優良処方データーベース

老人の不眠症

歳をとれば「腎精虧虚,腎陰不足」になるのが常です。
《素問・陰陽応象大論》に曰く“陰気が半分になれば,起居も衰えるよ”
足の少陰腎経と手の少陰心経は一方が“水”で一方が“火”である。
相互に制約しあい、相互に資生となる。
所謂“心腎が相い交われば,水火は正常な生理機能を保つ”

もし腎水が不足し,心火が亢盛となれば,心腎は不交となり,必ずや心煩・失眠となる。


肝腎陰虚, 陰虚陽亢の症状は次の様である。
頭暈、耳鳴し, 飢えても食べられず, 大便は干結し, おなら(矢気)が多くなり, 舌は乾き, 裂紋ができる。

黄連阿膠湯加味:
 黄連3g,黄岑6g,白芍12g,阿膠12g,党参12g,生甘草3g,山梔子10g,生鶏蛋1枚(冲)。


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またの処方、

黄連12g、黄岑10g、白芍15 g、生地20 g、生竜骨25g(先煎)、生牡蛎(先煎)25g、阿膠10g,鶏子黄2枚。

肝鬱化火を兼ねれば,+鈎藤、夏枯草;
潮熱盗汗を兼ねれば,+黄柏、地骨皮;
腰膝酸軟が甚しければ,+杜仲、菟絲子;
気虚を兼ねれば,+党参、黄耆;
血虚を兼ねれば,+熟地、鶏血藤。

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黄連阿膠湯加味の法

若し陰虚が重ければ,+生地、百合,陰液を滋養する;
若し肝血が不足すれば,+酸棗仁、当帰,養肝補血安神をする;
若し肝陽上亢が明らかなら,+生竜骨、生牡蛎,重鎮安神させる。

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陽気が昇る時間//陽気を上げる食物

升陽益胃湯《内外傷辨惑論》の方后注に、この湯薬の服用方法が書かれています。

「早飯午飯之間温服。」
即ち「早飯(朝食)と午飯(昼食)の間に温服せよ」となります。
五行説では、午前7~9時の間は辰巳の時で、肝の時令に当たり,陽升之時(陽気が昇る時間帯)です。
肝は時の助けを得て、この時に最も升発疏泄の功を発揮します。

升陽益胃湯は、胃中の陽気を上げるのが目的です。
だから服用するのは午前7~9時でなければならないのです。

時間には時間の力があるように、また食物にも食物の力があります。

【用法】毎服3銭。加生姜5片・大棗2枚。早飯後温服。

朝の薄味か美食(おいしい食物)は その薬力を助け、升浮の気を益し、胃気を滋す。
長く煎じて気を厚くした方が良く、朝食と昼食の間に用いて 穀物の気を借りて薬力を助けてこそ始めて胃中の陽は昇ることが出来る。

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勤めに行くのに朝 起きるのが辛いというタイプの人がいます。
朝から体がだるくて、顔を洗っている時も「だやい だやい」と連発しています。
冷え性で、よく胃腸をこわし、風邪を引きやすいのです。
熱も出ないのに、体がだるくなると「風邪をひいた」と決め込みます。
実際、本人には風邪以外には説明が付かないからです。
寒気がしてもそれは外感によるものではなく、肺の衛陽不足による寒気に過ぎません。
風邪ひきではなく、胃の陽気が足りないだけです。
升陽益胃湯をお勧めします。

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貝母瓜呂散  粘痰

貝母瓜呂散 《医学心悟》

□ 薬物組成: 貝母4.5 瓜呂3 花粉・茯苓・橘紅・桔梗2.5g

□ 功効: 潤肺清熱,理気化痰。

□ 主治: 燥痰咳嗽。咳嗽,咯痰不爽,渋而難出,咽喉干燥哽痛,苔白而干。

◇ 病症分析:
病人は陰虚で肺燥の状態である,虚火は津液を灼傷して痰を生ずる,肺が清粛作用を失っているので,咳嗽が出る。;
燥痰があると,肺の清粛作用は機能せず,肺気が上逆し,急に咳嗽が出る;
燥邪が津液を傷つけて,咯痰しようとしても、難渋して出ない、咽喉は干燥して痛み;
苔は白く干いているのも燥痰の佐証である。

[加減法]
1.若し風邪侵肺の時には +桑葉10 苦杏仁8 前胡8
2.肺絡が燥によって傷つけば,咳痰に血絲がつく,-橘紅,+北沙参20 麦冬12 仙鶴草12
3.咳がひどければ +苦杏仁8 桑白皮12 枇杷葉8

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医学心悟·卷三痰飲篇》:“おおよそは燥湿の二つに分けられ,は表裏の二つに別けられる。湿痰は滑らかで出し易く,多くは脾から生ずる。脾が実ならばこれを消すのに,二陳湯を用いる,重症なら滾痰丸を用いる。;脾が虚しておれば補うのに,六君子湯を用いる。燥痰が難渋して出にくければ,多くは肺より生ずるので,肺が燥いておれば潤おすのに,貝母瓜呂散を用いる。”
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私の経験: 咽に痰がからんで吐き出し難く、えーっえーっと声を出したり 咳払いをしたりする「痰持ち」の人がいます。
やっと出てきた痰は粘りが強くて濁っていたり、少し黄色味がかっています。
こういう人に応用すると痰の切れがよくなって、次第に痰の量も減って来るので喜ばれます。

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経行先后無定期

明末 清初の著名な医家、傅山の著《傅青主女科》の中に“経行先后無定期”への対応が書かれています。

婦人の月経が断続したり,前後にずれて無定期だったりすると,誰もが気血の虚だと云い,肝気の鬱結だとは云わない。経水は腎より出で,肝は腎の子であるから,肝が鬱すれば腎も亦鬱となる; 腎鬱になれば腎の通閉が狂い、月経は前后したり断続したりして一定しない。

用いられる処方は定経湯で、逍遥散から白朮・薄荷・生姜・甘草を去り,菟絲子・熟地・山薬・荊芥穂を加えている。すなわち疏肝と同時に,補腎填精を重用している。

【処方】 菟絲子・白芍・当帰10 大熟地・山薬・柴胡5 白茯苓3 炒黒荊芥2

主治: 肝腎の気鬱は,経が断続して来り,或いは前に或いは后になり,行りても不暢で,塊有り,色は正常だが,少腹は脹痛し,或いは乳房も脹痛して両脇に連なる。

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防風通聖散の応用(1) 発熱

【臨床応用】
 劉氏、董氏 [江西中医葯 2001(2):67] は非典(SARS)の流行期に56例の発熱病人を接診した。
解熱剤などの化学薬品は用いず、中薬の防風通聖散加減を採用した。

中薬の基礎方剤は防風通聖散とした。

: 防風15g, 荊芥15g, 連翹15g, 麻黄6g, 薄荷10g, 川弓15g, 当帰15g, 白芍 (炒) 15g, 白朮15g, 山梔10g, 大黄10g, 芒硝 (后下) 6g, 石膏15g, 黄岑10g, 桔梗15g, 滑石15g, 甘草6g

水煎して毎日l剤を二回に分けて服用する。

腹瀉を伴えば大黄、芒硝を去り, 畏寒が無ければ麻黄を去る。
38.5℃以下の者には石膏を去り, 頭痛が重ければ羌活15g を加えた。

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治療結果: 56例中38.5℃以下の者が17例で、上方から石膏を去った;
25例は畏寒が無く、発熱が38.5℃より低い者が14例 (56% )を占め、上方から麻黄を去った;
腹瀉が毎日3~4回を超えた7例には、上方から大黄、芒硝を去った;
12例の頭痛ある者には羌活15gを加えた。

中薬を服して3日以内に熱が退いた者は51例 (91.1%),
其れ以外の者は5日以内に熱が退いた;
服薬が最少のものは2日分、最多のものは5日分だった。

防風通聖散は処方全体で風寒湿熱の邪を外散させ、内では二便を通利し、邪を表裏から分消する。
正に呉儀洛の所説のように “上下で分消させ、表裏で交治する、しかも散瀉の中にも、なお温養の意がある。だから汗を出させても表を傷つけず、下しても裏を傷つけない。”
本方は臨床上の用は少く、大半は表裏倶実の感冒や、耳鳴耳聾及び[病<隱-丙]疹(蕁麻疹)の証に用い、僅かだが痺証の治療にも用いる。

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月経前のイライラ

月経前になるとイライラして怒りやすくなったり、ひどい時には狂ったようになったりして自制がきかなくなる事がある (経行情志異常) のは何故か?

月経前には肝経や衝脈の気血がもっとも旺盛になる。
普段から“肝鬱”気味の人には、この時期は大変危ない。
何故なら衝脈が実すると上逆 (上冲) する性質があり、肝鬱として溜まっていた肝気も一緒になって昇ってくるからです。
肝気が昇ると“肝火”となり、精神 (心神) を擾乱させると怒りや発狂になります。

また同時に肝鬱のため腹が脹ったり胸苦しくなったりの症状も伴います。

これには清肝解鬱・鎮静安神の治法が必要になります。
もっともよく選ばれるのは丹梔逍遥散 (加味逍遙散) 加減です。

※ ホームページのメール相談例「生理前の体調不良」の例が出ていますので参考にして下さい。

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蒼附導痰丸

蒼附導痰丸《葉氏女科》は現代では主に次の症状に使われている。

月経過少 早期閉経 月経後期 (月経稀発)

ほかに肥満や多汗症にも応用される。

【処方】 蒼朮・香附・枳殻・半夏・陳皮・茯苓・胆星・甘草・生姜

【功能主治】 肥満型で多痰,気虚,数月に一回しか月経がない;
       形肥痰盛者の経閉;
       肥人の気虚生痰の証は、白帯を下す者が多い。

なぜ肥満者に月経が阻滞するものが多いか?
肥満者は痰湿が多いとされる。
(痰湿とは病的な水分だけでなく脂肪も含まれている)
これらは元々は生理的な腎陰癸水と呼ばれる体液や性ホルモン等の重要物質だったのだが、卵巣・肝腎の間に停滞するうちに一種の有害物質に転換して卵子の生長発育を妨害するようになったのである。
これを中医学では「痰湿阻胞」という言葉で説明している。
また痰湿は二次的に血流の停滞すなわち淤阻をも引き起こすので更に排卵を阻碍する事になる。

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甘草瀉心湯

甘草瀉心湯とは半夏瀉心湯を基礎として炙甘草の用量を増やして調中補虚の意を図るものです。
即ち半夏瀉心湯証の重症で、脾胃虚・心下痞を強く訴える者に適用されるものです。
「心下痞」とは横隔膜を境にして上下の気が交流しないために起こります。
上半身と下半身の気が互いに交流しないとどんなことが起こるでしょうか?
上半身では不眠を、下半身では便秘を、みぞおちでは胃痛を起こします。

一、大便燥結

 岳美中医案:宋某某,男,5 9歳,1960年12月31日初診。
便燥となりて数月,空腹時には胃が脹痛し,酸水を吐く,手でさすると痛みが減り,おならが出ればスッキリする。
診察すると面部に虚浮があり,脈象は濡緩である。

そこで甘草瀉心湯加茯苓を投じた。
3剤の后、大便が沢山出て,おならも多くなった。

改めて防己黄耆湯加附子4・5gを投ずると、1剤后にはまた大便が通暢し,胃の脹痛も減り,面浮も消えた,ただもう少し胸焼けが残る。

再び甘草瀉心湯加茯苓を2剤服用させた。

3个月后に訪れてみると,諸症は皆消えていた。(《岳美中医案集》1978:45)

 按語:大便干燥の多くは腑実熱結によるか,津虧腸枯による。
然し本案の便燥では,口渇等の熱熾津傷の象が見られず,ただ胃痛、吐酸の証があったので,別の原因を示していた。
胃痛が手でさすると減るということは,気虚である;
痛んで脹り,おならが出るとスッキリするのは,気滞である。

脈象を綜合分析すると,脾虚にして気機阻滞の候である。
脾虚気塞すれば,腸道は不運となり,大便干燥となる。

故に治法は塞因塞用(*)こそが,気機を斡旋してくれる筈だ。

(*)甘草瀉心湯は下痢を止めてくれるから流れを塞ぐ処方だと思うだろうが、これを便秘に使うとは逆みたいだが原因を知れば納得できるだろう。

甘草瀉心湯は脾胃虚がひどくて痞するものに用意されている。
補に通を兼ね,寒熱が并投され,辛で開き苦で降せば,気機が暢達する,本証はまさにそれであった。

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以前、慢性便秘の記事で書いています。

私のお客で便秘にセンナや大黄の製剤を愛用している人の中で、ものすごく大量を飲まなければ通じが無いという方がおられます。
何年にもわたって服用し続けたため薬の刺激に慣れてしまって、だんだん量を増やしていった結果なのです。そういう方の便は決していいものではありません。軟便か形のないドロドロ便か水の中へ落ちると花のように散ってしまう水便です。このままでは将来の服用量がどんな事になるのか危ぶまれます。

こういう方に甘草瀉心湯が合わないだろうか、と思っています。

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怒りっぽいとは

『中医症状鑑別診断学(2版)』の“善怒”の項目には
「肝鬱気滞すれば善く怒る。それを解消するには“疏肝理気”を為さねばならず、達鬱湯か解怒平肝湯や柴胡疏肝散加減の類を用いる。」と書かれている。

ここまでは納得いくが、胡来元の辨証録選要によれば更に突っ込んだ説明がある。

「気にくわない事があると怒りで胸が塞がるのは、肝気が鬱逆するからだ。」と云うことは皆の知るところであるが、実は「肝血が足りない」からでもあるのだ。
肝経は怒りに因って病むものだが、若し肝血が少ないと、たいして怒るほどの事でなくとも大いに怒り、たいして悩むほどの事でなくともひどく悩む事になる。

何故なら肝血が少ないと「肝燥」になり、肝燥になると気逆になりやすいからだ。

同じ気悩症にも虚実はある。
しかし実とは「火実」の事で「血実」の事ではない。
また虚とは「血虚」の事で「火虚」の事ではない。
つまりどちらも血虚であって、違いは火勢の強弱だけである。

処方には解怒補肝湯を用いる。

 白芍(一両) 当帰(五銭) 沢瀉(一銭) 柴胡(一銭) 荊芥(一銭) 甘草(一銭)枳殻(三分) 丹皮(三銭) 天花粉(二銭)

 水煎服。一剤で気は平らかとなる。連服数剤すれば自然に怒らなくなる。

此の処方は全て平肝薬ばかりで、瀉肝の品ではない。
肝は補を得れば血を生ずる。
鬱は血を得れば散り易い。
肝気が鬱しなければ、悩怒は生じない。

このほか証候によっては加味帰芍湯、潤肝湯、萸芍熟地湯などを用いる場合もある。

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花粉症か? or ただの鼻風邪か?

表日本と裏日本では気候が大変異なります。
私の居る北陸地方は湿度が高く、雪も降ります。
スギ花粉が飛んでも左程拡散はしません。
だから鼻水が出てもそれが花粉症なのか、それともただの鼻風邪なのか判断に苦しみます。
私としては圧倒的に鼻風邪であろうと思っています。
何故なら殆ど目の痒みは訴えなく、鼻水とクシャミだけだからです。

それならば病院で行っているアレルギー検査をしてみれば分るじゃないかと仰るかも知れませんが、人の感覚判断を使わないで検査ばかりに頼りるのもどうかと思うのです。
老人のインフルエンザでは殆ど発熱しない場合があり、風邪と見まがうのですが、それでも検査してウィルスが見つかると即インフルエンザと断定しますね。
これなどはインフルエンザというよりも、やはり風邪と見なした方がより実態に近いのではないかと思うのです。

先だっても花粉症だといって薬を求めてくるお客さんがありました。
聞けばやはり鼻水とクシャミだけです。
花粉症という言葉には逆らわず、肺気虚寒とみて「温肺止流丹」を紹介しました。

(魚脳石・桔梗・訶子・人参・荊芥4 甘草・細辛2)24

(小青竜湯や麻黄附子細辛湯とは一味違う構成です)

5日後にまた来て曰く、「あの薬は高いけれど よく効くねー! ピタリと止まったわ。けれど、昨日ほんの10分ほど自転車に乗ってきたらまた鼻水が出てきたわ。」 「そうするとやっぱり花粉のせいかねー?」 どうも分りません。

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自分自身への設問です。
もしこれに目の痒みが加わっていたらどうするか?

目の痒みは漢方では風(ふう)証と考えます。
風(ふう)の邪が瞼(まぶた)や眦(まなじり)にあると目は奇癢を感じます。
これに対する代表的な処方は「駆風一字散」で、結膜炎などにも使います。

(制川烏10g,川弓10g,荊芥5g,羌活10g,防風5g,薄荷5g)

構成は温薬ばかりなので、もし慢性化して目の充血があれば一部に熱がありますから黄岑を加味します。

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食滞 (食積)

正月明けて、やはり過食の症状を訴えるお客があった。
体格のいい中年の男性。
食後グズグズと腹が痛み、便意を催して大便をするが硬い時が多く、出残る感じがして気持ち悪い。

この客はかねてから胃もたれがするといって、よく保和丸を持っていく事があった。
正月休みに体を動かすことも少なく、食べてばかりいたのではないかと思われる。舌の状態は別段変わった事もない。

食後の腹痛と大便が硬い、残便感(大便不爽)がある、という事から食事に関係がある事は想像できる。
漢方では飲食が積滞するのを「食積」といい、消化や運化を促進して体外へ排泄する消導法を採用する。

枳実導滞丸という処方があり、《内外傷辨惑論》には湿熱の物に傷(やぶ)れ,運化できず,痞満・悶乱するのを治す”とあります。

正月の料理と酒が本人の消化力を超えていたので「湿熱積滞」となって痞満脹痛・大便秘結・出ても出残る“裏急后重”になったのであろう。

そこで、『中医症状鑑別診断学』から枳実導滞丸加減を引用することにした。

(白朮・茯苓5 枳実・沢瀉4 神曲・連翹3 木香・砂仁2 大黄0.5)28.5g

一週間分を持って行き、また一週間後に来店して、大分良くなったが念の為もう一週間分欲しいという。やれやれ薬が合ったようで一安心。

日本では馴染みのない処方ですが、こういう気滞・食滞である急慢性の胃腸炎にはピッタリの処方ではないかと思います。

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歯茎の腫れ---陰火

私は歯がダメで、よく歯茎が腫れます。(牙齦腫痛)
赤くきんきんに腫れるのではなく、ぶよぶよと頼り無げに腫れ、内部熱というより浮熱とでも云うべき表層の熱で、歯痛を伴います。
一般には風邪の熱が歯に来て 歯茎が腫れる等と云われますが確かな事ではありません。
この症状に対して『中医症状鑑別診断学』に出てくる処方は、銀翹散・清胃散・知柏地黄丸・涼膈散・大黄黄連瀉心湯などとみな実火に対するものばかりです。
私のような症状の者にはちょっと手が出ません。

一体全体、歯茎が腫れたり また引いたり を繰り返すのはどういう原因からだろうか?
軽い感染症だというのは分ります。
しかしこれを抗生物質という寒薬で圧さえ込むのは正解だろうか?
そこで、これは陰火ではないだろうかと考えたのです。

用いたのは 補脾胃瀉陰火升陽湯《脾胃論》加減 という長たらしい名前の処方です。

構成: (意苡仁6 党参・黄耆4 蒼朮・石膏3 升麻・柴胡・羌活・黄岑2 黄連・甘草1)30

幸いすぐに効果があり、翌日からどんどん腫れが引いていくのが分りました。

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男性不妊(不育症)

女性の不妊症病の原因の一つに高プロラクチン血症(高泌乳素血症)があるが,男性の不育症にも同様の場合がある。

プロラクチンとは、乳腺の発達に関与して乳汁を分泌させたり、母性本能を促したりするホルモンです。これが過多状態になることを、高プロラクチン血症と呼びます。
高プロラクチン血症にかかると、性欲、勃起、射精などの機能が阻害されます。
高プロラクチン血症の原因のほとんどは、脳腫瘍であると言われています。
その他、軽度の高プロラクチン血症の原因の多くは薬物性です。
高プロラクチン血症を引き起こす薬物は主に向精神薬です。

たとえば男性患者の内訳は
陽痿(インポ)10例,不射精6例,少精死精症7例であった。

辨証分型は:
肝胆湿熱為主4例; 肝気鬱結型2例; 下焦湿熱型6例; 肝腎陰虚,腎精不足11例.

●治療方法
基本方は: 柴胡麦甘湯 (柴胡, 白芍, 甘草, 麦芽)

肝胆湿熱型は合竜胆瀉肝湯:
肝気鬱結型は合消遙散;
下焦湿熱型は合自卑解分清飲;
肝腎虧虚,腎精不足型は合補腎益精湯.

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左帰丸はどうして生まれたか?

左帰丸

組成: 熟地,山薬,山茱萸肉,枸杞,川牛膝,菟絲子,鹿膠,亀膠

易水内傷派 後期の代表的人物である張景岳(1563~1640)は陰陽太極理論にもとづいて処方を創作した。
有名な両儀膏・左帰丸・右帰丸などの処方である。
これらの処方が生まれるまでのいきさつを『三訂通俗傷寒論』より引用しよう。
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中国の明代に命門学説が生まれた。
そしてこの命門学説を強く提唱したのが、趙献可である。
趙献可は、理学の「万物には、それぞれ太極がある」、「人にはそれぞれ太極があり、物にもそれぞれ太極がある」(朱薫)という説を発展させ、命門は人体の太極であると主張した。
そして命門は体の中央である両腎の中間にあって、目には見えないものであり、その命門には真水と真火があり、水火は寄り添い頼り合っていると説明している。
「先天の水火は、もともと同じ臓に属している。火は水によってコントロールされ、水は火によって生まれる。したがって陰を治療しようとするなら、火を治療することによって水を治療すれば、精は尽きることがない。陽を治療しようとするなら、水を治療することによって火を治療すれば、陽光は翳ることがない」。

また彼は、命門は十二経の軸であると主張し、こう述べている。
「命門がなければ、腎は作強という性質を失い、技巧を生み出すことができなくなる。
膀胱は、三焦の気をめぐらせることができず、水道が通じなくなる。
また脾胃は水穀を腐熟することができず、五味がわからなくなる。
将軍である肝胆は決断できず、謀慮をめぐらすことができない。
大小腸は水穀を変化させることができず、二便は通じなくなる。
心は神明が暗くなり、何事にも対処できなくなる。
これが、主不明なれば十二官危うし、ということである」。
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下肢リンパ浮腫

乳癌や子宮癌の術後に起きるリンパ浮腫というのがあります。
これは癌の転移を防ぐために手術でリンパ節を除去(リンパ節郭清)したために起こります。
通常は片方の足が異常にむくみ、歩くのも困難になります。
足の指も足首も動かず、ふくらはぎはパンパンになります。
対策は脚を高くして寝たり、弾性ストッキングを着用したり、エアマッサージ器を使ったり、マッサージや理学療法を受けたりする事です。
しかし何をやっても全然良くならないという人が多いものです。

私も相談を受けて色々な処方を試してみましたがうまくいきませんでした。
この度ネット上で足[月行]消腫湯という処方にぶつかりました。

 (焦檳榔・牛膝4 茯苓7 生意苡仁10 木瓜・黄柏・防已・紫蘇梗・葉3 蒼朮・呉茱萸2 桔梗1.5)45.5

リンパ浮腫に影響を与えるには余程の事をしなければなりません。
この処方の特徴は檳榔子や牛膝・意苡仁という重質のもの、紫蘇葉という軽質のものを混ぜている事のほかに、寒性の黄柏と熱性の呉茱萸を併用している事です。
いわばハチャメチャなところがあります。

加減運用としては湿熱にも淤血にも対応があります。
だからリンパ浮腫のほかに下肢静脈瘤や血栓性静脈炎による浮腫にも応用できるのではないかと思います。
どなたか追試されたらどうかと思い紹介しました。

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鼻炎は胆経鬱熱が多い

鼻は肺の竅(穴)ではあるが慢性鼻竇炎ともなると肺からではなくて胆経から治さなくてはならない。
なぜなら鼻炎の初期は感冒外感から始まるが表熱が長引くとやがて裏へ入り胆経の鬱熱に変わるからだ。
胆経は上って鼻を犯し頭脳(鼻竇)を蒸灼するというのが中医の理論である。

鼻渊は又脳漏と称し,現代医学の急慢性鼻竇炎に相当する。
小儿の鼻渊の主要な発病機理は外感風寒、風熱,胆経鬱熱,肺気虚寒の三方面であるが,胆経鬱熱による鼻渊が臨床上もっとも多い。
胆木は最も風邪を悪み,外感風寒、風熱で表邪が解けず胆中に入ると鬱熱となる。

清代の医家で陳士鐸の著《辨証奇聞》には取渊湯というのがあり、辛夷、当帰、柴胡、貝母、梔子、玄参の六味薬からなる。
書に曰く:“胆は陽に属し,頭は亦陽なり。胆熱は久蔵されず,必ず熱は上走して頭に移る。脳は頭中に在りて,頭は蔵熱の処にあらず,小さな穴(経穴)から入り,大きな穴(竅)から出る,鼻がそれである。
六味薬の中,当帰の用法が最も巧みであり,原方では補益脳気の意味で大量に使う。張教授は小儿の鼻渊を治療する時,当帰を20gとする。
《聖済総録》に謂く:“脳は髄海なり,蔵するばかりで瀉するものはないのだが胆熱が脳に移ると,蔵した者も瀉される。
それで脳液が鼻から下滲して,劇症の時はあたかも水源から下るように濁涕が下りて已まない。”

それゆえ張教授は,鼻渊は脳液が尽く出てしまうから,脳気を大補しなければならないし,又脳液が直かに流れると,髄は精を作らないので,精が少なくなり,大腸に分布されず干燥する,故に当帰を大用するのは補脳添精の功と,滋潤腸燥の益を図っているのである。
全方は清宣と補瀉を并用し,胆火を消し脳気を盛んにすれば,濁涕は止り鼻竅は通ずる。
張教授は本方を鼻渊に応用しており臨床では鼻塞が厳重で,黄緑色の流涕や,血を帯びるのや,質が稠で気味が濃重で,舌紅苔黄,并せて煩躁易怒を伴い,頭暈口苦の症状がある。
もし肝胆湿熱の重い者なら,竜胆瀉肝湯を合用し肝胆を清瀉し,利湿開竅する。

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活絡効霊丹の応用1

活絡効霊丹の応用例  作者:黄存垣,楊君柳, 江西中医薬 : 2003年3月25日

活絡効霊丹は張錫鈍(1860-1933)の《医学衷中参西録》中に出てくる処方で、気血凝滞による心腹疼痛、腿疼臂疼、跌打淤腫、内外瘡瘍及び[病<暇-日-丙]積聚等を治すものです。

活絡効霊丹 当帰・丹参・乳香・没薬

1 坐骨神経痛
肖某某 ,男 ,1993年 4月初診。
左側の臀部が疼痛して 1个余月になる ,痛い時は左足の小腿に牽引し ,足跟も亦痛む ,行歩すれば加劇する。
飲食、二便は正常 ,脈弦 ,舌質はやや暗紅。

処方 :桑寄生20 ,全当帰・川牛膝・丹参15 ,川断12 ,生乳香・生没薬・陳皮・木瓜・大伸筋・五加皮10

上方 4剤 を服すと,症状は減軽した ,再服して 10剤に至ると ,症状は大いに減った。
原方に金毛狗脊 2 0g を加えて,再服すること 10剤 ,これで痊愈した。

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并提湯

【方名】并提湯。

【辨証】腎気(陽)不足。

【治法】補腎気,兼補脾胃。

【組成】 (熟地・巴戟・白朮6 人参・黄耆3 山萸肉2 枸杞子1 柴胡0.5)27.5

【用法】水煎服,毎日1剤,日服2次。

【出処】《傅青主女科》卷上。 (六)

【辨証】陰陽両虚。

【治法】補益腎気。 ...
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并提湯は 《傅青主女科》傅山着・清(上卷) にあり、「胸満不思食不孕」に用いる。

婦人で飲食を思わず,胸膈が満悶し,終日倦怠で睡く,ひとたび房事を経ると,つらくて呻吟している人がいる,
一般に脾胃の気虚と考えて,誰も腎気不足だと知るよしもない,
気は升騰するに宜しく,消降するのは宜しくない,
上焦に升騰すれば,脾胃は分運し易く,
下焦に降陥すれば,脾胃は運化が困難である,
水穀の養が乏しければ,精神は自ら倦怠となる,
脾胃の気は升るのが良くて降るのが良くない,
然し脾胃の気は,脾胃の中で充つるといえども,実は両腎の内で生ずる,
腎中の水気が無ければ,胃気は升騰しないし,腎中の火気が無ければ,脾気は化生しない
ただ腎の水火二気があってはじめて,脾胃の気は升騰して降りない,
然し脾胃の気を補うには,急いで腎中水火の気を補うだけではダメで,
治法は必ず補腎気を主とするも,補腎に補脾胃の品を兼ねなければ,腎の水火二気は至陽に上らない,方は并提湯を用いる。

胸満して不孕を,人は脾胃虚寒と誤って,克食できないのに,扶脾消導の薬を用いると,腎気は愈虚する,受孕できるものではない,コツは峻補腎火してはならないから,桂附等の薬を用いないことだ,
専ら補腎気して,脾胃の気をふたたび下陥させなければ,帯脈の気は充実し,胞胎の気は暖まり,自然に受孕して障りが無いだろう。

大熟地(一両九蒸),巴戟(一両塩水浸),白術(一両土炒),人参(五銭),黄耆(五銭生用),山萸肉(三銭蒸),枸杞(二銭),柴胡(五分)

水煎して,三ケ月服せば腎気は大いに旺んになる,さらに一ケ月再服すれば受孕しない者はいないだろう,
此の方は補気の薬のほうが,補精よりも多い,
補脾胃を主にするのは,脾胃が健になれば,精を生じ易いからである,
脾胃の気と血を補うのは,腎の精と水を補うことでもある,
また補精の味を増やせば,陰気ともに足りて,陽気は升り易くなり,上焦に騰越し,陽気は下陥しない,
すなわち大地に陽春なければ,化生の機なく,受孕の理もありえない。

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補陽還五湯

【出典】 王清任 『医林改錯』

脳梗塞に有効な薬方があるのを知らないで、リハビリだけを頼りにしている方々に知って貰いたくてこの処方を紹介します。

王清任の説明によれば、人身の陽気を十とすれば左右に各々五づつが分布している。
脳梗塞によってどちらかの半身でこの陽気から2分の1が欠けると半身不随が起こる。
この処方は補気薬と活血薬の配合により血行改善をはかり、欠けた2分の1の陽気を回復し、元の五に返すので還五、すなわち補陽還五湯と名づける。

本方は脳梗塞・中風の后遺症・脳外傷・坐骨神経痛などに広く用いられます。
その内で面白いのは脳血管病のもたらす“複視”にも効果があることです。

朱進忠先生医案

 刑XX,男,三ケ月前,右前額に外傷を受けた後,右眼の視力が明らかに下降して,視一為二(複視)となった。某医院の診察では動眼神経麻痺とのことである。
診れば右眼瞼は下垂し,外斜視と,瞳孔散大になり,対光反射と調節反射が消失し,眼球は上を向いている。
舌苔は白く,脈は右が虚大で弦,左が弦渋で不調である。
これまでに用いられた諸方の多くは活血の薬草だったのに効果が無かった。
跌打損傷は当に活血通絡すべきであるが,然し今は其の右脈が虚大で弦,大なるは虚である。

東垣は次のように説明している。
「気口の脈が大で虚なる者は,気の内傷である。当に益気培本,活血通絡を以って標を治すべし。」
そこで処方は補陽還五湯を用いた。

黄耆30,当帰12,赤芍12,川弓,地竜,桃仁,紅花各10

薬を進めること三剤にして,視力は驟かに増し,運動も好転してきた。
再に進めること10剤にして,眼珠運動は基本的に正常となり,視力も正常となった。
瞳孔も以前に等しい大きさになっている。
なお継進すること10剤をもって再発しないようにした。

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妙香散

うつ病に使える漢方薬の一つに妙香散があります。
これは帰脾湯とよく似た処方で、次にその構成を比較してみます。

帰脾湯 : 木香 白朮 当帰 茯苓 黄耆 遠志 人参 竜眼肉 酸棗仁 甘草

妙香散 : 木香 山薬 茯神 茯苓 黄耆 遠志 人参 桔梗 甘草 辰砂 麝香

帰脾湯に含まれている「白朮・竜眼肉・当帰・酸棗仁・生姜・大棗」は養脾と不眠への配慮で、妙香散には含まれていません。
一方、妙香散に含まれている「山薬・桔梗・甘草・辰砂・麝香」には“固腎”“安神”“解鬱”の意味があり、最も量が多い主薬の「木香」には“舒肝健脾”の働きがあります。帰脾湯にも木香はあっても少量です。

妙香散の出典である《太平恵民和剤局方》は次の通りです。
【功用】補気寧神,行気開鬱。
【主治】心気不足,志意不定,驚悸恐怖,悲憂惨戚,虚煩少睡,喜怒无常,夜多盗汗,飲食无味,頭目昏眩,梦遺失精。

帰脾湯の出典である《正体類要》は次の通りです。
【功用】養血安神,補心益脾,調経。
【主治】思慮傷脾,発熱体倦,失眠少食,*征冲驚悸,自汗盗汗,吐血下血,婦女月経不調,赤白帯下,及虚労、中風、厥逆、癲狂、眩暈等。

両者の最大の違いは、“解鬱”が有るか無いかです。

うつ病を治すには“解鬱”作用が必要です。
よく使われるのは「柴胡」ですが、四逆散・加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蠣湯などでは対処しきれない場合が多くあります。
そんな時にこの「木香」の入った妙香散の“解鬱”作用が役に立ちます。

妙香散の【集注】汪昂曰の解説では、
心は君火である,君火が一たび動けば,相火も之に随う,相火は肝胆に寄寓している。
(相火が燃えて)腎陰が虚せば,精は蔵されず。
(相火である)肝陽が強まれば,気は固められず,故に精は脱して夢遺となる

【按】朱震亨云の解説では、
秘蔵をつかさどるのは腎で,疏泄をつかさどるのは肝です。
二蔵には相火というものがあり,上は心につながり,心は君火に当たります。
物に感ずれば動きやすく,心が動けば相火も翕然と燃え上がります。
二つが交会すれば,精は暗流して滲漏するばかりです。
だから平生から精力を守るにはただ補陰を以って相火を制することです。

※私は今“パニック症状”に応用できるのではないかと注目しています。

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甘露消毒丹と湿疹

 甘露消毒丹は《温熱經緯》に出ている処方で、組成は白豆寇・霍香・茵陳・滑石・石菖蒲・木通・黄岑・連翹・川貝母・射干・薄荷です。
効能は清化湿熱・解毒・宣通気機で、“湿温病”で邪が気分にある時、または湿熱并重の“湿温時疫”などの流行病に常用する処方です。
それを筆者(陳太日)は外科病に応用して成果を上げ゛ました。

湿疹
 何某、男、35歳、1995年6月15日初診。
患者は10日前に両方の大腿内側の皮膚に紅疹が現れ、奇痒があり、掻いていたら次第に広がって斑状になり、水泡が現われ、破れて黄汁が出た。
局部は熱灼痛があり、西洋薬治療して無効だったので中薬治療に転じた。

症見: 両側大腿の内側皮膚は紅く灼熱して斑疹状になり、部分的に水泡があり汁が出て、ずっと陰嚢の方まで及んでいる。

その他の所見: 口苦く食欲不振を伴い、便秘、尿黄、舌紅、苔黄膩、脉滑数である。

診断: 湿毒倶盛の湿疹である。

治療法: 清化湿熱・解毒止痒。

処方: 甘露消毒丹加減。
 滑石・茵陳・意苡仁・白鮮皮・秦皮各15g 石菖蒲・黄岑・木通・川貝母・竜胆草・大黄・連翹各12g 白豆寇・霍香各8g 蒼朮・牛膝・射干各10g。

6剤を連服したら紅く灼熱した感じが消退し、水泡も消失して好転しているのが分かり、患部の結痂も脱落しはじめた。

2診: 処方から大黄を去り、生地黄・赤芍各12gを加えて、更に5剤を服用して全治した。

: 湿疹の成因の多くは外部からの“風湿熱”の邪が肌膚に取り付くか、脾胃虚弱・消化機能の減退で“水湿”が肌膚に停滞した所へ熱邪を感受して出来るものである。
筆者は甘露消毒丹の清化湿熱・化濁解毒の作用へ竜胆草・牛膝等を加えて引経薬とし、また蒼朮・意苡仁の燥湿健脾作用と白鮮皮・秦皮の清熱去風止痒作用を合せたため充分な效果を得ることが出来た。

  新中医(1999年 第2期 第31卷 Vol.31 No.2 1999)

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風牽偏視 (動眼神経麻痺)

ほう賛襄主任医師験方
羌活・防風・荊芥・白朮・枳殻・柴胡3.5 当帰・赤芍・川弓・木瓜4 甘草2

案例 46歳男、十日前からものが2つに見える。眼が斜視になり、頭目に激痛ある。頚項は強ばっている。左の上瞼が垂れ下がり、眼球が外へ向いたきり動かない。舌は淡紅、苔は薄白、脈は弦である。上方を4剤飲んだら頭目の痛みが減り、すこし瞳の距離が縮まった。更に7剤飲んだ後、眩暈と上下の瞼垂があったので上方に 黄耆10 党参4 を加えた。鍼治療も加えて一ヶ月間の治療でほぼ治癒した。 [中医雑誌]

 『全国名老中医験方選集』 学術書刊出版社 1989年

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帯状疱疹後遺神経痛

顧伯華 教授験方
(当帰・延胡索・丹参4 赤芍・黄耆・沢蘭・紅花3 乳香・没薬2 益母草10)38g

案例 73歳女、右腰部に帯状疱疹ができ、西医の治療を受けて皮膚は元通りに治ったが、いつまで経っても痛みが残った。脈は細渋で、舌苔は薄く、舌の色は暗紅である。
上方を5剤服用したら痛みがかなり軽減した。ただし食欲が減り、胃がむかむかした。
そこで上方から乳香・没薬を去り、香附子3 鬱金4 を加えて、更に7剤を服薬したら遂に痛みは消失した。 [上海中医雑誌]

   『全国名老中医験方選集』 学術書刊出版社 1989年

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