優良処方データーベース

重症虚労-桂枝湯

劉渡舟医案;劉某男,18歳。
早婚で,素体は気怯,婚后半年で腰酸腿軟,頭暈耳鳴,小便頻数にして短,浙浙として悪寒し,双下肢に麻冷感有り,夏伏天(最も暑い時期)でも棉衣を着て仍お肢冷を感じ,動けば汗が出,納差(食欲不振)で腹脹,口中甜膩,夜寐て多夢,色欲が動き,体質は日に衰えた,人参、鹿茸を進めて培補するも無効。
初診:形痩気怯,面萎神衰,語声低微,両脈を切すれば沈細で弱,舌質は紅嫩,苔少(無苔)。
脈証を合参すれば,斯の疾は房労過度に因り,耗気傷精し,臓腑功能が失調し,陰陽ともに虧損せしものなり。
理応に補腎し以って培本すべし,但だ前医が人参、鹿茸を用いても効かなかったのを参考にすれば,桂枝湯を以って陰陽を調理することから着手しなければならない。
処方:桂枝15,白芍15,炙甘草6,生姜6,大棗10枚。5剤。
薬后に諸症は大いに減じた,但だ病者は虚損しており,速効は難しい,継服するに上方に懐山薬15,炒白朮12,鶏内金10を加えて,以って后天を培補し,并せて桂附八味丸を加服し以って腎気を補う,半月后に告げて曰く:薬后に精力は充沛し,飲食が倍増し,諸病は皆除かれた。
按語:本案は早婚に因り,欲しいままに傷精し,漸く虚労と成りしもの。
夏なのに毛皮のコートを着て,動けば汗を出し,舌質は紅嫩で,脈象が沈弱なのを観れば,乃ち陽虚の象である;又腰酸腿軟で,頭暈耳鳴があり,夜寐て夢多く,舌紅く少苔なのは,陰虚の象である。
陰陽不調,営衛難和なら,法当に陰陽を調和して治すべし,然らずば,奏効し難し,前医は人参、鹿茸を用いて大補せんとした結果を見れば明らかである。
劉老は真の証を識り,桂枝湯を巧みに用いて滋陰和陽し,営衛を調和させ,病の正鵠を射た。
陰平陽秘,精神内守するのを待てば,虚労は愈える。
又病の七八が去っても,培土健脾の品を増したのは,后天を培し以って先天を養う意也,腎の陰陽が充盈すれば,頑疾といえども尽く抜けん。
※陰陽不調=営衛不和。いきなり先天腎の陰陽を補おうとしても奏効し難い時は、后天の営衛を調和させることから始めなければならない。

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下痢-桂枝湯

中神琴渓医案:
一婦人が下利を患って数年経ち,食が進まず,形体は贏痩し,肌膚は甲錯し,起臥出来ない,医師は時に参、附、訶、罌の類を以って治そうとしていた。

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風温初起ー桂枝湯

任継学医案:呉某,女,63歳。
1987年11月21日の早朝、鍛煉のため外へ出てジョギングしていて,汗をかき裸になったら,その晩に頭痛頭暈し,鼻塞流涕,咳嗽喉痒,身体がだるく,関節が痛み,動くと少し汗が出る,顔面は紅くなく,口唇は紅潤,舌淡紅,咽は赤くない,苔薄は白くて潤,尺膚に微熱あり,脈は沈緩無力であった。

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桂枝加大黄湯の新解釈

裴 永清 著『傷寒論の読み方50』の中に桂枝加大黄湯(桂枝加芍薬大黄湯)の解説があり、その大黄の使い方には深い意味があると指摘しています。

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帯脈拘急

生理痛と一口に云っても腹痛・腰痛・頭痛・下痢など人によって様々でしょう。
一般には経行腹痛(痛経)と経行腰痛が多く語られています。
腹部と腰部では痛みの部位が異なれば中医学の弁証も異なります。
それらを一まとめに治すことは出来ないだろうか、と考えていたら出てきましたよ。
「帯脈拘急」です。

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驚きの柴胡加竜骨牡蛎湯

 李××,女,78歳。頭暈、臂(腕)痛と麻木が8ケ月も続いている。
診断は頚椎骨質増生である。
牽引による理療治療は効かず,按摩や中薬の活血化瘀法もまた無功。
其の証は,頭暈のため立っておれず,右臂は酸痛麻木で文字を書いたり、衣服の着脱ができない,失眠や健忘,心煩し背中が倦い,口苦口干,舌苔白,脈弦緊。
脈証を綜合すれば:脈弦とは,肝脈也;緊とは,寒也。症と合わせると,乃ち痰飲内鬱,肝木失達,筋脈不利である。治は調陰陽,理枢機,和筋脈が宜しい。
 柴胡加竜骨牡蛎湯(柴胡・半夏・党参・黄芩・甘草10 生姜3片 大棗5个 桂枝10 茯苓15 熟軍3 竜骨・牡蛎15)
服薬3剤で,頭暈、背困、臂痛、手麻等の症はみな減り,継服20剤で,愈えた。
 某医云わく:柴胡加竜骨牡蛎湯はもと仲景が胸満煩驚を治した処方なのに,どうして頚椎病に効くのか?
答え:柴胡加竜骨牡蛎湯は,一に理肝,二に化飲,三に調陰陽,四に和栄衛,五に助升降,六に和肝胆,七に鎮驚止悸の功用がある,本証は其の病機から看て,ちょうどそれらの問題に合っているからです。
   中医临证经验与方法 より
※柴胡加竜骨牡蛎湯の処方には七つの病機が含まれていると、そこまで深読みできるとは!
寝返りするのにも肩や背中が痛むという方が居ました。これをあげれば良かったのか。
検索すると 肝木失達,上熱下寒,営衛失調,筋脈不利,寒飲停滞,肝鬱気結,鬱而化風,痰湿内鬱,三焦運化失職,水飲阻滞 などと柴胡加竜骨牡蛎湯は誤治に対して生まれた処方だけに多くの含みを持っている。

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柴胡と早朝腰痛

柴胡疏肝散については既に発表してあるが、ひとつ大事なことが抜けていました。
『中医治法與方剤』における柴胡疏肝散の主治解説文に「肝気鬱結之脇肋脹痛、胃痛、腹痛、痛経等証。亦治天将明而腰痛者。」とあります。
うっかりすると見逃しますが、“天明腰痛”とはただならぬ表現です。
実は私の妻が嘗てこの早朝腰痛だったことがあります。
朝起きて動き出すとすぐに腰痛は軽快するのですが、寝ている姿勢だと朝方にはいつも腰が痛くなり、うつ伏せにならないと寝ておられなくなるのです。
どう弁証すればいいのか、これには参りました。
陳潮祖先生の解説は次のように続きます。
「腰痛といっても本方が所治するのは平時は痛まず,天が将に明ける時にのみ痛むのが特徴である。これはもう説明するまでもなく外感実邪でもなく,又内傷虚損でもない,すなわち肝気鬱結,気血運行不利によるものである。日中は気血は流通し,通ずれば痛まずだが,夜間の睡眠が気血運行に影響すると,天明時に始めて腰痛を自覚する。この種の腰痛は腰筋緊張と関係しており,肝気、肝血、経脈の三方面から考えなければならない。」
これでハタと分かりました。
※早朝腰痛に悩む人は柴胡疏肝散や逍遥散などの柴胡剤類を試してみてください。

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地黄飲子6

その他に地黄飲子が応用されたものを列挙する。
1.筋営養不良症(ロコモ)
筋肉が消痩して力乏しく,よろよろ歩き,食欲不振,腰背がだるく痛む,手指は厥冷する。
それらは腎気虧損の証とみなされ、滋補肝腎・強筋壮骨を以って治法とされる。
 地黄飲子加減(生地30 山萸肉・石斛・麦冬・五味子・肉苁蓉9 附子・肉桂6 木瓜10 巴戟天6)
2.急性脳血管病による昏迷
意識朦朧として醒めず,顔赤く,足が冷える。
それらは下元虚衰,虚陽上浮,痰濁蒙竅の証とみなされ、滋腎納気,化痰開竅を以って治法とされる。
 地黄飲子加減(生地・巴戟天・山茱萸・石斛・肉苁蓉・五味子・肉桂・茯苓・麦冬・附子・菖蒲・遠志・薄荷10)
3.急性脳血管病による失語
口を開かぬ失語症,口から涎水を流し,顔赤く,足が冷える。
それらは腎虚陽浮,痰濁蒙竅の証とみなされ、温腎納気,化痰開竅を以って治法とされる。
 地黄飲子加減(熟地20 山薬・山茱萸・石斛・麦門冬15 茯苓・五味子・菖蒲・遠志・肉苁蓉・附子・肉桂・巴戟天・制南星10 薄荷3)
4.中風による半身不随
瘫痪久しく愈えず,冷やすと更に悪くなる,手足が冷える。
それらは腎気虧損,筋脈失養の証とみなされ、培補肝腎を以って治法とされる。
 地黄飲子加減(生地24 麦冬・五味子・山茱萸・石斛・遠志・菖蒲・附子・肉桂・巴戟天・淫羊藿10 肉苁蓉・木瓜15 薄荷・干姜3)
   中医临证经验与方法 より
※同じ地黄飲子でも匙加減によって様々な応用が開ける。

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杏仁薏苡湯

進行性肌営養不良症(進行性筋ジストロフィー
この極めて頑固で難治の疾病を,私は曽つて芪脈湯、地黄飲子及び保和丸加益気養陰剤を以って暫時の効果を得たことがあるが,然し久しく用いてもそれ以上の効果は得られなかった。
 患者 張××,男,19歳。
2ケ月前に突然四肢無力を感じ,3日后には四肢の活動が甚しく困難になり,急ぎ某院にて入院治療となった。
診断は多発性神経炎、入院2ケ月になるも,病情に改善はなく,躯干の筋肉は消痩し,改めて進行性筋営養不良症と認められた。
歩行や日常生活がすこぶる困難である。
そこへ私の出番になり,急ぎ芪脈湯を10剤与えたが,症状は変わらず,反って更に食欲が減った。
詳しく証を観察すると:躯干、上下肢の筋肉の明らかな消痩の外に,手足は厥冷し,舌苔白く,脈は沈細緩である。
脈証を綜合すれば:寒湿不化の証である。
 杏仁薏苡湯(杏仁・薏米9 桂枝1.5 生姜3片,厚朴3 半夏4.5 防己5 白蒺藜6)
服約すること10剤で,患者は自分で立って,歩けるようになり,筋肉も少し豊満となった,継服すること200剤以上,諸症は基本的に消失した。
   中医临证经验与方法 より
※筋ジス発病の当初なら或いはこのようにうまくいく場合があるのかも知れない。遺伝病であってもそれは何かのきっかけと結びついて発病するのだろうから、既成体質と諦めずに弁証して食い止められれば幸いだ。寒湿がきっかけとなっているのならその条件を阻止すればよい。

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地黄飲子5

脊柱裂(先天性奇形) 欧××,男,12歳。
小便失禁と遺尿が7年も続く。医診では脊柱裂とのこと。
西薬治療や中薬の活血逐瘀と針灸配合も効果がなかった。
小便失禁や遺尿のほかに,右腿の疼痛と,筋肉の萎縮のため,時には歩くのが難しい,右足が挙らない,食欲不振,足の指が厥冷,舌苔薄白,脈沈細弦。
証脈を合参すれば,肝腎陰陽倶虚である。培補肝腎の方針で、
地黄飲子加減(生地・石斛10 麦冬6・肉苁蓉6 肉桂・附子2 木瓜6)
 其の父は医の心得があり,云わく:患者の腿痛筋痿は瘀血ではありませんか? 然しどうしてそれが効かなかったのか?
答え:疼痛には瘀血からくる者もあり,それは活血薬で止痛ができます。然しみなが瘀血によるものではありません,故に中医の止痛には祛風止痛,理気止痛,温経止痛,補気止痛,補血止痛などがあります。
此の証が活血しても止らなかったのは,本証の痛みが瘀血によるものではなかったからです。
又問う:医家の多くは小兒は純陽の体だと云うが,先生が附子、肉桂などの純陽の品を用いるのは,何故ですか?
答え:小兒純陽について,多くの後人が訂正しています:稚陰稚陽の体の,稚とは,幼稚のことで,容易に虚にもなり実にもなるという事で,温熱薬を用いてはならないという事ではありません。本病の腿痛、筋痿、遺溺とは顕らかに腎の陰陽倶虚ですから,上方で治すのです。然し用薬を長く続けると陽熱が浮動する恐れがあるので,熟地の温ではなく,生地の凉を用いて佐けとします。
 服薬6剤にして,腿痛は好転し,以前よりも力強く歩けるようになった。
継服すること40剤にして,腿痛は尽く消え、筋肉も豊満になり,ここ一ケ月は遺尿をしていない,又服すること60剤で,諸証は消失して,すべて愈えた。
   中医临证经验与方法 より
※先天性の奇形でも弁証できれば必ず何らかの方法があるのは嬉しい。

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