肋の疼痛,食欲不振,舌質は紫,脈は弦細。

診断: 帯状疱疹の后遺肋間神経痛(淤血型)。

治法: 活血化淤通絡。

薬方: 旋覆花湯加減。

薬物組成: 旋覆花・紅花・焦山査12g,桃仁・当帰15g,柴胡・鬱金・川楝子・延胡索・炒白朮・新絳(茜根)10g。

服薬3剤の后,疼痛は大いに減り,睡眠、飲食ともに正常となった。
守方継服2剤にて痊愈した。

※旋覆花湯《金匱要略》が肝着病を治すのに用いられている事より旋覆花には化痰作用のほかに血脉を通じて理気止痛にも働くと思われる。

※肝着の着とは邪気留着の意である。肝臓の気血が鬱滞して胸脅の痞悶不舒あるいは脹痛を出現する。按摩をすれば楽になり、また熱飲を喜ぶのが特徴である。

天津市寧河県豊台医院中医科,中医内科臨床,韓以季(1954-)
(河北中医 2007年 1月 )

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膀胱の気化作用とは

「素問、霊蘭秘典論第八」 にある「膀胱者,州都之官,津液藏焉,氣化則能出矣」というくだりをどのように解釈するか?
まず州都とは城市(都市)のことで、辺地から中央へと川の流れが集まる事を意味する。
城市では出入に関所が設けられているように、川の流れも一旦水門によって貯められる。
それで膀胱は政府の官職が行う水門の開閉によって集聚した水液を管理しているのである。
気化作用といえば「水が気化して水蒸気になる」ことを意味している。
だから従来の解釈では気化を腎の透析機能そのものと看做してきた。
しかし気化が腎だけではなく肺(肌表)や肝によっても行われることを見逃してはならない。

医案例1
3歳の男子、時邪疫毒に外感した。
発熱38℃、全身および目が鮮明な黄色となり、口渇あり、小便短少で色は黄赤、大便は秘結し、顏色は灰白色で、腹が膨張している。舌苔は黄膩、脈は弦数。

弁証
陽黄で、熱が湿よりも重い。急性黄疸型伝染性肝炎。

治法
太陽を開き湿熱を清すれば、発汗利尿して太陽・陽明に遏伏する湿熱が両解しよう。

方薬
麻黄連翹赤小豆湯
 麻黄3 連翹・杏仁・鶏内金6 桑白皮・枳殻・大黄5 茵陳蒿9 赤小豆10

 一週間で諸症は癒えた。

解析
淤熱が裏にあるのに表が塞がっているから急性黄疸型伝染性肝炎を起こした。
苦寒清熱の薬が行くところではない。
太陽の表を開き湿熱の裏を清して、肝胆および皮膚内の湿熱病毒を追い出さなければならない。
茵陳蒿は気分薬で陽明に遏伏する湿熱を清し、また太陽膀胱に入り気化を助け、発汗利水・利胆退黄に働く。

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女性の陰部掻痒 (カンジダ)

2種類の陰痒があります。

1. 湿熱が原因
 分泌液が多く、ただれたり おりものがあります。多くは急性で竜胆瀉肝湯が主方です。
2. 陰虚が原因
 陰虚なので分泌液はなく乾燥性です。多くは慢性で知柏地黄丸が主方です。
---

女 27歳 小太り
もっとも治して欲しいこと:
一番目: 外陰部と肛門の痒み(ただれてしまい、特に夜痒くなる)
 幼児の頃から陰部が痒くなりやすかった。
17歳頃にアトピーが非常にひどい状態になってから再度 痒みが再発した。

二番目: 鼻と喉の境目辺りに常に痰がたまっていて、声がかすれることがある。
 23歳くらいから痰の切れが悪くなった。

三番目: 17歳頃、急激なダイエットをしてから つばを飲んだりすると耳の奥で“ブツッ”というような音がする。耳鼻科で耳官閉塞症と診断された。自分では耳垢がたまっている感覚があり、ついつい耳の中を綿棒でいじってしまい、耳の中が常にただれたりかさぶたのようなものがある状態。

四番目: 紫外線に極端に弱い。
 10歳頃から直射日光に長時間当たると皮膚が真っ赤になり、あたりすぎるとただれてしまう。特に顔の皮膚が弱い。
現在も、たった15分程度強い陽射しをあびただけで顔が腫れて真っ赤になってしまうことがある。

その他の身体状況: 暑がり。乾燥肌。胃は丈夫。食欲旺盛。

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活絡効霊丹の応用5

活絡効霊丹治痺証験案
作者:王宜昌,黄雪玲, 宜春医専学報
出版日期: 1998年3月30日

1腰椎増生症
李××,女,55歳,会計。1997年1月10日初診。
患者は十余年も腰痛がある。いつも労累や久坐ですぐに起こる,CT検査診断では“第3-4腰椎増生”。

診見:腰痛は錐で刺されるよう,痛みの箇処は決まっている,仰俯転側ができない,下肢は酸脹する,食欲はある,二便は正常.舌は淡紅で辺に淤斑あり,苔は薄白,脈は細弦。

証は気滞血淤,肝腎不足に属する。
治には活血通絡,補益肝腎を。
活絡効霊丹加味:当帰、丹参、桑寄生各15,制乳香、制没薬、川続断、杜仲各12,繭絲子10,全蝎6,甘草3g。

服薬5剤で患者はすぐに腰痛が軽減した事を感じた。
薬は已に病に的中したが,上方に威霊仙12,肉従蓉10を加えて継続した。共服すること10剤で,腰痛は消失した。

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活絡効霊丹の応用4

加味効霊丹
作者:蘇州市中医医院 朱文明, 中医薬信息
出版日期: 1998年5月10日

1頭痛効霊丹 主治 正、偏頭痛,久しく愈えず,痛みは錐刺の如し,或いは頭部に外傷史有り,舌質は淡紫 或いは淤斑あり,脈は細弦 或いは細渋。
薬物:川弓、白止、当帰、丹参、生乳香、生没薬各10g,煎服。

病案挙例 張××,女,45歳。
何年も頭痛が続いている,眩暈昏脹を伴い,痛み激しく錘を刺すよう,悪心して吐きそうになる,舌は紫,苔は薄黄,脈は細弦(西医診断:血管性神経性頭痛)。

治法:去風透竅,活血通絡。
処方:川弓、白止、桃仁、赤芍、当帰各10,丹参15,生乳香、生没薬各5,生姜3片,老葱3支,口服麝香0.015g,
服薬5剤で,疼痛は緩解した。
原方から麝香を去り,続服7剤后,頭痛は起こらなくなった,継いで養血去風,柔益肝腎法にて,調理善后した。

按:久痛による淤阻では,必ず気血を損し,上部の脳を栄養しなくなり,悪循環となる,頭痛効霊丹は去風通絡,養血滅風をなし,通竅活血湯と合さり活血化淤を強める,其の中の葱、麝香は通陽透竅するので,効果が速く出た。

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アトピー性皮膚炎

2007/10/08
女性、30歳。アトピー が背中~肩~胸~脇の下へかけて広がり、皮膚が硬化しはじめ褐色になっている。
夜間は痒くて寝られない。舌に異常なく、やや紫の部分がある。
疲れやすく眠い、かなりの冷え性。汗は殆どかかない。口乾なし。

アトピーの人の舌証はたいてい虚証を呈している事が多い。
この方も慢性期に当たり「脾虚湿困」の証と思われたので二診の健脾利湿法をとることにした。
一週間分を試しに持っていく。

処方: (黄耆・蒼朮・茵陳蒿・沢瀉・車前子・大青葉・金銀花2 滑石2.5 甘草0.5 白蘚皮・意苡仁・地膚子3)26g

2007/10/14
症状に変化なし。味は割りと飲みやすい。

2007/10/27
夫が代理で取りに来る。30日分を渡す。

2007/11/25
本人が取りに来たので聞いてみると、顔も胸も皮膚の色が白くなり、痒みもなくなり軽快しているのがよく分るとのこと。30日分を渡す。

これを聞いて「アー、本当に効いたんだ! 処方に偽りはなかったんだ。」と我ながら感激した。

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活絡効霊丹の応用3

作者:劉咏華, 遼寧中医学院学報
出版日期: 1999年6月28日

1 坐骨神経痛
陳某,女,46歳。1997年11月12日就診。
右下肢の后外側に持続性の疼痛が1年余続いており,この2个月は特にひどい。
坐骨神経に沿って放射性の針刺様疼痛があり,動くと痛みが増す,睡眠はとれず,口干あり,飲食と二便は正常,舌は紫暗,苔は白厚膩,脈は細滑。
此れは湿淤阻滞,気血の運行が不暢で,不通なれば則ち痛む、の病理である。
化湿行淤,温経通絡を図るべきである。
 活絡効霊丹加味。

薬用:当帰、丹参、乳香、没薬各15,独活、秦[艸/九]、威霊仙、川牛膝各12,杜仲、川断各15,細辛3,桂枝6g

6剤薬后,右側の腿疼は大いに減り,睡眠も佳くなり,口は干かなくなった,
上方を加減して,服すること二十余剤で,疼痛は消失し,活動は自由になった。

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活絡効霊丹の応用2

作者:徐建華, 河南中医
出版日期: 2004年4月10日
この度 婦女の心胃痛の証治で得る所があったので報告します。

例1:関某,50代の婦人,
突然心口が攻痛して我慢が出来ないほどの痛みに苦しみ入院して透視してもらったが、診断が確定しなかった。
査:患者の面容は憔悴し,心情は抑鬱されて苦悶している,脈は沈弦。
触診では腹肌が緊張し,圧痛が明顕である,特に臍上から剣突下までが著しく,腫物には触れない。
心胃気痛証と考えられる。
張氏は曽つて活絡効霊丹は“凉、熱、気鬱、血鬱の原因を問わず” 心腹諸痛に皆効くといっている。
そこで活絡効霊丹合“丹参飲子” とした。

処方:丹参30 g ,当帰1 5 g,乳香・没薬・香附6 g,砂仁5 g ,檀香3g(后下) ,山奈3g,莱[艸/服]子・甘草1 2 g

1剤で痛みが減り,2剤で痛みが止り,3剤で痊愈した。

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活絡効霊丹の応用1

活絡効霊丹の応用例  作者:黄存垣,楊君柳, 江西中医薬 : 2003年3月25日

活絡効霊丹は張錫鈍(1860-1933)の《医学衷中参西録》中に出てくる処方で、気血凝滞による心腹疼痛、腿疼臂疼、跌打淤腫、内外瘡瘍及び[病<暇-日-丙]積聚等を治すものです。

活絡効霊丹 当帰・丹参・乳香・没薬

1 坐骨神経痛
肖某某 ,男 ,1993年 4月初診。
左側の臀部が疼痛して 1个余月になる ,痛い時は左足の小腿に牽引し ,足跟も亦痛む ,行歩すれば加劇する。
飲食、二便は正常 ,脈弦 ,舌質はやや暗紅。

処方 :桑寄生20 ,全当帰・川牛膝・丹参15 ,川断12 ,生乳香・生没薬・陳皮・木瓜・大伸筋・五加皮10

上方 4剤 を服すと,症状は減軽した ,再服して 10剤に至ると ,症状は大いに減った。
原方に金毛狗脊 2 0g を加えて,再服すること 10剤 ,これで痊愈した。

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開張邪路 (邪の出口を開く)

 有毒植物で山野・路傍などに自生する仙人草という蔓草があります。この葉をもんで汁を手首につけると翌日、大きな水ぶくれが出来ます。針で突いて中の水を抜き傷跡の癒えるのを待つとリュウマチの腫脹などに良いという治療法があります。
 また彼岸花の鱗茎とヒマシ(唐胡麻・とうごま)を一緒にすり下ろして、足の裏に塗布して肝硬変の腹水やネフローゼの水腫を治すという治療法があります。
このような民間療法にはどんな意味があるのだろうか? と常々思っていたところでしたが、その答えになるかも知れない開張邪路という概念があることを知りました。

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開張邪路 (邪の出口を開く)

「実邪を出口から放出して治す」というのは中医治病の経験則の宝である。
例えば発汗、涌吐、瀉下、点刺放血などの諸法は《内経・陰陽応象大論》(1)や 《霊枢・厥病》(2)の中で述べられている。

(1) 厥頭痛、頭脈痛、心悲善泣, 視頭動脈反盛者, 刺尽去血⋯⋯ ," 血実者決之"
(2) 中暑昏厥刺委中穴放血

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乾癬2

《三部六病》方治銀屑病

患者男,40歳,掻癢性皮膚病に患り一年余,反復して発作がある,某医院の皮膚科の診断では銀屑病だった。
中西薬で調治したが愈らなかった,
検査すると: 皮疹は腹、背、四肢及び頭面に広がり,基底部は微紅,舌は淡紅,苔は膩で微黄,脈は?,両尺部が特に明らかである,此れはすなわち胃腸道の寒熱積滞が体表に発したものである。
治法は腸胃を通調し、表裏を和解するに宜しい。

調腸湯合去風利湿湯加減:

赤芍5、党参・川楝子・苦参・土茯苓・大棗4、紫蘇子・陳皮・浮萍・蒼耳子3、柴胡・黄岑・川椒・川軍・小茴香2、甘草1.5g,五剤,水煎服

二診: 掻癢は大いに減り,皮疹も次第に退いたので,方を変えずに,再服すること十剤。

三診: 皮疹は尽く退き,症状は消去した。
 引き続き牛乳、魚蝦類を食べないように指示して、一年後に訪ねたら,再発していなかった。

         来源:1985年8月25日《探春学報》 作者:石西康

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乾癬1

乾癬 (牛皮癬 銀屑病)

     李某,女,14歳。
一年前から頭面・四肢・腹背に牛皮癬を病み、一年間 専門病院の治療を受けたが効果がなかった。
余が診た時は頭頂・面部・腹背及び四肢の大部分に均しく紅色丘疹が出て、合わさって片状になっていた。
丘疹の表面には多層の白色鱗状痂屑が覆い、痂屑の脱落が多く、皮膚は干燥して厚く、まるで老樹皮のようで掻痒が耐え難く、掻くと出血して痛い。
腿脛の処は掻破のため感染して膿痂ができていた。
もう病歴は1年を超え、体には健全な皮膚が少なくなっている。
容貌が変わって人目を避けているので午後の下校後に診察に来てもらった。

余は西医が抗癌薬で牛皮癬を治療していることから啓示を受けて、この頑固で勢の盛んな症で、口苦・苔白・脈象双弦等に対してひそかに劉紹武先生(*)の解鬱攻堅湯を試用してみようと思った。

 王不留行10 紫蘇子・牡蛎・夏枯草6 柴胡3 黄岑・党参・甘草2 川椒0.2

    服薬20余剤で掻痒は明らかに軽減し、鱗状痂屑が脱落し始め、新鮮な皮膚が現れだした。
続服すること20剤で皮膚は元の様に恢復した。
十余年後に訪ねてみて病気が再発していなかった。

 按: 牛皮癬は頑疾の一つで、第二癌症の称がある。
当今は祖伝の秘方で牛皮癬を治すという広告が世に溢れている。
余が子供の時の朋友 某も双腿を牛皮癬に患っていた。
便りによれば某旅店の"神医"と呼ばれる人に求診して、千元近くを出して薬十小包を購入した。
そして服后七日で丘疹が消失し、痂屑が脱落して大いに喜び、まさに神医だと叫んだ。
然し、服薬を停めると再び紅色の丘疹が頭に白い帽子を被ったようになり、四肢や腹背に密布し、治療前よりもひどくなったそうだ。

聞く所では小包内は黄柏とステロイド剤だったそうだ。

(*)《三部六病》論 を発表した人

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子宮筋腫

子宮肌瘤
徐××,女,37歳,售貨員。一九八四年十二月十日就診。

患者は少腹部 (左右いずれかの下腹部) が隠痛墜脹すること半年,もともと胸悶不舒,心煩易怒,腰膝酸困,疲乏无力,小便不暢,白帯多,質清稀,有臭味,月経先后不定,量多色淡等の症があった。
現在は少腹が冷え,按ずると稍痛む,下腹部は深く按ずると,包塊が触れ,推しても動かず,境界が比較的にはっきりしている。
形体は肥胖で,面色は良くない,舌質は暗紅,苔は薄白。脈は弦緩滑である。

婦科内診: 子宮に軽度の糜爛あり,宮体は8×7cm。子宮后壁の筋腫である。

本病は脈症から分析すると,脾腎気虚,寒凝鬱阻衝任の証である。

攻堅湯加味 : 
王不留30、夏枯草・生牡蛎・蘇子・生山薬10、海票蛸7、車前子6、茜草・銀花3、絲瓜絡・柴胡2、官桂1g,水煎服,毎日一剤。

服薬10剤で,少腹部の包塊は軟かくなり,小便は通暢し,胸中は舒暢となり,元気が出た,しかしまだ腰はだるく,経量は多い。

上方から絲瓜絡、銀花を去り、生竜骨7,川断5gを加えて,水煎服,隔日一剤とした。

服薬20剤で経期は正常となり,腰困(腰のだるさ)は好転し,精神(元気さ)服食とも均しく良好になり,舌質は紅,脈は弦細となった。

これは気血が漸く充ち,脾運が好転し,痰湿寒凝が漸く消えていった兆候である。

上方から竜骨を去り熟地を加えて継服すること14剤で,上述の症状は全部消失した,
エコーで再検査: 子宮像は正常だった。
更に守方6剤で仕上げとした。

按: 抑鬱寡歓の人は,肝経が滞りやすく,滞ると気機が暢通し難くなる,
上では胸悶不舒となり,中では乗脾聚痰となり,下では痰気が交阻して,久積すれば筋腫となる,
この人は体胖で,舌質は暗紅,脈は弦滑,少腹に包塊圧痛があり,痰気鬱結の候と符合していた。
腰がだるく帯下が多く,月経が乱れて色は淡い,これは確かに脾腎気虚の証である。
少腹が冷えて隠痛するのは,寒凝衝任の兆候である。

経に云わく: 

"任脈が病むと……女子は帯下[病<暇-日-丙]聚 (筋腫) となる"。
陳自明はまた指摘している: "婦人の症[病<暇-日-丙] (筋腫) は,内では飲食不節,外では寒温不調のため,気血が労傷し,臓腑は虚弱となり,風冷が腹に入って血と結んで生ずる。"

故に攻堅軟堅湯の散法で,去淤消腫し、
また清帯湯 (張錫純方) で補脾益腎,開鬱化滞をし,車前子、絲瓜絡、銀花を加えて小便を通利し,官桂を配して衝任脈を温調して,寒凝を解き,柴胡を佐として疏肝解鬱し,気機を利する。

上薬を合用すれば補しても滞らず,疏しても消耗せず,堅きを軟らげて正気を損わない功効がある。

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前額痛

案七:脾虚肝旺証 臨証実験録

     董某,男,28歳,泡池村人。
ここ連続三年、毎年春になると未明に前額が痛み始め、午前9~10時ごろには疼痛がもっとも重くなり、午后に漸く緩む。
毎日決まったように始まり、夏になってやっと痛まなくなる。
今年は春風が未だ吹かないのに、もう疼痛が始まり、十余日になる。
痛む時は両目が赤くなり、前額は熱くなる。すぐに鎮痛剤を飲まないことには我慢できない程である。
針も数回刺してもらったが効果はなかった。
舌は淡紅色、舌苔は薄白。
脈は沈細の中に弦象がある。
食欲と二便は正常で他に異常はない。

脈症を参考にして、中気虚弱・肝火上炎の証である。
頭は精明の府であり、諸陽の会うところである。
中気が虚弱なら気血が脳を養わないので頭痛となる。

陽明と太陰は表裏で互いに連なっている。
前額は陽明経の循るところだから痛みは外に属す。
午前は陽に属し、気が盛んになる筈なのに陽気が不足するので午前中から痛くなる。
また午前は太陰病が劇しくなる時でもある。
目赤口干、脈象帯弦、春季の寅卯(3時~7時)に痛むのは「春升木旺、横逆乗上」の象だからである。

治法は補中益気・平肝緩急に宜しく、木気が条達すれば,土気は自ら舒びる。

補中益気湯加味: 
 党参・白朮・黄耆・夏枯草5 当帰・陳皮・白止3 白芍8 升麻・柴胡・甘草2  三剤

二診: 疼痛は止まった。原方を続服すること三剤。
明年は3月の啓蟄の后から服薬するように申し渡して再発を未然に防ぐことにした。

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眉稜骨痛 (前額部の痛み)

脾虚湿熱証 『臨証実験録』より

聶某,男,33歳,農民。
六日前から右側の眉稜骨が痛む。それも午前8~12時がもっとも激しい。
痛みが劇しい時は手で眉額部を押さえて我慢するが、座っても臥しても痛みは変わらない。
午后になると痛みは次第に緩減する。毎日きちんと決まったように繰り返す。
また倦怠乏力のため一寸動くとすぐ汗が出る。
食欲も二便も普通にあるが、口干と口苦があり、水を飲みたくはない。
眉額部と太陽穴・印堂穴の辺りは赤くもないし腫れてもいない。
舌は淡紅色で舌苔は黄膩。脈象は沈細。眉骨を触按しても圧痛感はない。

脈症分析: 眉稜骨は足陽明胃経の循るところ、陽明湿熱の気が上蒸するので熱痛するのであろう。
然し陽明が旺するのは申酉の刻(15時~17時)である。
どうして巳の刻(9時~11時)に痛むのか?
倦怠と汗出および脈象の沈細を考えると中気が元来虚しているのが分る。
午前は陽に属し、気が盛んになる筈なのに、陽気が虚弱なため午前に痛むのであろう。
《張氏医通》に謂く、眉稜骨痛は虚実に分けられる。 “虚の痛みは天明時に発し、実の痛みは昼は静かで夜に劇しい。”

是れよりして本案は中気不足・湿濁上逆とみなされる。
治法は補中健脾・清熱利湿が良い。
東垣の制した調中益気湯が正に本証に適する。

黄耆・白朮5 茯苓・半夏・茵陳蒿・白止・竜胆草3 柴胡・升麻2  三剤

二診: いくらか疼痛が消えたので原方を更に三剤飲ませた。

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貨幣状湿疹 (続報)

昨年の6/10に端を発した貨幣状湿疹は10/16からの劇的な改善を境にして、今年の1/13にはほぼ9割方良くなった。しかしもう少し夜間の掻痒があるので毎日ではなくとも継続服用が必要だった。

そうこうしている内に一月末から風邪を引き、鼻炎をこじらせたりしながら房芝萱2診方はあまり飲めなかった。すると3/8にはまたぞろ頬のシミが膨らんできた。再発か!

それからは一進一退で貨幣状湿疹は改善しなかった。
4月末での状態は、房芝萱2診方を跳び跳びながらも継続していたからか、スネには僅かに乾性赤疹が残っていた。これが何とも難治性でいつまでも消えていかない。
日にちが経つと赤い部分が次第に輪が広がるように範囲を広げてきて、中が窪んだ火山の外輪山のようになってきた。まさに輪状というか貨幣状というか、乾燥性の湿疹に変わった。完全に慢性期である。5/12【写真1】P5120041_2

湿疹は急性期と亜急性期と慢性期では対応処方を変えなければならないのが原則である。そこで「湿疹の中医治療」で書いた血燥の治法、四物消風散加減を試してみた。

5/16から10日間続けたが貨幣状湿疹はビクリともしなかった。

もっと強力で攻撃的な処方が必要だが、こう慢性化しては一方で滋補もしなければならないだろう。そこで選んだのが『中医臨床』(39)で見つけた「滋陰熄風湯」である。

(干地黄・熟地・生何首烏・亀板・黄柏・知母・当帰・玄参・白蘚皮・地膚子・疾藜子3)36

5/26から飲み始めて今日で丁度20日目になる。遅々としてではあるがはっきりと改善している。6/14【写真2】 P6140032_4

このままあと一ヶ月間ほどは飲み続けなければならないだろうが、一応 中間報告をしておく。

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気虚感冒と補法

感冒などの外邪を受けた時、初期には去邪法をとるのが定法です。
これはまだ身体の免疫力とか抵抗力が十分にあるので邪を排除する攻撃 (瀉法) に耐えられるからです。すなわち攻撃こそ最大の防御です。
しかし虚弱な人や老齢者で抵抗力が衰えた人では、初期には去邪法をとれても直ぐにそれ以上は続けられなくなる場合があります。
それを無理に (銀翹散や葛根湯ばかりをずーっと飲み続けたりして) 去邪し続けると、無効であるばかりか自分自身の抵抗力も加速度的に失われていき、果ては医源病にもなりかねません。

去邪法がとれなくなった時は邪を排除する攻撃法ではなく、抵抗力を増強する補法をとります。
しかし補法は早すぎると邪を留める危険があるから、漢方では早すぎる事を固く禁止しています。

ではいつから補法をとればいいのか?
それは虚の症状が出始めたら直ぐにです。そのことで最近自家経験をしましたので実例報告します。

今年もとうとう風邪を引いてしまいました。
例年のごとく症状は咽痛に始まったので定法の銀翹散を服用したら翌日は咽痛がなくなった。
しかし次いで鼻閉が始まり頭が重くてならなかった。
もう少しと銀翹散を飲み続けていたら今度は鼻水に変わり、しかもそれが流れるような激しさである。
変だな? 邪は今何処にいるのだろうか? 鼻閉までは確かに風邪の邪があった。
しかし流涕に変わった今でも邪が残っているのだろうか?
よく観察してみると口の中が“しょんない”。唾液に粘りがなくサラサラしている。これは明らかに虚の症状である。
過去においてはいつもこの症状に変わってから治り切るまでが長かった。
ティッシュが追いつかないほどにひっきりなしに鼻をかんでいた。

そこで今年は「補法は早すぎると邪を留める危険がある」というジンクスに挑戦して、早々と二日目から補法をとることにした。
用いた処方は補中益気湯に防風・蝉衣・五味子・烏梅を加味した。
これが奏功して一晩寝たら真に快調になり、続服してどんどん治っていった。

まことに得るものがあった。症状が虚に変じた後も去邪法をとっていたら長く苦しまなければならなかっただろう。変幻自在に瀉から補へと転じたのが良かった。

そこで思ったのだが、老人や虚弱者にはこのような風邪の例が多いのではないかと。
またいま話題の花粉症にも補法をとらなければならない場合が多いのではないかと。
補法は免疫力や抵抗力に関わる方法であるから抗アレルギー剤を外部から補うよりもよっぽど自然にかなった方法ではないか。
喘息もしかり、アトピーもしかり、虚の症状には補法をと強く訴えたい。

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乳腺の腫れ

2006/08/14 やや肥満型の37歳の女性。2ヵ月前から乳腺が赤く腫れて濁った汁が出る。場所を移動して10日ごとに新しいのが出来る。乳腺膿瘍のようだが見るわけにもいかないので正確には分からない。もちろん医師にはかかっており、はかばかしくないので漢方を試そうと思い立ったもの。

乳房紅腫の症状でも哺乳期ではないので「乳積」によるものではない。そこで膿ではなく汁が出ると云うし、「気鬱」によるものではないかと考えた。
乳房は肝胃の経絡が通り、ともに多気多血の経である。だから湿熱が胃絡に蘊結したり、肝気が鬱滞したりすると直ぐに腫脹疼痛を起こす。
哺乳期なら瓜楼牛蒡湯<醫宗金鑒>が有名であるが、そうではないので肝胆湿熱と見なして、疽や癰に用いる柴胡清肝飲を選んだ。

 (柴胡・地黄・赤芍・牛蒡子・当帰・連翹・川弓・黄岑・山梔子・花粉・防風3 甘草2)35

2ヵ月間まじめに飲んだ結果すっかり良くなり、新しいものが出なくなったそうだ。念のためといって先日もまた1ヵ月分を持っていかれた。

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アフター性口内炎

2006/08/01 46歳、中肉の男性。20数年間も続いているアフター性口内炎。
妻が語るには夫は結婚してからずーっと年がら年中アフターが出っ放しだとのこと。本人はもう出るのが当たり前とばかり諦めきっていた。ある日、妻女が誤って自分の舌を噛んで余りの痛さに、ふと夫は毎日このような痛さを我慢しているのだろうかと気がつき、なにか治療法がないものかと代理で当店を訪ねてきたのでした。本人が来ないとダメだと云うと、すぐに再び夫を連れて現れた。

喋ると舌が触れて痛いので口数が少ない。見ると内唇には今も潰瘍があり、白苔は厚く歯痕もある。冬などの寒い時期に悪化しやすく、粘っこい唾液が出て口臭が強い。また手足には汗をべったりとかき、あくびがよく出る。検診で腸にポリープが11個もあると分かった。便通は正常。

『浙江中医薬雑誌』(1980;11:12  合刊 55 )に口腔粘膜潰瘍の治験例の報告があり、舌が心・脾の病変を現すことからアフターを「心火と脾湿の搏結」と弁証しています。使っている処方は半夏瀉心湯です。
 (半夏・大棗4 干姜・黄連2 党参・甘草3)18

この患者さんも白苔の厚い舌証から「心脾湿熱」の証と判断して半夏瀉心湯を使ってもらいました。
横隔膜を境にして上熱下寒という分離が起こっているのを漢方では“心下痞”と診断します。風呂をわかす時お湯をかき混ぜないと上熱下寒の状態になります。今あなたはこれと同じ状態だから上ではアフター性口内炎が出て、下ではポリープが出来るのだと云うと納得したようです。

10日分づつ試してもらうことにしましたところ、きちんと10日毎に来店されます。
20日分を飲み終えると大分楽になり、アフターが出来ても広がらないようになった。今は舌に出ている。しかし苔はまだまっ白い。この舌苔が減らなければダメですね。
70日を過ぎて今もアフターは出ているが痛くない。それよりもほかの変化が起こり面食らっているという。
今までは手足が冷たくて汗ばんでいたが今は手足が熱くなり、乾いている。手足を布団から出せなかったのが出せるようになった。これは一体いい事なのか悪い事なのか不安感もあるという。そりゃーいいに決まっていますよ、と私は密かに得意でなりません。今までは寒くなるとよく出たので、これからの季節がどうなるか本人はもう少し不安です。

更に90日が過ぎると季節は11月に入り肌寒くなりました。今日も煎じ薬を取りに来られて、「いま出ていません」と嬉しそうに云っていました。

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貨幣状湿疹との戦い

今年の6/10のこと、急に右頬の直径1㎝程のシミが腫れて痒くなった。見ると少し盛り上がってブツブツしている。
暫くして更にあちこち幾つかの小さいシミも脹らみを見せてきた。
また頭にあった直径5mm程のシミはみるみる盛り上がるや黒い疣に変わり、痒みもある。
何が原因だか分からず、取り敢えず「風湿熱」と考えて消風散エキスで様子を見ることに。
翌日からは煎じ薬で張磊先生の消風散に変更する。

 (益母草8 荊芥・苦参・白鮮皮・地肌子・蛇床子・蒼朮・地黄・土茯苓3 蝉蛻1)36

痒みとブツブツが引いていくような手応えを感じたのと、ほかに思い当たる処方も無かったので結局2ヶ月間もこれを服用することになった。
しかし症状は一進一退で軽快しなかった上に、8/24には手の甲に水泡性の湿疹さへが現れてきた。
これは盛夏ゆえに「湿熱」が強くなったかと急遽、卑解滲湿湯に変方することにした。

 (黄柏・卑解・意苡仁・茯苓・牡丹皮・沢瀉・滑石・蒼朮3 木通・苦参・甘草2)33

これをまた延々1ヶ月半も続けなければならなかった。
水泡性の湿疹は処を変えて出ては消え、出ては消えを繰り返し、夏も終わり、10月になってしまった。
戦禍は体のあちこちに残り、もっとも大きいのは右足首の5cm程の痂皮で、これがなかなか治らない。後で分かるのだが、これが貨幣状湿疹という難治性のものだったのです。
元々の右頬のシミの盛り上がりと痒みは卑解滲湿湯のお陰か何とか小康を保っており、頭に出来た黒い疣は紫雲膏を着けていたら何時しかポロポロと欠けて、すっかり小さくなっている。

余りにもシミと痂皮の治りが遅いので10/10には肝胆湿熱を取るべく[竜胆瀉肝湯+二妙散(黄柏・蒼朮)]を一週間分試してみた。
しかし何の変化も起こらない。
ほとほと万策尽きて考えあぐねていたところ、ふと目に止まったのが房芝萱先生の「四肢作痒三年来、丘疹及水泡、双足内踝部最重」という治験例でした。

初診: (意苡仁4 黄耆・六一散<滑石・甘草>3 蒼朮・茯苓・黄柏・生地・苦参2.5 防已・地膚子2 黄岑・防風・猪苓・車前子・当帰・赤芍1.5 黄連1)36.5

結痂して
2診: (茵陳蒿5 意苡仁4 苦参3 生地・地膚子・茯苓2.5 木瓜・蒼朮・黄柏・防風2 牛膝・白止・猪苓・車前子・山梔子1.5)35

これだ! ピーンと閃くものがあって、2診の処方を使ってみました。
これが10/16の午後からでしたが、何とその晩から心なしか手応えを感じました。
やはり思った通り、翌日からめきめき改善に向かい、三日で痂皮は消え、跡には何の分泌液も出ていません。
頬のシミの盛り上がりと痒みも平たくなり始めています。
頭に出来ていた黒い疣の痕跡もすっかり無くなりました。
昨日10/19には少し沁みるけれども風呂の湯にも浸かることが出来ました。

しかし貨幣状湿疹というのは実にしつこいものです。そのまますんなりとは行かないもので、行きつ戻りつ、2診の処方を更に2週間続けてようやく全ての部位が枯れ果ててきました。

なおアトピー性皮膚炎などでもそうですが、慢性湿疹では特に気をつけなければならないのはスキンケアです。勢いのある発疹期では分泌液もあるので上から覆うのは感心しませんが、痂皮が形成されてからは分泌液は減り、今度は乾燥し始めます。この時期に服薬のみでスキンケアを怠ると治療がぐんと遅くなります。即ち保湿のことです。皮膚の乾燥を防ぐために上から覆いをかけなければなりません。
漢方では「青黛散油膏」という軟膏を塗ってから絆創膏などで覆います。

青黛散 (青黛・黄柏2 石膏・滑石4) を25%に白色ワセリン75%で製した軟膏

貨幣状湿疹の漢方治験例は文献でもほとんど見かけません。一例報告としても意味があるのではないかと思います。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

さて、どうして2診の処方が“ドンピシャリ”と効いたのか?
今までの処方とどこが違うのか?
苦参・黄柏・竜胆などの強力な苦寒性の清熱利湿薬は双方共通です。
蒼朮・意苡仁に始まる利湿・燥湿薬も共通です。
とすれば大きく異なるのは「茵陳蒿」の存在です。

茵陳蒿は肝、胆、脾、胃の各経絡に入り清熱利湿するとともに、また膀胱経にも入り発汗作用があります。
それは軽くて精油成分に富む荊芥穂に発汗作用がある事と、茵陳蒿も花穂で精油に富む事の類似から頷けます。

卑解滲湿湯にしても竜胆瀉肝湯にしても重い性質の薬草ばかり使ってきましたが、軽質で発汗作用のある薬味一味を加えるだけでガラリと薬効が変わったのではないかと思われます。
湿熱は粘膩で取り去りにくいものと相場が決まっていますが、湿の中にも軽湿と重湿があって、重湿ばかりを下からの尿利で攻め立てていたので痂皮の治りが遅かったのではないかと反省させられます。
これに発汗という上への発散を取り入れる事で、さすがの難治性湿疹も動かざるを得なかったのではないかというのが今回の教訓でした。

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鬱病と滋水清肝飲

若い男女のカップルが相談に来られました。
女性は痩せ型で、見るなり鬱病とわかる程の悲愴な表情です。
男性が代わりに病状を説明し、女性が辛うじてうなづくだけです。
何が原因か分からないながら2年ほど前からの鬱病で、泣いてばかり、自殺願望の毎日を送っている由。
その他に目を瞑っていても頭の中がまわる、のぼせる、冷える、便秘、肩こり、腰痛、口渇、ゲップなどの症状もあります。

自殺願望、冷える、肩こり、ゲップなどは明らかに「肝鬱気滞」による鬱症状と考えられます。
しかし、頭の中がまわる、のぼせる、便秘、腰痛、口渇などは肝鬱と一致しません。
後半の症状は陰虚による「虚火」と判断するのが妥当でしょう。
だから常法の「疏肝解鬱法」を取るわけにはいきません。
疏肝しても効果の出ない“疏肝不應”の症例に相当します。
すなわち肝鬱が長引いて熱化が起こり、その熱が陰血を傷つけてしまい、陰血が虧損すると肝気はますます滞り、肝火がますます熾盛となった場合です。
熾盛となった心火や肝火は甚だしく「心神」の安寧を脅かしていることでしょう。

もしこれを“疏肝”すれば、するほど状態は悪化して、「頭暈耳鳴,口燥咽干,心煩多梦或不寐,大便燥結,小便淋漓,口苦舌紅,脉弦細而数」など陰虚火旺の症状が現れ、悪循環となるは明らかです。 (陰虚陽浮 陰虧則虚陽上浮)
そこで必要となるのが水中疏木法滋水清肝飲です。

この奥さんには滋水清肝飲を2週間分づつ持っていってもらいました。
(熟地黄8 山茱萸・山葯・酸棗仁4 牡丹皮・沢瀉・茯苓・当帰・白芍・柴胡・山梔子3 大黄0.5)

すると飲んで2、3日でもう薬が効いているのが分かるという本人の反応です。
好調ですぐに睡眠薬と抗不安薬が一錠ずつ減り、夜間の口渇も少し減りました。
冷え、便秘も共に良くなり、8週間のちには血色の良くなった奥さん自らカラカラと笑いながら病状を説明するほどになり、自分でも信じられないくらいの好結果です。

滋水清肝飲はこのほかにも、更年期綜合證・経前乳脹・鼻衄・歯衄・不眠症・慢性肝炎・目の乾渋異物感・逆流性食道炎(ムネヤケ)などと幅広い用途があると考えています。

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粘っこい痰が出る

 切れやすい透明な痰を“湿痰”といいます。おもに脾胃の気虚が原因なので「脾虚生痰」と称し、六君子湯や二陳湯や小半夏加茯苓湯などが該当します。
また粘り気がなくて唾や水のような痰涎を“寒痰”といい、肺が寒気にさらされて「外寒が内飲を動かした」と称し、小青竜湯が該当します。よく花粉症にこれを使う人がいますが、水涕と水のような痰涎とを混同しています。花粉症やアレルギー性鼻炎に小青竜湯を使うのは間違いです。

痰にはそのほかに風痰・熱痰・燥痰などに分類されるものがあります。
“湿痰”に次いで見受けられるのは、粘り気が強い“熱痰”です。そしてこれに対する処方が余り無いのが悩みです。
さいわい『中医臨床大全』(北京科学技術出版社1993年) には熱痰に対して次のような処方が紹介されています。

1. 軽症 : 清気化痰丸(胆星・瓜楼・陳皮・半夏・茯苓・甘草・黄岑・杏仁・枳実)
2. 中症 : 青黛丸(貝母・瓜楼瓢・黄岑・青黛・香附・橘紅)
3. 重症 : 化痰丸(海粉・瓜楼・黄岑・連翹・青黛・天冬・香附・陳皮・桔梗・芒硝)

最近、この中の清気化痰丸を使って良い結果を得た経験があります。
 50代の痩せ方の女性、朝方に切れにくい黄色の痰が出る。舌には白苔、灰色。夜寝る時に咽の痰が気になり寝にくい。また痰のため息がしにくく、勢いよく鼻がかめなかったり、思い切って息を吸い込めなかったりする。
はじめは貝母瓜呂散(貝母・瓜呂仁・瓜呂根・茯苓・陳皮・桔梗)を使ったけれども一向に良くならない。そこで今度は清気化痰丸を使ってみたら大変良く効いて3日で黄色い痰が減り、10日で眠れるようになった。更に30日間飲んですっかり体調を改善した。

ぜひ他の方にも清気化痰丸を試してもらいたい。胆星とは牛の胆汁に浸して天南星の持つ熱性を寒性にしたもの、瓜楼には瓜呂仁を使いました。

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突然の麻痺性斜視による複視

60歳女性、肥満、赤ら顏。今年3月にインフルエンザにかかり、悪寒のち発熱39℃、その後激しい頭痛、嘔吐に見舞われ救急車にて病院に運ばれた。入院2日後に物が二重三重に見え、右目が寄って斜視状態になった。
退院後も複視と斜視は治っていない。4月の末になってようやく漢方で治らないものかと片方に眼帯をかけて相談に見えた。本人は脳梗塞による神経麻痺だと思っている。まぶたが腫れており、舌苔は普通。

これはインフルエンザという風熱の邪気は去ったけれども、その時の後遺症として顔面の絡脉が空虚になり、そこにまだ“風”邪が残っているものと考えられる。すなわち「風邪入絡」による眼歪斜の症状である。
中華人民共和国国家標準『中医病証分類とコード』から探すと“絡脉空虚,風邪入中証 ZZJ031”に該当すると思われる。

処方: 正容湯加味・・・(インターネットより)
(羌活・白附子・防風・秦韭・白僵蚕・半夏・木瓜・茯苓・黄苓・伸筋草・地竜・石斛・麦冬2 膽南星・甘草1)28g

患者さんは半信半疑で一日分を2日ほどかけて飲んでいたのだが、2ヵ月後の現在はすっかり元の正常な顏に戻っている。余りにも良く効いたので脳梗塞で同じ状態になっている実家の母親にも飲ませたいと話している。

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麻痺性斜視は漢方では「口眼歪斜」の一つであり、おもに顔面の陽明胃経が何かに阻まれて通りが悪くなって起こるもの(実証)と、脾胃の中気不足が原因で経絡の流れが衰えて起こるもの(虚証)に分かれる。
これは直接には“”という邪気が経絡を阻害した実証であるが風だけでは直ぐに飛び去ってしまうものなのに、しつこく居残っているのは“痰湿”の存在によるものである。
患者さんは肥満タイプで、内面に“痰湿”があると思われ、風と痰とが合わさって「風痰阻絡」という状態になったものであろう。

正容湯は牽正散や大秦韭湯と並んで“中風”に対する代表的な去風剤とみなされている。処方に含まれている「白附子」はまたの名を「禹白附」ともいい、天南星科の植物、独角蓮Typhonium giganteum Engl.の塊茎とされている。トリカブトの白河附子と間違いやすく、日本にはまだ入ってきておらず馴染みの薄い薬草である。

性味は辛苦・大温・有毒、胃・肝経に入り、上行しやすい。
作用は去風痰・鎮痙。
用途は中風口眼歪斜、顔面神經麻痺。
毒性は附子に較べて小さい。

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女陰白斑

外陰ジストロフィーという難しい病名の55歳、女性です。聞けば9年前に大腸癌切除、3年前に乳癌を切除、放射線治療、その後ホルモン剤を飲み始めてから排尿痛が起こり、今の病気を発見したそうで、局部が部分的に白斑化している。現症は排尿痛、頻尿、特に夜痒み、おりものは少ない、少し出血があった、舌の色はは淡い。
病院へ通院はしているが外陰症状に対してはいくら訴えても改善がなく、やむなく漢方にでもとなった次第。

複数の癌とその後の放射線治療などを経て身体にかかる負荷はいかばかりであったか、その大きさが稀に見る外陰ジストロフィーという病気を引き起こしたのでしょう。
漢方では病名にかかわらず、“陰痒”“陰腫”“陰瘡”“陰痛”“陰燥”などの症状から弁証することになります。幸い『中医症状鑑別診断学』には“女陰白斑”というのが出ています。それによれば肌膚から弾性と滋潤性が失われ、干燥しているのは「血虚」の結果である。また排尿痛と掻痒は「肝旺」のためである。対応としては養血活血・清肝去風の方法が求められる。

四物湯加味 (当帰・白芍・川弓・熟地・白疾藜・鶏血藤・川断・紫草・百部4)36

本人は本方を10日間服用したらもう効果が感じられたという。以来、一ヶ月分ずつの投薬を半年間受けた。今では殆ど不都合がないので間が遠くなり、忘れた頃に顏を出す。

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胆嚢の手術後の不快感

男 40歳。
3年前に腹腔鏡下胆嚢摘出手術を受けました。以前胆嚢があったところが、痛くはないのですが、重たく、中の内臓がつりそうな感じになり、とても不快で夜もぐっすり寝れません。
お酒を飲んだ次の日がとても苦しく、暫く飲まないと治るという感じでした。
手術当時はよくお酒を飲んでいました。最近はあまりにも調子が悪いので、間が遠くなっています。以前は、飲まない日が1週間くらいあれば症状が軽くなっていったのですが、今は全然軽くなりません。ここ2,3ヶ月、胆嚢があったところが以前よりも調子がひどく悪く、更に手と首筋がしびれてきます。
病院にも通ったのですが、他の臓器には異常がなく、手術の後はどうしてもこのような症状が残る人もあるそうだといっていました。

2004/01
肝鬱化火 (気鬱により肝が疎泄を失すると肝は気実から火を生ずる/肝火証) の証として四逆散加味を投与。
 (柴胡・枳実・白芍・酸棗仁・知母・川弓・茯苓4 甘草2)30g

2004/02 (約50日間飲んで)
以前より調子は良くなりましたが完全ではありません。以前が100悪いとしたら、今は30くらいです。なので、かなり良くなったと思います。が、必ず、お酒を飲んだ次の日は、80くらい悪く戻ります。2,3日たつと良くなり、又お酒を飲むと必ず悪くなります。

2005/01 (約一年間飲んで)
おかげさまで体の調子もこちらの漢方を服用してからかなり改善してきました。まだ、お酒を飲んだ次の日や疲労で疲れた日などちょっと調子が悪くなるときはあります。それでも以前よりは全然調子はいいです。
ところで、かなり調子が良くなってきたので、一日2回飲んでるところを一回に減らしても大丈夫でしょうか?
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悪い病患部を切除してしまったのに不快な症状がいつまでも無くならない、という事は患部以外にもまだ悪いところが残っていたのでしょう。
漢方では“経絡”という気の通路があって、肝経・胆経・三焦経などと他の経絡とも連なりながら縦横に全身に行き渡っています。だから胆嚢を取り去っても経絡は残っており、それと連なる臓器の影響も経絡を伝って現れてきます。
漢方治療は経絡治療でもあります。すなわち局部的な治療に止まらず、全身的な視野での治療になります。これを完成した全体という意味の「整体治療」という言葉でいう場合もあります。
「肝鬱」とは肝経の気の流れが停滞している状態です。肝経の気滞が長引くと、肝の疎泄(*)作用が不十分なため、熱化してきて肝熱または肝火に変化します。胸脇部位に不快な症状を感じたのはこのせいではなかったかと思われます。
そこで選ばれるのが疎肝解鬱剤です。もっとも代表的なのが「柴胡疎肝散」です。
 (柴胡・陳皮・枳穀・川弓・白芍・香附子・甘草)
『傷寒論』の処方では「四逆散」です。これに酸棗仁湯を合わせて「四逆散加味」としたのです。酸棗仁湯は不眠に用いられるので有名ですが、なぜ不眠に効くのかという事を説明した書物は余りありません。肝熱が続くと肝陰を消耗します。陰が虚すると陽が亢じてきます。虚した肝陰を補うのが酸棗仁湯です。それで陰陽のバランスが回復し、肝陽が鎮まり眠れるようになるのです。

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(*)漢方では「肝は疏泄を主どる」といいます。“疎泄”の疎とは疎通・通じること、泄とは発散・昇発のことで、併せてのびのびと広がる意味です。だから「肝は条達を喜び、抑鬱を嫌う」ものとして春の生長の気にたとえられます。肝の疎泄作用が順調だと消化酵素や胆汁の分泌、胃腸の蠕動運動などの代謝・輸送がスムーズにいきます。
“疎泄”とは溜め込まないことなので、この肝が疎泄もせずに鬱結すると、怒り易くなったり鬱になったり、情緒が不安定になります。また鬱病のほかにも便秘・肥満・ニキビ・肝臓病・月経不順・乳腺腫・・・など、溜め込んで流れが止まったために出る病気がい